最近の米国におけるFX規制の動き
米国に限った話だが、ついにCFTC(NFA)が5月15日から両建て禁止を実施することになった。
http://www.nfa.futures.org/news/newsNotice.asp?ArticleID=2273
もともと米国先物市場において両建ては認められていない。取引所の先物取引であろうと、OTCのFX(先物仕様)であろうと両建ては認めないという主義を徹底する動きである。驚きというよりは、ついにきたか、という感じである。
そもそも両建てには議論が多い。日本の場合、商品先物でも証券の先物でも両建ては許されている。一方で、両建てを前面に押し出した勧誘は「よくないこと」として業界は自重するよう求められている。日本で同様の両建て禁止を実施するには、為替だけでなく、商品、証券も含めて同時に行わなければならないと思われるため、その実現には時間がかかるだろう。
そもそも両建ては見た目の安心感(まだポジションを閉じていないから負けが決まったわけではない、といった表示上効果、見た目の値洗い損には耐えうるが、実現損は見たくないという心理的影響?)を与える代わりに手数料や金利コストがダブルでかかる副作用を持つ。また、かつてそれを利用して業者側が顧客に回転売買を過剰に誘引するという問題もあった。結局それは投資家の好みとか判断の問題かもしれないが、経済効果を優先するならしないほうがいいことは明らかである。そういう議論はFXビジネスを始めたころにさんざんした記憶があるが、結局何がよいかという見方と、市場は何を欲するかという見方との妥協の産物となっているようにも見える。このサービスを存続させるべきかどうかという議論を続けるくらいならいっそ規制として両建てを禁止してもらうほうが、すっきりしていいという気もする。ただしその場合は、あらゆる取引所取引を含めて同時に、という条件をつけたいところである。
これ以外にも米国においてはもうひとつの規制が生まれようとしている。米国においては多くの業者がインターバンク直結のビジネスモデルを採用しているという前提にたって、顧客にマイナスのスリッページを与えるならプラスのスリッページも与えなさいというルールである。これは、複数の解釈を可能とする。
ひとつは、インターバンクでいうprofit takingという注文タイプは指値買いで98.00をさしていたときに、カバーする業者のマークアップ(適正利益?)が2pips で 97.96でカバーできたのなら、その余分に儲かった2pipsを顧客に対してベターフィルとして(これをさしてprofit taking という)与えなさいという考え。
もうひとつは、顧客に対して急激に円高になるシチュエーションでビッドをどんどん下げるならオファーもそれに応じてちゃんと下げなさいという考え。つまり現在日本でも常に両サイドクォートをしなさい、顧客のサイドを読んでプライスを意図的にずらすことはしてはいけません(これは明示されているかどうか記憶はないが、業者の公平性として自主的に運営されているという前提で)、という考え方と同じものである。
後者は、すでに業者の中では常識だが、前者はそのシステムに機能として持っていないところが多いはずなので、対応がSEがらみになる。また、インターバンク直結でないDIをベースにしていると、顧客の個々の取引にどのカバーが紐付いたかを客観的に判断することができないため、Profit taking を実装することが難しいが、その場合、システム的にカバーしたレートと関係なくprofit taking の約定を施すことは可能である。これはどちらにしても業者の収益性にマイナスインパクトを与える話で、要はCFTCやNFAとしては、FX業者はOTCという殻をかぶっていても、実質的にはブローカー(仲介業者)になりなさい、市場リスクは徹底的に排除するビジネスモデルになりなさい、というメッセージに他ならないと私は思う。現状、イギリスや日本の当局に比べると、米国のほうがより厳しく見える。