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尾関高のFXダイアリー

ロールオーバーされる契約期間と反対売買までの期限

 前回の『9、10 自己資本規制比率のアドオンの解釈について』で小生が指摘した契約期間の考え方について多少の反響がありました。しかし、その中にはよく分かるというご意見と、今ひとつ言っていることが分からないというご意見をいただいています。ここで、もう一度言葉を変えて小生の申し上げた考え方の証明を試みたいと思います。なお、証明したからといってこれが絶対正解というわけではないことをご了承ください。すべては金先法の内閣府令を見ないことにはわかりません。


【証明(1)】
仮定1:対顧客取引(A)のカバー取引が100%できているので市場リスクは消えているという主張が正しい、妥当である。

仮定2:インターバンクサイドのカバー取引(B)の契約期間はT+2以内の受渡で明確だ。

すなわち、
B<=T+2
A+B=0
A=−B
したがって A<=T+2

つまり対顧客の取引も契約期間はT+2である。


【証明(2)】
仮定:「いつ反対売買するか分からない=契約期間が不明。だから便宜上契約期間を1年とする」が妥当である

反論:そのポジションの値洗いに使うレートが1年のフォワードレートでないとアドオンの指し示すリスクの源泉がない。しかし現実には、業者は値洗いにスポット(直物)を使っている。

Forward Rate=Spot+Swap
アドオンリスクの源泉=Swap

結論:直物で値洗いするとアドオンのリスク対象が再構築コストに含まれない。これは矛盾している。

アドオンのリスクは再構築コストに現れる。
再構築コストを動かすのは「取引したレート」ではなく「評価するレートの変動」であり、この変動はSpotとSwapが及ぼす。
Spotの変動リスクは市場リスクの計算がカバーしている。
Swapの変動リスクはアドオンの計算がカバーしている。
繰り返しになるが、SpotレートにSwapはないが、Forward Rate にはSwapが含まれる。


【証明(3)】
仮定:「ロールオーバーすることが前提のときは契約期間の計算にロールオーバーされる平均的延長期間も含む」が妥当である

反論:仮に、銀行と法人顧客での取引の中で、継続的にHRRが3ヶ月ごとに行われるものがあった場合、これもBIS規制上1年とか5年とかで計算しているのであろうか。
そうであるとした場合、値洗いに使うレートをどのように計算しているのだろうか。
(同じ市場のリスクを把握する場合において、銀行と証券ではリスク資産の計算ルールこそ違えども、その根拠が違うということには合理性がない)


以上、小生なりに知恵を絞った、わかりやすい説明ですが、いかがでしょうか。個人的に、市場リスク(アドオン)を考える場合の「“ポジション”の“契約期間”」と「顧客の“反対売買をするまでの期間(期限)”」の話とがごちゃごちゃになっている議論が多いことが現在大変気になっています。逆にそれらは法的に同等に解釈され、扱われるということになるというご意見があればぜひとも、私の“独善的誤解病”がこれ以上進行しないうちに治癒したいので、お教えいただきたいと思う次第です。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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