外国為替取引ニュースサイト

  1. トップページ
  2. >コラム・レポート
  3. >尾関高のFXダイアリー
  4. >為替相場と株式相場どっちのリスクが高いのか(後編)

コラム & レポート

バックナンバー

尾関高のFXダイアリー

為替相場と株式相場どっちのリスクが高いのか(後編)

>為替相場と株式相場どっちのリスクが高いのか(前編)はこちら


「ゆでガエル生殺し」と「問答無用未練ぶったぎり」


 単に市場としてみた場合は、株取引のほうがむしろ危険である、もしくは株も為替も危険度においてはさして変わらない、という私の従来からの主張は以下のポイントから出てきている。ここでいう危険というのは、より変動率が高く、より流動性に乏しいことを意味する。損する人が多いとか、すさまじい儲けが出ることがあるとかいう視点の話ではない。ましてやレバレッジの論点とは切り離した話である。

株取引の場合その多くは為替のようなMCルールがない。したがって、その日を締めてから証拠金(担保金)が足りないと請求(追証)がくる。そしてそれが明日までにとか、明後日までに振り込まれないと強制的に決済します、というような悠長なながれでことが進んでいく。私はこれを“ゆでガエル生殺し方式”と呼ぶ。その間投資家は考える余裕や、資金繰りの時間が与えられるが、これが最悪なのである。その間も相場が反対方向に行き続けると最悪である。そもそも最初から消費者金融にまで手を出して株の信用などする気がなかった人から見れば、為替のように最初のルール通り、MCになったら即カットのほうが、泥沼にならずに済んだはずである。中途半端に生殺しのようなやりかたで追証を求められたために、さらに泥沼にはまってしまうというパターンに陥りやすい。為替の取引はほぼネット化され自動化され、MCルールが行き届いている。これを“問答無用未練ぶったぎり方式”とでも呼ぼうか。ゆでガエル生殺し方式は、客である投資家が生殺しになるだけではなく、その客を受託している証券会社をも危険にさらすことになる。証券業界には未収金が多いはずだかFXビジネスにはMCルールがあるおかげできわめて少ない。


株式市場も実は24時間なのである


 為替は24時間月曜朝から土曜の朝まで動いている。流動性は株よりもばっちりである。したがって寝ている間は無防備となる。それが危険といえば危険だが、そのためにリミットやストップ注文を入れられるようになっている。一方株の場合は、夜はやっていない。ところが、である。実はやっているのである。日経先物はCMEでもやっている。たとえそれがなかったとしても、NYKでは株式市場が開いている。ほとんどの場合、NYKダウが大きくさがれば、それを受けて東京市場も大きく下げてきたことはその証拠をあげるまでもない。その結果、朝起きてNYK市場の大幅な下げを見た投資家は、あわててパソコンを立ち上げてマーケットオープンでの成行きの売り注文を入れることになる。売り注文が入ればラッキーだが、その前にすでに信用のラインを超えて追証になるか、強制決済ルールがあるネット証券なら(あるのでしょうか、最近?)ほっといても切らされることになる。日経先物をロングにしているということは世界中の株式をロングにしいているというのとあまり変わらないと思うべしということである。

(余談ながら、ここに世界の株式指数をCFDで取引できるようにする妙味、醍醐味があるのである)


どっちが危ないかではない


 以上の例でもわかっていただけるのではないかと思うのだが、株と為替でどっちが、危ないか危なくないかという判断は、その対象となる市場の「変動率」や「流動性」そのものだけでなく、それを取り扱う業者の「システム」や、「注文の方法・機能、レバレッジ」(どこまでかけられるかではなく、自分がどこまでかけているかである。そこを間違えてはいけない。300キロまで出せる車だから公道で素人が300キロだすから大事故になるのである)、そしてそれらに対する「理解度」も含め総合的に判断する必要がある。つまり、危険かどうかという判断は俗人的(属人的)なものであり、市場ごとに危険とか安全と評価されるものではないということである。(今回、一番言いたかったことはこれです)

自分で判断して売り買いする投資家に求められることはそれが株式であれ、為替であれ、自分の経済的余裕を十分考慮したレバレッジで行うこと。レバレッジの意味がわからなかったらわかるまでデモ取引で勉強すること。決して焦って虎の子の老後の蓄えを切り崩したり、親戚に追証のためにお金を借りに行ったりしないこと。明日のご飯を犠牲にしないこと。自分の相場観を磨くこと。MCになったらいったん頭を冷やすこと。熱くなるな。取引システムに慣れること。業者選びは慎重に。レバレッジの良い点悪い点を体で覚えること。というような点になる。すべての相場の取引において通じる話である。市場の違いではない。為替取引は莫大な損失を被る可能性があるというコメントを見たら考えてみてほしい。株でそういうことは今までになかったかと。


以下は本論を集約したモデルである。これだけの因子がかかわってくるのである。


その投資家が取引するその市場の危険度=
(市場の変動率)x(1/流動性)x(自分がかけているレバレッジ)x(1/自分が使う業者のシステムの安定性)x(1/自分の取引システムの習熟度)x(1/自分の関連市場についての基礎知識の習熟度)x(自分の優柔不断的性格、熱くなり易さ)


※「1/」は単に逆数を意味する。つまりその要因が上がればリスクは下がるという意味


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

ニュースクラウド