リードギターとサイドギター
いまや金融庁までも巻きこんだ外国為替取引。外国為替取引だけなら昔からある金融取引なのに、これに証拠金とか保証金という言葉が付いただけで完全に別物扱いになり、メディア、金融庁、国会、証券業界、商品先物業界、独立系、そして裏側でつながるインタ−バンクやシステム会社を巻き込んで、それ自体一大産業化しつつあるように見えます。
一方一般の消費者から見れば、外国為替という言葉は知っていても、その中身となるとさてどうだろうかという疑問も出てきます。ちょうど、ギターという名前も形も想像はつくけれど、興味のない人にはガットギターとエレキギター、リードギターとサイドギターの違いが分からないのとよく似ています(昔なじみの楽器屋さんで「こないだサイドギターくださいっていう客がきたよ」と言う話を聞いたことを思い出しました)。そうしたギャップを埋めるべく業者はせっせとセミナーや勉強会を開き、この業界の人たちはいろいろなアプローチで関連の本を書いているわけです。それらがどれほど役に立っているかは分かりませんが、とりあえずいくつかを手にとって見て読む、そして理解するという程度の努力が投資家には必要になります。
一般に株の取引や商品先物の取引になれた人たちが一番多く外国為替の取引をするのかなと思いがちですが、意外と初めての金融取引としてこの外国為替取引をする人たちが多いようです。それだけ為替というものは株同様あるいはそれ以上に身近な存在だということではないでしょうか。
私自身感じることですが、この取引の最大の魅力は自宅で夜間取引できることと、個別の情報があまり必要ではないこと、つまりプロも素人も大体同じ土俵で戦えることだと思います。株は、個別銘柄事の細かい情報に左右されるときがありますが、そういう情報を日中仕事を持っている人は追いかけきれません。かといって個別銘柄ごとのROIやPBRを検証して割安株を探し出すというような緻密な研究をすることなど一部のマニアにしかできない芸当です。一方為替は大まかに2種類のアプローチがあるだけです。ひとつはひたすらチャートを見ながら売買のタイミングを計るやり方。もうひとつは、もっとマクロ的に国と国の経済の強さを比較して大きな流れをつかみに行くやり方です。前者はパソコンに強い人ならいろいろと工夫が効きますし、それ自体結構楽しい感じでやれます。後者は、特別な雑誌や情報誌を読む必要もなく、日経新聞やビジネスニュースを見ていれば大体の判断材料を手に入れられます。何が判断材料か、そしてその判断材料はドル売りと解釈するかドル買いと解釈するかが運命の分かれ目ではありますが。
たとえば、11月のアメリカ大統領選でブッシュが勝つ場合と、ケリーが勝つ場合とでのドル売り、ドル買いのシナリオはどうだろうかと考えても面白いと思います。
基本的なお話をすれば、通貨の交換レートは、マクロ的には、2国間の金利差がベースであり、もう少し踏み込めば、今の金利ではなくて相違として前提となっている将来のマーケットの予測値であり、それが崩れたときに相場は調整という名の変動を見せることになります。マーケットの総意はどこかに公示されているものではありませんので、いろいろな銀行やら金融情報機関系のアナリストが公表しているレポートをいくつか読みながら大体こういう前提でいるんだなと判断するしかありません。その辺が難しいところでもあり、マージャンで相手の手を捨て牌から推測するような妙味があるわけです。
最近の円高の動きも、一時期はドル高論者が多かったことを考えると裏切り状態です。2004年初めごろは今年はドル高という人も結構いました。それを前提に通貨のポートフォリオを組む大手の機関投資家もいたと思います。そのシナリオは、アメリカは緩やかに経済回復を遂げ中期的に金利の上昇が実現するというものではなかったかと思います。実際途中まではグリーンスパンも0.25づつの利上げをじわじわと進めてきたわけですが、ここへ来て原油の高騰、イラク情勢の先行き不安、大統領選の行方の不確かさが、目先の経済指標のポジティブな数字を押しつぶしているようにも見えます。一方日本(円)を見れば、相変わらずの状態で特により悪くも、よくもなっていない気がするのですが、海外からくる人たちの話を聞いていると、いわゆる不美人投票的に日本の組み入れ比率を上げざるを得ないし、日本のほうがポテンシャルがあるからということになるのでしょうか。個人的には、その線をを買って、ドル売り、円買い、そしてユーロ買いというスタンスで10月を始め、かつ終えようとしています。あとは大統領選までは静観です。