為替と取引所
金融先物業法を改正して外為の店頭取引もこれに含めることとする現在の法改正に伴い、東京金融先物取引所でもこの外為取引の上場を検討中との新聞記事がありました。今回はこの件について考えて見たいと思います。
結論から言えば、取引所取引として成功するためには以下の条件が必須になる野ではないかと考えます。
1.EFPができること
CMEでの取引においても多くの取引高はEFPがもたらすものであり、すべての取引が直接取引所に発注される買いと売りがぶつかってできているわけではありません。アメリカの場合ヘッジファンドなどを運営するCTAと呼ばれるファンドマネジャーたちはCMEのクリアリングハウスである先物会社のFXデスクと1000枚2000枚の大きな取引を一発で行った後、その取引を取引所にポスティング(Posting)することで事後的に取引所取引に移管するやり方が日常的に行われています。
2. 24時間取引できること
TIFFE単独でやるか、他の国の取引所と連携して行うかの選択肢があるかと思いますが、9時から5時までの開設では、OTCに太刀打ちできません。
3. OTCに比して対等な流動性があること
どういった銀行がマーケットメーカーとして参画してもらえるかにかかっていますが、これには使い勝手のいい入力画面や、彼らの為替のエンジンにいかにAPIを行うか、そしてそのコストをどちらが負担するかという問題があるのではないでしょうか。
4. 取扱通貨ペアがある程度そろってしていること
現在、日本でメジャーな通貨ペアとしては、ドル円、ユーロ円、ユーロドル、オージー円、ポンド円ぐらいでしょうか。これぐらいは必須でしょう。
5. 日々のポジションロールにおけるスワップ金利の計算根拠が公開されること
TIFFEとして、顧客の繰越ポジションのロングとショートをネッティングしたものをどこかのマーケットメーカーを相手にロールして、そのコストを顧客のそれぞれに割り振る作業が必要ですが、これはミクロ的にはTIFFEが相対取引を行う行為になります。本来取引所は取引について中立であるはずなので、若干その基本からは異質な取引を行わざるを得なくなります。あるいは、ロールするトモネのマーケットも同時に併設して、そこで各々会員が取引を行うのであればそういう問題はないのですが,そうなると運用も、システム開発もかなり複雑で煩雑になります。
6. 取引員(清算会員)が使用する入力端末がインターネットで行えること
いまや取引端末はインターネット回線で行われるのがあたりまえな時代です。専用回線派であった、ロイターやEBSやブルームバーグもどんどんインターネット回線でやりとりできるシステムを構築してきています。いまさら、専用線を引いて、専用PCをおいてその費用を毎月払って・・・云々というビジネスはありえないと思います。
7. 会員コストと執行コストがOTCで行うそれらコストに比して対等であること
結局、法的に義務付けられない限り、現在外為証拠金取引ビジネスを行っている業者はコストに見合わなければやらないことは明白です。経済合理性に合いません。この4,5年の間に業者は自前でシステム開発をし、それなりの独自システムを構築し何とかビジネスとして成り立つようにしてきた経緯があります。それらをすててまで取引所取引に転向する強烈なメリットがない限り、TIFFEでやるという流れになるとは思えません。むしろ、そうしたシステム開発はしてこなかった、財務的に、相対的に脆弱な業者はTIFFEでやることに前向きになるかもしれません。しかしそうした業者がこぞって会員になって行ったとしてもそれだけではTIFEEとしてのステータスやら、結果的な利潤の追求という面で果たして成功するのだろうかという疑問は残ります。
TIFFEで取引を行えば、分離保管が明確になります。これによって参入規制のハードルを低くするという措置が取られればそれなりにメリットは高くなります。しかし、果たしてこういうことが可能かどうかは疑問です。せっかく強力に進めてきた外為業法なるものに穴があきかねません。また、最近は業者がそれぞれ信託スキームを導入する傾向が鮮明になってきています。自助努力によってこうした商品も生まれ育っている途中で、取引所が参加することは、それ自体は自由競争ですから結構なことですが、法的に何らかの取引所優遇的な強制措置が入ることだけは避けていただきたいものです。