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尾関高のFXダイアリー

金先業界2009年の展望(前編)

今回は、未曾有の経済危機の中あらゆる金融業界が低迷する中、2009年の金先業界に何が起こるかについて、現在手に入れている情報をもとに私なりの予測も混ぜ合わせながらまとめてみました。


現在のFX取引を提供する金先業者は、
[証券]42 [商品]10 [外為専業]62 [銀行]2 [TFX参加業者]16(FOREX PRESS取引業者一覧より

現在約延べ130社あまりあるFX業界のうち、既存の業界ではない、いわゆる独立系の業者が62社ある。欧米のFX専業者の数はざっと名前が浮かぶレベルでも10社程度で20社まですら浮かばない。確かにドイツやその他欧州の地域で営業する小さな業者まで見えているわけではないのでこの比較は当たらないが、それでも外為専業62社というのは多い。だからといって減らせという話をしたいのではなく、これらすべての業者が利益を出し続けられるほどにこのビジネスモデルは高収益ではなくなりつつあるため自然淘汰の波が来るという話である。この淘汰を助長する要因としては以下のポイントが挙げられる。


(1)金融不況

経済不況といってもいいが、グリーンスパンの言う「クレジットツナミ」によって投資家の投資行動がかなり抑制されることは間違いなくFX業界においてマイナスである。ただし、エクイティ等その他のセグメントに比べてFXという市場自体はストックではなくフローであるという観点から見れば、市場そのものが傷つくということがない分、その悪影響はあくまでも間接的であり限定的である。わかりやすく言えば、株は信用不安でゼロになったり取引が停止したりするが、為替はゼロになることはなくまた経済活動が続く限り停止することもない。したがって、エクイティで傷ついた投資家もあえてFXの市場での活動は最後の活躍の場としてその動きを止めることはない。通貨ファンドで最高益を得たというファンドがあるという話も聞こえてくるのがその証左である。個人投資家もそれに順ずる動きを見せるであろうと思われる。したがって相対的ではあるが、為替ビジネスはこういうときほど優良児としての存在をアピールすると期待したい。


(2)過当競争

クライマックスはスプレッドゼロであったことはよくわかる。現在スプレッド1がディスカウントショップのぎりぎりの価格である。これによりすさまじい取引を引き込んでいる業者が顧客取引高トップに君臨している。スプレッド3ポイント程度でそうしたチキンレースにあえて加わらない業者に比べて単位取引利益率は3分の1以下と推定されるが、取引高が10倍以上あれば十分元が取れる。しかし業界の下位に位置する業者で、さしたる魅力もないところはそうした上位のアグレッシブな営業戦略により淘汰の最初の犠牲者になる可能性は十分ある。


(3)信託分離義務化


まず間違いなく義務化は行われるという雰囲気である。そうなると以下の2つの局面で体力のない業者は立ち行かなくなる。

一点目は信託銀行に受けてもらえないような脆弱な財務基盤と粗末な組織とリスク管理体制しかもたない業者は脱落する。
二点目はそれ以前の問題で、預かり資産を信託に全額もって行かれることで組織の運営資金が不足し営業不能となるケースである。むしろ私はこちらのシナリオで廃業や営業譲渡、よくて合併の動きが加速してゆくと推測している。これこそまさに危険因子の撲滅としての効果が期待できる部分である。投資家にとっては良いことである。

十分な資本金とキャッシュフローを確保できない業者はこのビジネスをしいてはいけないのである。それが監督官庁のメッセージとして実行される。投資家からみれば今までの不完全な信託スキームから完全な信託になるのでその内容は証券で行われる保全のシステムとなんら遜色はなくなる。むしろどんぶり勘定でいざ破綻となると補てん資金が足りないという憂き目にあうようなスキームよりは、自己完結的で完全性が高い。リスクの分散化の一例である。


(4)レバレッジの制限

株は大体3倍。為替は1倍から最大400倍の範囲で業界は提供している。海外でも100倍は当たり前である。上流である銀行の管理は大体5%がメドであった。これはあくまでもオーバーナイトリスクの管理である。最近のオーバーナイトのボラティリティは2.5%程度はあるようだ。つまりオーバーナイトでポジションをキャリーする人はレバレッジ100倍でやっていると一発でマージンカットになってしまいやすい相場である。これを1シグマで見るか2シグマでみるかにもよるが、絶対MCはいやだと思うなら間違ってもレバレッジ100倍でポジションを放置してはいけない。そういう相場である。デイトレのプロの立場も考慮するとしても100倍というのが妥当な数字ではないだろうかと思う。オーバーナイトでキャリーするポジションにはせいぜい30倍がMaxであろうか。その辺の数字が規制されるとしたらありそうな数字である。かりにこのレバレッジ規制が実現すると、高いレバレッジでデイトレーダーを引き込んできた業者の魅力はその分減ることになる。また、投資家サイドから見てもレバレッジ100とか200倍を前提に取引していた人はその分手数は減ることになるので、この規制のインパクトは業界全体の取引高に影響を与える。


(5)ファンドの流入

ファンドは死んだというイメージなのだが、一部の事業ファンドはその規模を縮小しながらも新たな増殖のチャンスを探している。彼らから見ればこの業界再編の動きはひとつのチャンスとしてかなりクリアに見えているはずである。苦しいところを安く買い叩いて複数の業者をくっつける。あるいは資金繰りの苦しい業者に資本を入れるなどの動きはでてくるだろう。

(後編に続く)


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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