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尾関高のFXダイアリー

メディアの表現はまちがっている(ランド円事件)

 いわく「今回のランド円の“暴落”で多くの投資家の口座が強制ロスカットになった」という表現が散見されるがこれは間違いであると思う。正確には、ビッドの気配値が下り、業者のシステムが強制ロスカット注文を発動したために暴落が始まったのである。

株を例に取ると、500−510の気配が突然400−510になったとしてもこれをもって暴落とはいわない。単に買い気配が引いただけのことである。しかし、ここで狼狽した人が400円で売り、その後気配が380−400とかになると暴落といえる。

ランド円のケースは気配が下がっただけで、業者のシステムが強制ロスカット注文を発動したことに端を発している。これがなかったら「ただ気配がさがったな、と思ったらまた元にもどったぞ」だけで済んだ話である。

つまり、

暴落―> ロスカット発動 ではなくて
気配が下がる―>ロスカット発動=>暴落

の順番なのである。気配が下がるだけで強制ロスカットが発動する仕組みについてはすでに前々号で解説を試みている。

ということで第一に、気配がワイドになるだけで強制ロスカットを発動してしまう仕組みを搭載した業者のシステムの問題が指摘されるべきだが、これについては指摘する記事をまったく見ない。

仮に、取引所が業者またはそのシステム開発業者に「プライスはワイドにはしない」と約束していたら取引所も責任がある。そういう約束をしていなければ、取引所に責任があるようには見えない。あくまでも顧客と業者との問題である。

一方、コメルツに対しては、発表のとおりで(あまり明快な感じはしないが)基本的に一定のスプレッドを出す約束があったようだからそれができなかった責任をとらされても仕方がないのだろう。それにしても銀行がそういう約束をするということがあまり常識的ではないように思う。そこまで自分のプライシングエンジンを信頼していたということか。 

店頭業者からみればそういう約束を銀行がしてくれたらどんなにうれしいことだろう。私はそもそもそういうお願いをすることすら諦めている。取引所だからできる立場の違いというやつである。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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