最近の米国におけるFX規制の動き(追加)
前回米国が両建てを禁止するなどの新規制を実施するということをお伝えしたがそのとき書き漏らしたポイントがあるのであわててここで追加したい。詳細は、英語に不自由しない人であれば、前回同様以下のURLの文章を読んでいただければ、私の説明は不要であるが、原文も実際のビジネスモデルやそのシステムの論理構造を理解する者にとっては曖昧な内容である。
http://www.nfa.futures.org/news/newsNotice.asp?ArticleID=2273
Offsetting Transactions
さて、書き漏らした点というのは両建て禁止と同時に、現在 5月15日から、決済の手段を先入れ先出し(FIFO)に限定するという。つまり落ち玉(決済)指定はできなくなる。そうなると論理的に、新規で建てたポジションに利食いのリミット注文や損切りの決済注文を紐付ける行為も禁止となる。例をあげて説明する。
ドル円で 1万ドルの新規買いを98.00、97.00、96.00(時間的にもこの順番で成立)で3万ドル分持っていたとする。そして、今までどおり、それぞれ1円下がったら損切りをしたいと思ったら、「新規」のストップ売り注文を、97.00、96.00、95.00に入れておかなくてはならない。そして、97.00に相場が下がれば、最初に建てた98.00にFIFOルールで当てられる。
このルールの背景は、決済指定することで実現する損益を投資家がコントロールすることができ不適切な所得の調整がされることに歯止めをかける目的があると思われる。
アマウントが違う場合は、同じアマウントで一番古いものでいいという条件が付いているが、これは分割機能に配慮したものと思うが、開発する側からすれば、どうせ開発するならそこまで作るのであまり意味はない。
Price Adjustments
いったん約定した取引をあとから価格訂正することを禁じるが、例外として
(1)その訂正が客の苦情に対して、客の有利になる訂正の場合、
(2)いわゆるStraight Through Processing(DMA)のモデルを採用している業者に限り、カバー先があとから約定価格を変更してきた場合
の2つのケースに限り許す。ただし、それは約定後15分以内であることと、変更する根拠となる証拠を添付しなくてはならない。
これについては、あとから顧客の不利になる訂正を入れることはまず現実的にないので、あまり問題にはならないように見える。
現在細かい点については、NFAと業者の間で、具体的な対応についてまだキャッチボールが続いている。
これら一連の新規制が指し示すものは、明らかに、先物取引所の取引ルールにあらゆる仕様をあわせようという動きである。主体がCFTC、NFAなら言わずもがなである。
米国NFAの両建て禁止の施行延期
「最近の米国におけるFX規制の動き」で触れた米国規制当局の両建て禁止の施行が5月15日から7月31日に延期となりました。前回これに触れているので、一応ここでもアップデートしておかないと無責任な気がしたので、お知らせします。
これは米国FX業者からの陳情による結果である。システム上の対応なくしては本規制を実装することができず、そうするためには5月15日では時間がなさ過ぎるという陳情であったと推測される。
実際の告知は以下のNFAのHPに記載されている。
http://www.nfa.futures.org/news/newsNotice.asp?ArticleID=2281
最近は、日本の規制当局も米国の当局も動きが多い。一方、英国からは何も聞こえてこない。規制緩和の急先鋒となった英国と大きく(?)距離をとる米国。そしてその狭間で英国寄りに見えつつも、独自の規制概念を打ち出し始めた日本がいるようにも見える。大変興味深い。自然、Forex Pressに寄せる私の記事(?)の更新頻度が高まることになる。