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尾関高のFXダイアリー

CFD、最近のFX市場、為替の取引所

キーワード
CFD
■CFD

 2005年に私が日本でCFDを最初に開始してから2年半がたった今年2008年ついにCFDが複数の業者で取り扱われる地合が整いつつあるようですね。結構なことです。この商品は、店頭有価証券デリバティブに属する取引として認可の対象となっているものですが、システム的な仕組みから見れば、外国為替証拠金取引と同じです。ですから、当初私はCFDという意味不明なアルファベットではなくて、「外為証拠金取引」にあわせて「証券証拠金取引」というほうが、すわりがよく、またその実態もよくあらわしているという理由で「証券証拠金取引」という名前にしたかったのですが、欧州ではCFDとしてすでに社会的認知されていましたし、認可申請の段階ですでにCFDとしていたので、あえてその名前のままスタートしました。CFDがどういう取引かについては私の2005年11月のバックナンバーに大体説明をしてあります。

今回改めてこのCFDについてペンを執ったのは、今年2008年が、本格的にCFDが個人投資家市場に投入されていく年となる、と思ったからです。欧州では、この取引が結構盛んです。業者としては私が手がけたパートナーであるサクソバンクと同じく老舗のCMCがありますがこのCMCも昨年から東京に事務所を構えて本格参入してきました。たぶん今年中に3社以上が取り扱いを始めるのではないかと思います。

では、CFDの魅力はなにかですが、CFDの対象を証券に限って言えば、やはり海外の上場株式を、2〜3倍(時に為替並みの数百倍)のレバレッジで、すべて円決済口座で、一括して取引できることだと思います。機能としては外為証拠金取引と同じです。対象市場が為替から株になるだけです。これ以上の商品仕様説明は不要と思います。この商品に興味をもつ可能性のある顧客層としては、為替以外に夜間取引できる市場が欲しい。為替が暇なら株をやる。海外の株式にもともと興味がある。証券会社で外国株をやってきた。日本の日経平均とアメリカのダウとヨーロッパのDAX/FTの株式指数を組み合わせたグローバルポートフォリオを考えたい、という人たちではないかと思います。どちらかというと日本の株式一筋という人よりも、為替取引をしている人の方が入りやすいのではないかと思います。

想像すればわかるのですが、現在の日本の株式市場に比べれば、この市場はきわめて狭いと思います。ヨーロッパでは株式取引の20%ぐらいはCFDかという話もありますが、欧米に比べてヘッジファンドがほとんどない日本においてそういう%は期待できませんし、国内株式に対しては信用取引がCFDと同じ機能を果たしています。個人投資家だけで、10%以上に成長するとは思えません。外為証拠金取引ほどにも成長しないと思います。日本においてはあくまでもニッチマーケットとしてこのCFDは位置づけられると思います。したがって、為替業者は現在100社以上ですが、これはせいぜい20社ぐらいまでとして、そこから5社〜8社ぐらいに絞られればちょうどいいと思います。無論それを選択するのは個人投資家の人気投票ということになります。


■最近のFX市場

 業者が多すぎということは昔から言っていることですが、3年以内には業者数が50未満になることを期待しています。アメリカでも数十社ありますが、大体10社が生き残るのではないかという意見もあります。それぐらい生き残りが大変な業界にあっという間になってしまいました。IT社会は何でも早いものです。アメリカが10社なら、日本は5社でいいじゃないかということになりますか・・・。さて、どうでしょう。ひとついえることは、業者が大きくなるに連れて、リスクに対する担保のラインが高くなることは必須です。どういうことかというと、つぶれちゃいけない業者には、つぶれないようなリスク対策を求められるようになるでしょう。今のようなあいまいな指導ではなくて、もっと具体的な指導。たとえば、バックアップデータはリアルタイムでとるようにとか、BCPサイトをもちなさいとか、サテライトオフィスを持ちなさいとかです。これらを実現しようと思うと、現在の運用コストは限りなく倍に近づき、単価も同時にあがっていきます。そうなると、装置産業=固定コスト業としての利点以上にその制約がいたるところに現れるようになり、今までのような高利益率の商売ができなくなる、と同時に大きな投資を必要とする産業と変質していきます。つまり銀行や証券業界と同じです。そうなると、小さな業者として存在することが不可能になります。この環境への収斂は遅かれ早かれ起きるものと予想しています。それを早めるかどうかは実際にそういう事件が起きるかどうかにかかっているといえます。昔からそうです。アツモノを食べないと、“なます”ならずとも吹くことがないのです。アメリカの大きなFX業者は大体BCPサイトを持っているようですね。特に同時テロ以降はそういう対応が進んでいます。こういうアツモノ(日本の場合は地震ですね)が来ると動きは早くなります。個人投資家にとってアツモノはいやですが、安全対策はいいことです。


■為替の取引所

 永遠の夢なのでしょうか。アジアでも、アメリカでも何度もトライされ失敗してきた上場商品です。可能性としてはコメのほうがよっぽど簡単に見えます。成功しているのはアメリカだけです。代表的なのはCME,FINEXでしょうか。彼らにあって、日本にない、なさそうなのは、ヘッジファンドやCTAの存在と、ギブアップやEFP(EFS)のサービスです。CMEは通貨を上場しているといっても実質はEFPがあるから機能しているようなものではないかと推測します。

日本で金先取引所がくりっく365としてスタートしていますが、これはあくまでもOTCのモデルを採用しているので、実質的には取引所がひとつのFX業者になっているのと変わりません。どういうことかというと、取引所は客同士をぶつけるところですが、くりっくさんはインターバンク/Market Makerのプライスに客の注文をぶつけるだけのはずです(まちがってたらすいません)。つまり 取引所が 107.55-58のときに、自分の買い注文が107.56なら、参加者は誰もが 107.56-58が見えなければならないのに、それが見えないのは本質的には伝統的な取引所とはいえないということです。いわゆるマーケットメーカの価格しか当ててもらえない。

これに対して、CMEなどは銀行であれ、個人であれ取引所に出す注文は”平等”に扱われます。その代わり銀行や先物会社のディーリングデスクにはジョイスティックみたいなハンドルがあったりして簡単に値段を差し替えたり取り消したりできるようになっていたりとよく考えられています。それ以上に実質上はEFPで取引をして、それをあとで取引所にポスティングすることのほうが大口で取引するファンドには便利で、その取引高も含まれていることを忘れてはいけないし、そういう需要は今の日本では望めないのです。現状、先頭を走るいくつかのFX業者が銀行に直接APIして実質上のシステム仲介をする仕組みに切り替えてきています。これは市場リスクを極限まで引き下げながら、ディーリングという不安定な営業体質から安定的なそれに変貌したいという望みと、対行政上の妥協策としても使われますが、最大の理由は、スプレッド競争が激しくなると人間がするディーリングではリスクを負いすぎるため、銀行に丸投げという流れになるパターンだと思います。こうなると、最終的に流動性やプライススプレッドの鍵を握るのは結局川上に位置する各FX業者のカウンターパティに名を連ねる面々となります。そしてかれらは今も多くのFX業者の裏側にいますし、取引所の裏側にもいます。つまりどっちでやっても「同じこと」です。取引所を生かすも殺すもこうした面々がその意思を結託させればいかようにもなってしまうのです。そのようなことはないと誰がいえましょうか。FX業者に提供するよりもよいレートを取引所に出すという銀行ばかりであれば取引所は魅力を増します。そうでなければ、それまでです。

さて、今市場で何が起きているか、業者の一部はドル円1ポイントクォートです。トップ10の中のドル円のスプレッドは軒並み2ポイントを切る勢いですね。無論アウトライトの手数料もありません。ここからさらに取引所の魅力を増すサービスは価格の中には見出しにくいと思います。あとは預けたお金が安全か、というテーマに移ります。そうなると今の市場の感受性は低いといえます。この辺は金融庁のご努力のおかげで、かなり浄化が進んで、少なくとも検査が終わって問題なしと判断された業者でならまず間違いなく大丈夫と考えるものでしょう。あとは市場リスクとシステムリスクが顕在化したときにどうなるかですね。これは取引所でも同じです。為替の市場リスクのほうが経験的に大きいがために、シンガポールでもMSAが、為替のポジションに対する、いわば個人投資家に対する維持証拠金みたいなものを引き上げたことがあります。LTCMとか同時テロとかあったあとのことだったと思います。いざボラティリティがブレイクすると取引所が耐えられないのです。そうなると参加者にたいしてより高い証拠金を請求するのはFX業者と同じです。保険となる基金は果たして十分でしょうか?公設市場であれば預けたお金は絶対大丈夫というのは、必ずしも真ならず。確かに逃げたりはしませんが、払いきれないという事態は業者でも取引所でも等しくおきうるのですから。

今年は日本で外為証拠金取引が始まって10年目です。10年前には、私のデスクには電話取引と数人のスタッフしかいませんでした。はじめたときは日本で最初ですから、成功するのか失敗するのかまったくわかりませんでした。よくもここまで巨大化したものだと感慨にふけります。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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