メディアの表現はまちがっている(ランド円事件)
いわく「今回のランド円の“暴落”で多くの投資家の口座が強制ロスカットになった」という表現が散見されるがこれは間違いであると思う。正確には、ビッドの気配値が下り、業者のシステムが強制ロスカット注文を発動したために暴落が始まったのである。
株を例に取ると、500−510の気配が突然400−510になったとしてもこれをもって暴落とはいわない。単に買い気配が引いただけのことである。しかし、ここで狼狽した人が400円で売り、その後気配が380−400とかになると暴落といえる。
ランド円のケースは気配が下がっただけで、業者のシステムが強制ロスカット注文を発動したことに端を発している。これがなかったら「ただ気配がさがったな、と思ったらまた元にもどったぞ」だけで済んだ話である。
つまり、
暴落―> ロスカット発動 ではなくて
気配が下がる―>ロスカット発動=>暴落
の順番なのである。気配が下がるだけで強制ロスカットが発動する仕組みについてはすでに前々号で解説を試みている。
ということで第一に、気配がワイドになるだけで強制ロスカットを発動してしまう仕組みを搭載した業者のシステムの問題が指摘されるべきだが、これについては指摘する記事をまったく見ない。
仮に、取引所が業者またはそのシステム開発業者に「プライスはワイドにはしない」と約束していたら取引所も責任がある。そういう約束をしていなければ、取引所に責任があるようには見えない。あくまでも顧客と業者との問題である。
一方、コメルツに対しては、発表のとおりで(あまり明快な感じはしないが)基本的に一定のスプレッドを出す約束があったようだからそれができなかった責任をとらされても仕方がないのだろう。それにしても銀行がそういう約束をするということがあまり常識的ではないように思う。そこまで自分のプライシングエンジンを信頼していたということか。
店頭業者からみればそういう約束を銀行がしてくれたらどんなにうれしいことだろう。私はそもそもそういうお願いをすることすら諦めている。取引所だからできる立場の違いというやつである。