外国為替取引ニュースサイト

  1. トップページ
  2. >コラム・レポート
  3. >尾関高のFXダイアリー
  4. >デフレ×円高×レバ規制

コラム & レポート

バックナンバー

尾関高のFXダイアリー

デフレ×円高×レバ規制

 ほんと、タイミングが悪かった。レバ規制50倍が始まって1ヶ月たった。大体予想通りで業界は30%から50%ぐらい取引高が落ち込んでいるようだ。それ以上落ち込んでいる分は、相場が85円割れという円高局面を迎えている分のおまけだろうと思う。ほんと、タイミングが悪かった。が、そこまで先は読めないから仕方がない。ハイレバ中心の業者は取引高への影響が50%ぐらいと見込んでいたが、この円高で70%ぐらいまで食い込んでいるかもしれない。普通の業者では20〜30%の読みが同様の影響で30〜50%にまでなっているかもしれない。


■レバ規制の大儀


 FX業者が減ると、税収が減る。雇用が減る。だから国益に反する。では逆に国益にかなうことは何か。何だろう。レバ規制の大儀って何だっけ。一部のレバを掛けすぎた投資家がまたやりたくても、もうそれが出来なくなったことで未然に被害を防げたこと。確かに。それはでも、全体の何%だったのだろう。弱者を守るのも政治・行政の役目。確かに。では彼等は弱者だったのだろうか。一つの政策を前に動かすとき、かならずそこには恩恵を受ける人たちと、逆に副作用をまともに受ける人たちがいる。政治的には、マジョリティ、全体の利益、国益優先ということだと思うのだが、本件それに当たる人はだれだったのか。レバ規制してくれてありがとうと言ってくれるのは、誰だろう。たぶん奥さんに黙ってハイレバで取引して損していた旦那を持つその奥さんだろうか。


■デフレ×円高×レバ規制


 世の中デフレである。その霧はさらに濃くなりつつあるようにも見える。米国の霧はさらに濃くなりつつあり、そちらにはためく旗の星の絵柄も最近さらにかすんで見える。そんな中、業界がさらにしぼむ規制が、一部の投資家の保護を目的に予定通り施行されたわけである。まだ結果といえるところまでいっていないが、私の見通しとしては、独立系の業者は40から20〜25ぐらいにまで廃業、売却を繰り消しながら減っていくことにならざるを得ないだろうと思う。スプレッド競争により相当利益率を落としていた矢先の総量規制的な効果をもたらすレバ規制だった。その結果業界が健全になればそれはそれでいいではないか、という意見も聞くが、そのために支払ったコストは何だったか、あるいは何になろうとしているのか。

デフレの最中に消費税率10%だ15%だとのたまう国だからこれくらいのことがあっても驚いちゃいけないし、怒ってもいけないよ。と、私の耳元に声なき声が聞こえてくる。


■下流が上流に与える影響、いや下流が上流になってしまう現象か


 下流は常に上流の影響を受けるものだが、その下流の川がせき止められたりすると上流で水が氾濫するということが起きるようである。川と言うよりは上下水管か。いまや個人投資家がインターバンクの為替市場に大きな影響を与えているのは一部の研究者からは言われていたことだが、今のような円高局面でそのスピードを抑えてくれる役割という点では私も同意見である。が、レバ規制が同時に始まったことで、そうした人のカウンター取引が入りにくくなったことと、さらにはキャリーしていた人が耐え切れなくて、投げ始めるとこれは円買いの圧力となってインターバンクに流れ込んでいく。つまり、今まで下流だと思っていたほうが上流になりつつあるのではないかということである。豪ドル円なんかそんな感じで危ない。特にデフレが進行し、活発な資本取引が停滞し始めると、相対的にそういう逆流現象がより多く見られることになる、というのが私の説である。


■問題は、来年さらにレバ25倍に縮むということ


 ここまでいくと、独立系の数が、40⇒30⇒20となるシナリオは誰でも語呂合わせ的に想像がつく。私はなにもレバ規制を撤廃して欲しいとは言っていないが、本当は100倍で米国並みにとどめて欲しかったし、できれば来年の25倍も辞めて欲しいのである。海外流出を防ぐためにもそうして欲しい。国益を損ねるだけじゃなくて、外国にそれをただで献上してしまうのがなんとも悔しいではないか。キャメロン首相にはお歳暮の一つでも贈って欲しいところである。もしデフレ、円高が続いていたらレバ規制の第2弾の延期ぐらい検討してもらってもいいんじゃないかと思う。
商品先物で30倍、株の信用で3倍だから、FXが25倍は妥当だという意見もあるが、これも今までに申し上げてきたとおり、原資産のボラティリティをよく考慮したうえで比較して欲しいと思う。原資遺産のボラティリティx規制される最大レバレッジ、で比較して初めてどっちが高い低いという比較が可能になる。最近は為替のボラも上がり気味なので、実際に計算してみないといけないけれど。。。


■株、債券、そして為替


そういえば最近、CFDの話を全く聞かない。株もこれではどうにもならない。株ダメ、債券最悪である。国債だからってそうそう買ってられないし、買っても0.1%とかじゃあなと。為替、これは交換レートであり、株の価値の問題とか債券の金利の問題じゃない。だからポートフォリオとしてはいいのである。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

ニュースクラウド