今度は米国の業者がNFAに・・・
またまた、ユーロマネー theWeekly FIXに衝撃的なニュースが出ている。
▼FX News:National Futures Asoonciation serves complaint to Gain Capital
今回は米国の業者G。前回は欧州でその法人顧客が自分のポジションを読まれ、プライスをずらしてクォートされたことは不正であるとして訴訟準備中という話だったが、今回は米国NFAが直接、G社に対し、以下の3点において不正行為があるとして、現在いかなる処罰とするかを検討しているらしい。むろんG社はこれに対して不服であり、なにかしらの説明を行うのであろうが、もつれれば裁判で戦うことになるかもしれない。NFAが公開する本件の“Complaint”(PDF)で、その詳細が克明に記述されている。興味のある方はそちらを参照してほしい。
NFAの指摘するGの不正行為
1)G社は、週末の維持証拠金を0.5%から2倍の1%に自動的に引き上げるという 措置を事前に顧客に通知し合意をとりつけていないまま行っている。 これにより不正な利益をマージンカットから得ている。 2)G社はNFA(CFTC)登録業者でないブローカーをIBとして使っている 3)G社は提供するもう一つの取引システム(M)上で、顧客の成行きの 約定リクエストのプライスから2ポイント鞘が抜けるときだけ約定とし、 そうでない場合は、約定を拒否している。
の3点である。(1)、(2)はわかりやすい話であるが、(3)は、推測憶測まじりであると断った上で、対象となる売買システムが他社製品のようなので、たぶんそのシステムの使用料分をとるために、2ポイントマーケットが食い込むまで待って(我慢して)約定し、ヘッジしていたのだろうが、そういうコスト構造に基づく約定ルールをあらかじめ顧客に開示していなかったため不正の疑惑が向けられたのかもしれない。ちゃんと開示しておかないとあとで痛い目にあうという好例となってしまっているように見える。記事の表現がいまひとつ曖昧でつじつまの合わない表現になっている部分があるので、これ以上の推測は避ける。
ただし、(3)についてもう一つの視点で特筆したいのは、記事を書いている記者の表現では曖昧だが、NFAのComplaintを見るとそのパラグラフ30では詳細に説明されているもので、「成行き」の用語の定義に、伝統的な成行きと、ネット取引ならではのいまどきの成行きがあるという説明があることである。
この点は、私が今執筆中の次々回FXダイアリーのテーマ「約定率の議論」の中でも触れるが、簡単にいうと、本来、“伝統的な”(くしくもNFAもtraditionalという言葉を使っている)成行きには「値段指定がない」ため「スリップ」という概念がそもそも存在しないが、現在、ネット取引で「成行き」と呼んでいる注文の多くはクリックしたレートが指値として発注されており、そのクリックした値段は、そのレートで実際に約定することをトライするかあるいは保証するかの前提が伴っている。
前者は古典的、伝統的「成行き」であり、後者になるとこれは実質的に「指値注文」の変形である。後者のこの「成行きに偽装した指値」はこまかくいうと指値+IOC条件である。ワントライしてだめならすぐキャンセルする注文である。(IOC=Immediate Or Cancel)。指値注文なのに「成り行き」と呼ぶこの手の混同には十分注意し、この辺のメカニズムの認識を統一しておかないとNFAとG社の議論もさることながら、業者、投資家、行政、弁護士ともに、バベルの塔の大工の会話になりかねない。日本でも同様の現象がちらほら見え始めているような気がしたので、警鐘を鳴らしておきたい。
ネット取引画面上で売り買いの値段をクリックして発注する「成行き注文」の場合、
1.その値段で約定することを100%保証する前提か(仮想無限の流動性、IEのみ可能) 2.その値段でトライはするが、入らなかったら拒否する前提か(成行きリミット+IOC) 3.その値段でトライはするが、入らなかったらさらに不利な値段で、かつ制限なく 自動的に約定を返す前提か(無制限のスリッページを許す=古典的な成行き) 4.その値段でトライはするが、入らなかったら、発注時に指定したスリップ幅の範囲で 約定をトライする前提か(スリップ条件つきの成行き) 5.その値段でトライはするが、入らなかったら、その値段でそのまま入るまで 置いておく(成行きリミット+GTC)
これらのどれだ、という前提であなたは日々成行き注文を出しているかをチェックしてみてほしい。