信託義務化本番(1)信託できない業者
半年間の猶予期間を経てついに2月1日から信託保全義務が稼働し始めました。フォレックスプレスでもそれに合わせて、信託保全先一覧を作成してくれました。大変わかりやすく、私も情報収集の手間が省けます。投資家の皆さんにも便利な表だと思います。
見てみると2月1日現在でも信託先が空欄になっているところがあります。大丈夫でしょうか。
■信託できない業者
すでに、一部では信託保全に対応できず自主的に他社への売却、廃業等を決断している業者もある。しかしこれは良心的なケースで、潔く事実に対処している業者の例だろう。一方、潔くない業者であれば2月になっても検査があるまで信託していないことを隠したり、架空の信託契約をほのめかしてごまかしたりということがあるかもしれない。こうした詐欺的行為は黙っていても金融庁や証券監視委員会が2月1日に一気に検査してつまみ出してくれるものだとは思わないほうがいい。彼らとて見つけるには時間がかかる。90社もあるのだから本気でやっても一年以上かかる。一番確かなのは業者が開示する信託先に問い合わせることであるが、一般には登録業者となった業者が正式に開示した内容を信じるものである。
■信託できない理由
やりたくても信託銀行がその業者の信託を断ればできない。信託銀行は常にその業者の預かる顧客資産の実預託額を言い値で受け、それが実際に正しいかどうかには責任を負わないのであるが、風評リスク等を考えて危ないと判断する業者からの信託を受けたがらない。また規模が小さすぎビジネスにならないと判断されればやってくれない。
■信託の弱点
現在いろいろな信託銀行が受けているが、たとえを使って表現すると「昨日の顧客の実預託額は本当に34億3554万3210円なのか」という問いに自信を持って「間違いない」と答えられる受益者代理人がどれだけいるかということである。それをするには受益者代理人自体が業者のシステムを直接モニターする技術力が必要になる。むしろSEの資質が問われるところである。システムに強い会計士とかが適任かもしれないが、ただしこの商品のビジネスロジックを確実に学習しての話しとなる。これは為替の信託に限った話ではない。どんな信託でもシステムを信用するのは簡単だし、障害時を除けば信用しやすいが、そこに搭載された計算ロジックそのものが正しいかどうか、今回の計算作業に変なノイズはまぎれていないかということまでチェックしきれる環境を実現するのは容易ではない。
>>「信託義務化本番(2)義務化されると黒字でも倒産する」に続く