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尾関高のFXダイアリー

ついに登場、有価証券店頭デリバティブ--証券CFD取引

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証券CFD取引

今回私の勤める会社、ひまわり証券では「証券CFD取引」を開始することになりました。10月25日の日経朝刊にも掲載されたのですが、マッチ箱程度の紙面だったのでお気づきのない方に改めて宣伝です。

 このCFDは Contract For Difference の略で、そのまま直訳すれば差額決済となります。主に株式市場において、現物株式や株式指数等の派生商品を店頭にて取引する、国内においては「有価証券店頭デリバティブ」の扱いを受ける取引であり、現在ヨーロッパの株式売買の30%ぐらいはこの取引で成立しているといわれています。もともと株取引は100万円の価値があれば100万円を用意して交換(売買)するものですが、「株の所有」には興味がなく、相場商品としての取引にしか興味のないヘッジファンドや機関投機家には差額決済取引をしたいという需要はあったわけです。それに十分答えるものになっているのがこの証券CFD取引です。日本でも信用取引というのがありますが、証券CFD取引のひとつである現物株式CFDは、これに酷似した取引になります。

 証券CFD取引を細かく分けると『現物株式CFD』『株価指数CFD』『証券限月CFD』の三つがあります。まず現物株式CFDでは、まさに個別銘柄を個々に売買するのですが、あくまでも差額決済しかしない。となると、現物の買いを翌日に繰り越すと金利を払うことになります。いわゆる信用取引で言う日歩が発生します。仕組みは簡単で外国為替証拠金取引を行っている人ならすぐ理解できる、証拠金取引です。これとほとんどスキームが同じです。「ドル/円」が「株/円」になっただけです。外貨で決済する銘柄は自動的にすべて円決済になります。「株/ドル」+「ドル/円」が合体していると思ってください。

 取引所において株価指数はその先物を取引することは出来ますが、指数そのものを取引することはできません。ところが株価指数CFDでは、指数そのもの(現物価格)を取引することができます。無論証拠金ベースでの取引になります。直物価格ですから繰り越せば日歩も発生します。

最後に証券限月CFDですが、普通の取引所の先物取引と同じですが、すべてを円決済します。

 これらの3つの種類に共通するのは、有価証券店頭デリバティブ取引であること(特に店頭であることを強調します)、証拠金取引であること、差額決済のみであること、世界中の主要な銘柄(と同等)の取引ができること、すべて当該市場指定通貨で評価されると同時にさらに円価にてリアルタイムで評価され、すべて円決済であることです。

 一方、現物株式CFD、株価指数CFDにおいてのみ共通する特徴として、取引所の最低取引単位未満のいわゆる「端株」取引ができること、指数CFDは1倍から取引できること、手数料相当分が原則取引値段に含まれることです。

このような取引が生まれる背景としては、


  1. インターネットでの金融取引システムがさらに高度化していること
  2. 取引所取引と相対市場取引を融合させる金融技術とIT技術が発達していること
  3. 法的な環境が整っていること
  4. 個人投資家が直接的に市場に参加することに抵抗感がなくなりつつあること

【3】については、今回の有価証券店頭デリバティブとしての認可を日本初でいただいたわけですが、このCFDの取引は米国ではまだ解禁されていません。欧州で発達してきている取引です。日本がどっちの方向に進もうとしているかがうかがえるひとつの(いい意味で)事件であると思います。

次に【4】についてですが、ひまわり証券も日本で最初に外国為替証拠金取引を扱っていますし、日経225先物取引もインターネットで主に個人投資家向けに提供しています。こうした、自分で売買方針を決断して自己のリスクで取引を行う投資家層が2000年以降加速的に増加しています。そして、外国為替取引によって、個人投資家の活動時間が日中ではなくて、夜間にシフトしていることにより、為替相場を見ながら、リアルタイムで、欧州の株式市場や、英国、米国の資本市場を見られる環境が整っていることがこのCFD取引が導入されうる大きな理由となるわけです。

 個人投資家は為替だけで満足するとは思えません。また、株式になじみ、為替になじんだ投資家のなかには、ならば外国の株式市場も見てやろうという意欲の高い方も多数いることと思います。多分そういう方々の一部にはすでに個人で海外のシステムを利用して取引をされている方もいるかもしれません。

 私が昔から素朴な疑問として感じていたことに、日本人にとって外国株を買うという行為はきわめて複雑で難しい。為替も絡むし、保管のことも絡む。けれど私がしたいのは株を通しての会社の所有ではなく、あくまでも値上がり益か値下がり益だけなのだが、それに応じた簡単なサービスはないものか。自宅にいながらにして、よなよなボーダフォン、フィアット、ブルガリ、ノキア、BMW、などなどの日本人にもなじみのある海外の株を取引するのも夢があっていいと私は思います。指数派には、ナスダックミニ、S&P、FT100、Stoxx50、DAXなど各国の主要株化指数が直物、先物どちらでも取引できます。これで、グローバルポートフォリオはばっちり描くことが出来ます。

 当然それに付随するリスクがあります。システムリスク、市場リスク、店頭なので信用リスクもあります。それらについては十分な理解をもって望んでいただきたいとおもいます。

 最後に、一部の私を知る人の中には、私には為替専門のイメージがあるとおもうのですが、今回のCFDで株もやるな、と思っていただければ光栄のきわみです。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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