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尾関高のFXダイアリー

外為証拠金取引業界の専門用語

 本業界で業者によって使われる(HP上で表記される)言葉のなかで気になる言葉が結構あるのですがそのなかで以下の3つについて愚見を述べたいと思います。


「委託」

相対取引契約下において、顧客が証拠金を業者に預ける行為を指して「委託する」とはいえません。委託するとは、取引執行を取次いでもらう業者にお金を預ける場合であって、相対取引においては、“取引の相手側に対して担保金を差し出した”ということであり、何らかの業務を委託したわけではありません。特に証券会社が外為証拠金取引を相対で行う場合で、証券取引法で定義されている言葉と現実の契約関係や業務内容が根本的に相違する場合は、混乱や誤解を避けるためにも、違う言葉を用いたほうがいいのではと思います。


「取次ぐ」

この言葉も、証券では顧客の代わりに証券会社の名前で取引所に注文を出して執行し、代金決済は顧客口座で行うという業務を指します。一方、銀行が顧客と外為の取引をする場合、一切「委託」とか「取次ぎ」「仲介」「媒介」という言葉は出てきません。あるのは、「御社は弊行からいくらで買いました」「弊行にいくらで売りました」というだけです。つまり「取引をした」ということです。また、その反対側で銀行がいくらでカバー取引をしましたという話は出てきません。

銀行と業者とはステータスが違うという点を差し引いても、契約自体が相対である限り、それを取引所取引のように説明していくとあとあと誤解が生まれるケースもあるでしょう。


「保証金」と「証拠金」

前者は約定代金ベースの取引をするに当たりお金の貸し借りや株券の貸し借りを行う際の担保としての意味があり、後者は差金取引を前提にした将来の損失リスクに対する担保を指すと考えるのが正確な理解と考えられます。実際株の信用取引では前者が用いられ、日経225先物取引では後者が使われます。
 
外国為替証拠金(保証金)取引は差金決済を前提とした取引が一般的なので本質的には「証拠金」のほうが整合性は取れているわけですが、これも現実に使用する用語が法律で定義、規制されているわけではないので現在業界では好き勝手な使い方がされている状態です。結局のところ顧客側としてはどっちでもいいのですが、今後法律が条文化されていく過程では業界として何らかの統一があったほうが混乱や誤解が減るのではと思います。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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