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尾関高のFXダイアリー

今後のFXとCFD業界にかかる規制やルールとして望むべきこと(3/3)

■投資家の法的分類とサービスの差別化


 これもイギリスの例だが、イギリスは投資家を3種類に分けている。

単純に訳せば、
(1)一般個人
(2)プロの個人
(3)適格カウンターパーティ(業者、法人、金融機関)
   である。

そして、日本で言う信託保全に似たスキームに入れなくてはならないのは(1)と判断された顧客だけでいい。個人でもプロ以上は資産保全すべき対象とはみなさなくていいという考え方である。


日本の場合、金商法において、「特定投資家」は、上記の(2)(3)に当たり、「一般投資家」は(1)(2)にあたる。(2)は両方にまたがりうる。個人で特定投資家の資格を得るには、「取引の状況その他の事情から合理的に判断して、承諾日の純資産が3億円以上と見込まれること」、「最初に申し出にかかる契約の種類に属する金融商品取引契約を締結した日から起算して一年を経過していること」(法第34条の3第1項?号、業府令62条)の両方が必要条件となる。個人投資家ですらプロとアマに分けて保護のサービスのレベルを分けるという発想はない。日本の場合特定投資家になると不招請勧誘の禁止の対象からはずれたり、適合性の確認原則からはずれたりするだけで、主にその趣旨はプロの法人に対してそうした制約をなくすことでアプローチする業者の“手間を省く”というだけのものであり、個人である限り特定投資家であろうとなかろうと、レバレッジ規制や信託保全の対象からはずれるわけではない。

たとえば、こういう風に変えるのはどうだろう。

(1)一般個人はレバレッジ規制25倍で全額信託保全の対象とする。
(2)プロはレバレッジ規制の対象としないが、かわりに資産の0%もしくは50%までしか信託保全の義務の対象としないものとする。
(3)特定法人は、「法人」であり、なにも条件はないが、保全もない。


個人の素人とプロの区別は協会がガイドラインを作ればいい。それを金融庁が支持し、法律の該当部分を改正して、信託銀行がそれを受け入れれば実現する。


イギリスのこの投資家区分の方法により、よりハイエンドなサービスを求めることができる投資家はその代償として業者に対する与信リスクを負うということになる。そうした、リスクの概念がちゃんとわかっていて、金融リテラシーが高い人にはそういうサービスをすることはやぶさかではなく、むしろそういう間口を開けておくことは「選択の自由」として必要だというイギリスの考え方が見える気がする。その点日本において、「個人=全部保全!」と言い切ってしまうのはどうだろうか。保全はしないけどレバレッジは100倍までできます、というサービスを求める投資家も結構いると思う。このためか、個人でも業者でもレバ規制後の対応のため法人格を取得する動きが出てきているようにみえる。実質個人である登録法人の増加という現象から新たな問題が生まれたりしないか心配である。

 私は、イギリスのやり方が好きである。あくまでも選択の自由があるし、合理性や他との整合性が整っており、すっきりしている。金商法は、適合性原則や不招請勧誘禁止と信託義務やレバレッジに関する規制をもっと体系的に見直したほうがいい。

この私の提案する3種分類判断は業者側が顧客に一定の開示されるルールに基づいて行う。個人において庇護が欲しければ自分は素人だと主張すればいい。プロだと主張するにはそれなりの事実を伴う知識、経験、資産の証拠を申告する必要がある。現在でも日本の業者はこうした適合性原則にのっとった情報を顧客からもらっている。判断するための情報はおおかた手元にある。やろうと思えばわりと簡単にできる話である。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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