レバレッジ規制の実際の運用
8月からまず50倍規制となるが、厳密に言うと、この50倍を担保しているのは取引通貨ベースでの50倍であり、実際の円価における50倍ではないということが見えてくる。どういうことかというと、まず維持証拠金の計算式はこうである。
ドル円の場合で、50倍とはつまり取引額の2%である。そして、取引高(10,000)USD x 2% =200USDが、想定元本に対してドル価で2%分となる。そこで200USDx円換算レートで、維持証拠金もしくはマージンカットラインの額が円で決定される。
この式のなかの円換算レートが、つねにリアルタイムのそれを使う定率法の場合は円価でもほぼ2%が常に守られるが、定額制の運用をする場合、かならずズレが生じる。
取引所が打ち出したルールも、週5日間の終値のなんと「平均値」をとってそれを次週ではなく、告知期間を1週間おいて「次々週」に適用するので、そのときの実際のレートが92円なのに、200ドルを円換算するレートが89円だったりする可能性がある。
リスクの概念に「偏差」を加味せず、シンプル、ど真ん中で、「平均」でやってしまい、なおかつそれを2週間後にずらして適用するというのは、リスク感応度よりも、かなりリテールを意識したわかりやすさ優先のルールとなっている。それで足りるか(いいのか?)どうかという問題は、どうせ来年には25倍になるわけだし、相関性が多少下がっても“距離は十分”と考えることになる。
では、実際にこのルールがどういう感じになるかということを調べるべく、過去のデータ(FXCMジャパン、TS2より)デイリーのレートを2008年6月16日からドル円とポンド円だけ取り出して検証してみた。FXCMジャパンはDMAなのでレートの動きがインターバンクのベストプライスをなぞっており、DI業者にくらべるとその動き方は、はるかに取引所のそれと近いはずである。2008年6月からにしたのはリーマンショックの同年10月をカバーしたかったからである。
計算:
月曜から金曜までの終値5つの平均を取る。その平均値、すなわち維持証拠金計算に使われるレート(基準値)と次々週の最高値と最安値との乖離がどれくらいあるかを調べる。
ドル円>
基準値が使われる週の高値に対して最低となったのが1.85%、すなわち2%の証拠金ラインでMC判断をするところをそこから0.15%低いところで判断することになる。逆に最高となったのが2.12%これは0.12%余分に取ったということなので規制上問題にはならない。一方、安値に対しても同様に計算すると、最低が1.88%だった。つまり最悪で1.85%、つまり基準の2%を0.15%分下回るMC運用が行われていたということになる。この1.85%を記録したのは2009年3月4日である。
同様にポンド円では>
最低が1.85%(2009年2月9日)で、比率としてはさほどドル円とかわらない。
投資家から見て定額制では、円安トレンドが続くと実際のMC運用が2%未満でおこなわれることになる(実質レバレッジ50倍以上)。逆に円高トレンドが続くと、2%を超えるレートでのMC運用(実質レバレッジ50倍未満)を受けることになる。
今回取引所が開示したルールに問題なしということであれば(そうなのだろうが)、過去2年程のリスク観察期間に限定して、0.15%程度の証拠金徴収不足は運用上許容範囲というお墨付きが得られたことになる。定額制業者にとっては助かる話である。