NASDAQのロールオーバーとCFD
5月6日の原因不明のニューヨーク証券市場(NYSE)急落に巻き込まれてNASDAQも急落し、その後、その時(2:40pm)の水準から60%以上、上下に離れた約定をなかったことにするロールオーバー(巻き戻し)を行うと宣言したNASDAQ市場であるが、本事故の原因の調査結果はいまだ出てきていない(というか迷宮入りになりそうな気配である)。
原因の話はさておいて、実際にそのNASDAQのロールオーバーをされるとどういう問題が起こるのかについて、前回のコラムの最後に触れたとおり、CFD目線を中心に考えてみる。
■ロールオーバーされるとどうなるか
混乱に乗じて飛び込んだ投資家で儲かったという人の中には、このロールオーバーによって閉じたはずの取引がオープンにもどる人もいるかも知れず、またそのオープンの値洗いが曲がって返って来る可能性もあり、巻き戻されて嬉しくない人はたくさん出てくるはずである。実際に市場で取引する人の多くは機関投資家であり、彼らは何かを買う代わりにヘッジやスプレッドで何かを売っていることが多い。今回の急落も、最初がP&Gだけだったかもしれないのに、それが瞬く間に市場全体、そしてFX市場にまで波及するというのは、それを見ていたディーラーや機関投資家が、ベンチマークにしているインデックス急降下に連動して売りに動いたということもあるだろうが、多くはアルゴリズムによる自動売買システムが発動した結果ではないかという推測もありだと思う。なぜなら、NASDAQにおいても、ほぼ価値ゼロのところまで売られた株もあるというではないか。人間が判断してやっているときに、そういうことはあまりないだろう。やはりシステムが勝手に発注したとしか思えない。システムが成行きで出したオーダーが、買い気配が全くなくなったところにぶつかれば、結果そうなってしまう。さっきまで20ドルだった株を今1ドルで、それに相当する理由もなく売るなどということは人間の感性ではできないものである。システムだからやってしまうのである。
一方、ほぼ0ドルで買った方は一気に中身が良くなるのだから、20ドルとかにもどったらすぐ売り注文が出てしまったかもしれない。となるとその投資家は、今回のロールーバーで20ドルの売りだけが残ることになってしまう。ロールしたときの相場が18ドルとかだったらまだましだが、22ドルで戻っていたら、漁夫の利のはずが損になってしまう。
■CFDでやっていたら・・・
さて本題だが、CFDでナスダック銘柄を提供している場合、ロールオーバーされる銘柄に対してどういう処置をとるかは業者によって独自の判断が行われる。まず考えられるのは、CFD業者において約定したものは取引所がどうしようとロールオーバーしないという方針である。
これは間に立つ業者がDMAオンリーのモデルでなければできることであり、結果、業者対取引所のポジションにおいて耐えられる範囲での損害内で食い止められていればそうする可能性が一番高い。
もう一つのオプションは、取引所がその業者に対して行ったロールオーバー分の取引を顧客に対しても行うことである。DMAモデルの業者の場合これをすると決めればやるのはわりと簡単である。約定ごとにデータが紐付いているのでマッチングが可能であるからである。このどちらの方法で対処されるかで、それを受ける顧客側の運命が分かれる。
やること自体は簡単なのだが、やられる方としては上述のような問題を抱える人も出てくる。しかし、基本的には受け入れるしかない。たいていの場合そういう強制力を業者側は保有している。そのための条項を最初から契約書に書き込んでいるはずだからである。
その点先物市場には、そういうロールオーバー(取消)はない。できないというべきか。ということで、CFDで株をやる人も、特にこだわりがないのなら個別株などには手をださず、株価指数(先物)だけを取引するのが一番簡単である。