外国為替取引ニュースサイト

  1. トップページ
  2. >コラム・レポート
  3. >尾関高のFXダイアリー
  4. >米国のレバレッジ規制 11月30日から 〜9月24日にNFAからの通知〜(2)

コラム & レポート

バックナンバー

尾関高のFXダイアリー

米国のレバレッジ規制 11月30日から 〜9月24日にNFAからの通知〜(2)

■規制条件の補足情報


9月24日にNFAから米国登録FX業者に対して通知が来ている。セクション11(自己資本規制)と12(レバレッジ規制)の改正が11月30日から施行されるという趣旨である。

セクション11において、自己資本(*)の規制は、2千万ドル以上なければこの業務をおこなえないわけだが、さらに追加の情報というか前回書き漏らしたことで、顧客預かり資産の、1千万ドルを超える分についてその5%を2千万ドルに追加した額が必要最低額と定められている。ただし、その業者が完全ヘッジをおこなっている場合(これを米国ではStraight Through Processと呼んでいる。つまり、100%顧客注文を1対1でインターバンクにつないでいるモデルである場合を指す)は、この追加の5%は免除される。しかし、顧客のなかの一人でもSTPでないと、つまりSTPの運用が100%でないと上記追加の条件は全顧客資産に対してかかってくる。

* 前回説明したとおり、その額の計算は、細かい規定に基づき調整された資産−負債である。Net Capitalなので純資産と訳すべきかも知れない。


■具体的数字の合理性


これで、レバレッジに関して、おおむね英国無規制、米国、カナダ100、アジア25倍となった。メジャー通貨とその他を1%、4%で分けたことは合理的である。カナダ当局は3段階にわけている。日本のように全部まとめて4%というのも簡単で結構だが、その他のマイナーをやらない業者にしてみれば余計なしわ寄せであった。そういう意図で4%にしたわけではないだろうが。


■ロスカット


ロスカットについて、言及はするも規制に反映はしていない。単に1%(4%)を客からとりなさいという命令だけである。追証云々という話がない分、この件はわかりやすい。追証を求める行為が議論に上がってこないので、すべからく米国では実質この1%がロスカットラインとして働くことになるのだろう。そうなると現実的には、2%以上いれておかないと維持できないので実質資金拘束率からいうとレバレッジは50倍ぐらいとなる。この考えだと日本は25倍ではなくて、18倍ぐらいになる。


■規制の合理性


米国は100倍のかわりに資本規制があるため、小さい業者が入り込めない。20億円ぐらいの自己資本を用意しないとできないわけだから、これは業界、規制当局、投資家のだれにとってもいいことだと思う。業界の視界がさっぱりしてくる。金融だから、他人のお金を預かる商売だから、現金で物々交換の商売とは一線を画すことになる。規制当局の立場から見れば当然ともいえる。


■うっちゃり


200倍ぐらいないと国際競争力がなくなるという業者の主張は、ほぼ無視状態でカットされている。日本も25倍となり、国際的に最大で100倍で、という流れになるかどうかはEUが今後どうするかで決まる。しかしながら、現実的に外国で口座を開いてそちらに流れるという現象は無視できるレベルでしか発生しないと思う。現時点において、イギリスに口座を移す動きはあっても1%程度にしか感じられない。ただ単に投資家の活動がレバ規制により抑圧される分、取引高が減るという側面のみが、業者にとってのみならず、うまくレバレッジを生かしてきた投資家にとっても、本件のマイナス効果である。


■自己資本(純資産)規制の効果


自己資本レベルでの参入規制を設けることは合理性が高いし、客観性がある。今日本で20億以上の純資産を持つ業者だけを残すとどうなるだろうか。。日本の場合は専業と証券系に主に分かれるので、前者はきついだろう。後者は証券事業で蓄えた資金からすでに20億以上の資本を積んでいるところも多いだろうから、あまり慌てはしないだろう。今回の日本のパブコメでは無視されたが、今後検討に値すると思う。


■取引所とのバランス


米国はIMMで為替が上場されているし、そもそも規制主体が先物取引所系なのでそれに対する配慮が大きい。したがって、取引所の証拠金との比較を行い合理的な差であることが念をおして述べられているが、一方取引所のそれよりもより大きなレバレッジを許すという姿勢を出しているのは、資本規制がより強化されまっとうな金融機関として認めてゆく方向性が見える一方、NFAもこうしたFX業者をその会員に収めてきた以上、彼らの意見を無視はできないのではないだろうか。

落ちとして注目するのは、メジャー通貨に対して1%(100倍)で問題ないと判断したことである。これはそもそもいかがわしい業者や体力的に不釣合いな業者が米国にはすでに存在しなくなっているという前提条件で考えなくてはならない。

(NFAからの原文の掲載は、その入手に際して一般掲載の承諾を得ていないのでここでは遠慮させていだたく。)


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

ニュースクラウド