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尾関高のFXダイアリー

大証FX、マーケットメイカー制度の整備(1月26日開示)の話に鑑み

1月26日に大証FXが「マーケットメイカーの整備について」という新たなルールを開示しています。一般の人には意味不明ではないかと思います。そこで、僭越ながら参加されている方のために解説(解読?)してみたいと思います。

▼取引所外国為替証拠金取引におけるマーケットメイカー制度の整備について


II−(1)マーケットメイカー呼値の取扱い


 要するに、マーケットメイカー同士がぶつかった場合は約定させないしチョイスにもしないでアマウントが出っ張った分だけのこしてあとは取引所が自動的にキャンセルするということである。ということは今まで公表されていた取引高にはマーケットメイカー同士の約定が含まれていたということになる。感触としては90%以上がそうだったのではないかと思うが、それがなくなるということは公表される取引高が今の10分の1ぐらいに減るということになるかもしれない。しなかったら私の解釈に誤りがあったということになる。

例を挙げると、A銀行がドル円500万ドルで売値90.20、B銀行が買値300万ドルで90.20なら 個人投資家に見えるのは、90.20の売り、200万ドル分だけとなる。


II−(2)建玉調整制度


 たとえば、場が引けたときに、取引所がドル円でマーケットメイカーAに対してロング100本(1本100万ドル)持っていて、メイカーBに対してショート80本持っていたら、自動的に取引所はAに対して80本分、このために特別に用意される決済値段(これが清算値となるらしい)でAに売らせて、Bに対しては80本分その清算値でBに買わせることで、最終的に大証は一通貨ペアにおいてはどこか一行だけでしかキャリーポジションを持たなくてすむようになる。そうなると、スワップ(ポジションのロール)もAとだけのやり取りとなる。これで取引所の業務効率は上がる。しかしこの「人工的な清算値」でポジションをクローズさせられる銀行側はその値段で放り込まれるポジションをうまくヘッジできるのだろうか。そのポジションが生まれるのは東京時間早朝であり、いまはさしたるポジションでもないだろうが、将来的に大きくなったら結構なリスクではないだろうかと余計なおせっかいではあるがちょっと心配する。この仕様はすでにくりっく365では稼働しているらしいので今回は先例に倣え、ということか。

 次から次へと店頭(OTC)では考えられなかった新たな「仕様」が取引所という特殊な場所において生まれてくる。くりっく365しかり大証しかりである。それ自体、取引所はそもそも特殊なのだからと考えればいいのかもしれないし、それを受け入れるインターバンクのマーケットメイカーがいる限り問題はないのかもしれないが、相手方となるインターバンク市場にそのゆがみの影響が出て来はしまいかとなんとなく心配してしまう(私の根が心配性なのかもしれない)。こういうことは、小さいうちはかまわないし、誰も気にしないのだが、いざパイが大きくなったときに“あれれ?”ということが起きたりするものなので、今のところは「なんとなく心配」なのである。

最後に念のため申し上げるが、投資家の方の立場から見れば今回の話は短期的にはなんら影響はない。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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