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尾関高のFXダイアリー

為替と取引所(2)

 ついにTIFFEが名乗りをあげましたね。基本的には、相対市場との共存が望まれるところではあります。投資家にとって取引所取引のメリットは第一に分離保管されるという点でしょうか。

構造的には、『取引所→他社清算会員→取次ぎ会社→顧客』という流れと、もっと簡単に『取引所→他社・自社清算会員→顧客』という流れがあります。現在のところ清算会員の純資産条件が500億円なので引き下げないとほとんどのFX業者は清算会員にはなれません。となるとなれる大手の証券会社・商品先物会社の取次ぎ員としてぶら下がることになります。そうなると気になるのはコストですね。取引のチャンネルに介在するすべてのメンバーが手数料の分け前に預からないと仕組みは成り立ちません。

仮に、手数料が10銭として、取引所の端末に表示されるドル円のレートが金額に係わらず(多分最低額1万ドル?)104.12−13とかの1銭スプレッドだとすれば、この10銭を取引所、清算会員、取次会社で分け合うことになります。結構厳しいものがありそうです。

欧米の同様の商品を相対で扱う業者は、手数料を取っていないのが現状です。あくまでもスプレッドのみです。そのスプレッドも5銭から3銭ぐらいまで縮んできています。そういう海外の業者が本格的に日本で営業を開始すると、相対市場での取引コストがスプレッド5銭として、取引所が「スプレッド1銭+手数料10銭x2=21銭」という単純な比較ができるわけです。その間にいるのが、現在の大手の国内FX業者で「スプレッド5銭+手数料5銭x2=15銭」からもっとアグレなところで「スプレッド4銭+手数料2銭x2=8銭」でしょうか。すべての投資家が手数料だけで動くとはいえないので、あくまでもそれに限定した話ですが、取引コストのハンディをカバーする魅力が求められることは必至です。

そういう意味で、分離保管が法的になされる取引所というのは魅力的な気もしますが、前節でも触れたように、現在FX業者は自前の信託分離保管を進めている流れがあります。そのスキーム自体にはいろいろと欠点はありますが、取引所取引のそれと比較して遜色は感じられません。むしろ他社の顧客とプールされない分自主信託分離のほうがきれいな分離であるともいえなくもない気がします。あとは、操作性とスプレッドですね。

 

ここからは「余計なお世話」ばなしですが(日記のひとりごとなので)、仮にコストが10億円であったとして、1万ドルを1枚として、1枚あたり30円の利益があったとしたら、3,400万枚やらないと損益分岐点に到達しないわけです。20円だと、5,000万枚になります。インターバンク風に100万ドルを1本と数えれば、50万本(5000億ドル)になります。日銀の介入で大体500本とか1000本、でかいファンドで100本や200本、国内FX業者の大手で月間5,000本、小さな業者で月間200本ぐらいのイメージでしょうか。業界全体の取引高がどれくらいかは定かではありませんが、仮に月間で3万本としましょう(根拠はないです)。そのうちの20%が取引所で行われるとして6,000本です。50万本(手数料20円として)を6,000本で割ると、83.3ヶ月となり、6.94年→約7年で元が取れるという計算もできます。無論その他の収入もあれば、その他のコストもあるわけですからこんな簡単で大雑把なシミュレーションには何の意味もないですが、なんとなく計算してみたかったのでやってみました(だれも参考にしてくれなくていいです)。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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