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尾関高のFXダイアリー

規制・自主規制等の視点

 外野からしか遠吠えができないのが残念ですが、とりあえずおおまかに私の頭の中にある“テーマ”を以下に列記します。開示すべき、あるいは開示してもいいのではないかというテーマと内部の管理体制としてのチェックポイントや今後の気になるテーマについてのまとめです。これらのポイントが今後自主規制団体で議論されるテーマに絡んでくるものと思います。遅きに失した自主規制ですが、いまからでも巻き返しがなされればいいと思います。それ以上にどういう結論になるにせよ、業界、投資家、規制当局による議論そのものが「公正」に進んでいくことがまずは大事なのかと思います。


1.自動ロスカット機能


(ア) 自動ロスカット機能を搭載していしている場合、その計算頻度を明確にする。
(イ) 「リアルタイム」という用語が使われることがあるが、本来のリアルタイムとは、ひとつでもレートが変更されるごとに口座が再計算される場合に限り使える用語であり、「毎秒」というのとは違う。毎秒はリアルではない。
(ウ) カットラインはどこに設定しているか


2.レバレッジ


(ア) 業界ルールで100倍を上限にするのか。せざるを得ない空気。それを超えるレバを提供する業者は折り合ってくれるのか。
(イ) 週末リスクは本来50倍にするとかの週末特別対応の業務的、技術的可能性。
(ウ) 最大レバレッジ計算の方程式を明確にする。


3.追証・ロスカット


(ア) 追証制度を採用するか、しているか。
(イ) 追証制度と自動ロスカット機能を併用しているか。ありそうもないが、あれば詳細。


4.証拠金方式


(ア) 定額、定率、BOE:修正された法案からだと、どれも認められているように見える。
(イ) VaR、SPAN:これらに意味があるとは思えない。内部管理で使うならわかるが、顧客に当てはめるやり方としては不効率にみえる。


5.未収金


(ア) 開示すればいいのではないか。少なさを誇りたい業者もあるだろう。
  (1)未収金発生件数(月別)
  (2)未収金額(発生ベース月別)
  (3)未収金額残高(月次)


6.スプレッド


(ア) 一回でも0.0がでたら「0〜」という広告表現に問題がないのかどうか。あくまでも統計学的表現をベースにするほうがよいのではないか。一般的に理解される統計手法は許されるべき。

(イ) EBSを割り込む(より狭い)レート提示が過度におこなわれることについての懐疑。卸値を飛び越えれば、市場のゆがみと捕らえられる(次章で展開予定)。業者のリスクの観点から。

(ウ) 1ポイント固定スプレッドの存在意義。そもそも銀行のレート変化と同じように変化させるIT技術が未熟なときに生まれた仕様であり、本来なら卸市場の変化と同期した動きをさせたかったはずだが、今は、固定が大半をしめつつも変動レートが、少しずつ海外系から入り始めている。業者の市場リスクマター。


7.スワップ市場


(ア) スポット以上に崩れ果てたスワップ市場の今後の行方(次章にて詳細)。取引所をはじめにやりすぎの感がある。


8.カウンターパーティ


(ア) カバー先と、預金先を混ぜて開示する業者。本来意味が違うのだから別であることがわかるように表記するべき。
(イ) PBを採用していても、Spoke Bank名も開示しなさいと規制上はなっている。これに違反(気づいていない?)する業者も見える。
(ウ) 本来、決済先だけでいいと思うが、一応取引相手というくくりで開示が義務化されている。


9.約定


(ア) 約定拒否するかしないか(成行注文に対する現象)。約定拒否のルール(ロジック)の開示。拒否率の開示の必要性。
(イ) ストップはスリップする前提か、一切なしかの開示の必要性。
(ウ) ストップのスリップは人工的に限定的か、市場任せかの開示の必要性。


10.自己資本規制


(ア) 自己資本規制比率の話ではない。BIS規制を参考にして預かり資産の4%とか8%以上の自己資本を強制する。実質的に弱小業者を排斥してしまう。吸収合併加速の可能性を高める強烈な縛りとなる。未収金増加への備えとして。


11.BCP


(ア) ある一定の規模になったら、BCPを充実させなくてはならない。具体的には、バックアップサイト(オフィス)、バックアップサーバー、アーカイバー(バックアップのデータセンター)など、コスト負担急増する。どのレベルで強制するか、あるいは全員に強制するか。


12.NFAに習って両建て禁止?


(ア) そろそろそういう時期かとも思うが証券や商品も同時でないと不利、不公平。証券の業界団体が強い限り実現はしないだろう。


13.カバー取引のロジックをある程度開示


(ア) 本来顧客には関係のない話である。でも開示することがいいことのようになりつつある。同じレベルの例としてはカウンターパーティの開示に相当する。単に透明性の視点から。

 (1)完全人間対応 (discretionary)
   (ア)1分以内のカバールール。1分以上放置すればあとのリスクは大差ない。
     すぐカバーするのか、すぐはしないのかと言い換えてもいい)。
     それ以上か、一切ないか。

 (2)機械対応(systematic)
   (ア)アルゴリズム(ヘッジファンドスタイル):
     相対的にリスクがコントロールされているようで、調整が難しい。
   (イ)束ね処理等(OTCスタイル):    
     単純だが、これだけでリスクをコントロールしているとはいえない。
   (ウ)完全1対1(ブローカースタイル):
     システムが順調に動く限り市場リスクは100%コントロールされていると
     いえる。波及的に、これが新たにCLS等への負荷の問題を引き起こす。


14.市場リスクのモニタリング


(ア) 対顧客と対カバー先のネットポジション
  (1)リアルタイムのスクリーン(ブロッター)がある、ない。 
     リアルタイムかどうかが大切。ない場合の対応はどうしているのか?
     リアルタイムの定義は上述のとおり。

(イ) 市場リスクモニタリングは、
  (1)通貨単位(Cash)でおこなっているか。通貨ペア単位(spot/forward)で
     おこなっているか。市場リスクの計算は通貨単位(BOE方式)のため、
     通貨ペア単位だけだとモニタリングが正確にできているとはいえない。

(ウ) 市場リスク額は本当に正しく計算されているのか。


15.規制の話ではないが、取引所同様、税制優遇をしてほしい。


(ア) このままでは不公平すぎる。業者、投資家ともにこの点は一致する。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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