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マーフィーの日々是好日

メンタルコントロールの1つの方法

今回は、「相場におけるメンタル(心理)面のコントロール」をテーマにお話をしてみたいと思います。副題として、「二人称の発想から一人称の発想へ」という内容です。

■まずは、二人称の発想と一人称の発想について

プロのトレーダーであっても、どんな初心者の人であっても、負けることを目的にトレードする人は誰もいないと思います。至極当然のことですが、誰もが収益を上げるべく、相場観やトレード技術において、それぞれ違いがあるにせよ、自分なりに精一杯判断して、勝つことを目的にポジションを造成しているはずです。

しかしながら、現実の相場は、なかなかこちらの思うように動いてくれないことが多いのです。とりわけ、「絶対に〜〜」と思って自信を持って臨んだ時にかぎって、よけいに自分の思惑とは逆の方向に推移することが多いのが現実のマーケットです。ここでは、どうして、相場が逆方向にばかり動くのかについて焦点を当てるのではなく、そのように、自分の思い通りに相場が反応してくれない時の、私達自身の心の動きについて、心理学的な面から考察してみたいと思います。

実は、この類の話は相場に限らず、実生活の中でどこにでも存在することかもしれません。例えば、会社や学校において、相手の為だと思ってやったことが、あまり感謝されないことや、逆に迷惑がられるケースというのは起こり得るものです。こちらが良かれと思って行動したことが相手方には上手く伝わらないケースも同様です。そして、こちらが相手方に対して苛立ちを覚える場合も頻繁に起こるのが実情です。

何と世の中とは上手くいかないのだろうと悲観してしまうことも多いかもしれません。何て人間関係とは、このようにスムーズにいかないものなのかと打ちひしがれてしまう人も少なくないと思えるのです。誰もが相手に対して嫌がらせをしようとしているわけではない、しかしながら結果として、相手との関係が「ぎくしゃく」してしまう、その結果、不快な思いをしてしまうという経験は誰しもされているのではないでしょうか?

このように、自分が相手の言動によって不快になった、イライラさせられたと考えるとします。すると、ここでは、自分の不快、イライラは、相手が原因となっているという発想となります。まさに、被害者意識を持ってしまっている自分は、相手の言動が自分に対して益々ネガティブな効果を及ぼすことになります。つまりは、相手は自分にとっては敵と化すわけです。

このような発想、考え方は、「相手の言動が自分を不快、イライラさせた」ということで、二人称をベースとしたものと見なします。一方で、「相手が自分を不快、イライラさせた」という見方ではなく、「自分が相手の言動に自分が勝手に不快感を覚えている、イライラしている」と考える方法があります。このような発想、考え方は、一人称をベースとしたものです。

このように、一人称をベースに考えるようにすると、今現在、自分の中に生じている不快やイライラは、決して、相手のせいで生じているものではないこと、あくまで自分自身が勝手に作り出しているものだということが分かるのです。自分が今現在感じているネガティブな気持ちの原因を相手ではなく、自分の心の「持ちよう」に求めると、はっとするものです。つまりは、自分が自分で勝手に不快になったり、イライラしているだけだということに気づくわけです。そして、次第に心の平安を取り戻すのです。

人間というものは、実に勝手なもので、意識的であろうと、無意識的にあろうと、ほとんどの場合、自分だけが可愛いと感じるものです。それはそれで、人間だから仕方ないのですが、だからこそ、生み出されるネガティブな副産物が増えてしまうようです。後になって振り返り、初めて、自分が勝手に思い過ごしをしていたと反省することも多いものですが、人間ですから、繰り返し同じ「間違い、失敗」を犯すのです。

ここで大事なことは、自分が抱く感情というものは、決して外部から与えられるだけではなく、自分自身が内部で作り出している部分が多いということです。だとすると、自分が自分の意志でコントロールすることが出来るということに気づくことが出来ます。ただ、コントロールすると言っても、自分の感情をコントロールするというのは並大抵のことでは出来ないかもしれません。しかしながら、先ほどのような発想をするだけで、自然と大きなハードルを越えることが出来ると思うのです。

人間誰しも間違いを犯します。失敗をするものです。大事なことは、その事実を自分が真正面から正直に認めることです。認めて、確認した段階で、既にかなりの程度、「救われている」と思います。人間には想像力があります。「こうすればどうなる、ああすれば、どうなる」ということを冷静、沈着に判断する能力は誰しも備わっているはずです。あのような事情があったから、結果としてこうなったのだ、という考え方、発想で、あらゆる出来事に接していけば、自分が一方的に相手からネガティブな感情を受けるということは減少すると思うのです。

相手が悪い、相手に問題がある、という風に、二人称で見ている場合、相手が変わらないかぎり、何ら事情は改善することはあり得ません。しかし、この世で生きていく上で大事な発想、考え方というのは、「相手は変わらない」ということです。だとすれば、自分が変われば良いわけです。もしくは、自分の考え方、発想を変えれば良いだけのことです。もちろん、無理をする必要は毛頭ありません。無理をし過ぎると自分が自分でなくなってしまうからです。

自分が好きな相手と付き合っていきたいのであれば、自分が変わるしかないのです。自分の発想、考え方を変えるしかないわけです。もちろん、この相手と付き合いたいと思う場合においてです。ここで知っておかねばならないのは、たとえ相手を変えたところで、やはり別の相手とも、同様な問題が生じるケースも起こり得るということです。要するに、先ほど申し上げた通り、二人称をベースに考えるスタンスであれば、いつまでもたっても不快、ストレスを感じ続けるということです。

しかしながら、二人称ではなく、一人称をベースに考える「習慣」なり「癖」をつけていけば、自然と事態は改善していきます。そして、快楽を感じるか、不快を感じるかは、対象である相手が原因ではなく、自分の心だということに気づく時、本当の幸せがやってくると思うのです。


■相場に当てはめてみましょう〜〜

上にご紹介した、二人称をベースとした発想、考え方と、一人称をベースとした発想、考え方は、私達の日常生活のみならず、相場にも当てはまると考えます。

私達がトレードをしている時、相手としているのは相場(マーケット)です。この相場というのは、実に勝手気ままであり、私達の相場観やポジションなどお構いなしに動きます。ましてや、私達の利食いオーダーや損切りオーダーのレベルなど全く考慮にしないのはもちろん、私達のリスク許容度なども知ったことではありません。相場(マーケット)はあくまで相場(マーケット)の都合で動いているという摂理を知ることなく、相場を相手にすることはとても危険なことです。

そのようなスタンスで臨むと、自分の思惑通りに相場が動かない場合や、自分のポジションが相場の流れと逆方向になっているのを我慢出来なくなり、不快やイライラ、そして、極度のストレスを感じるようになります。ここで思い起こすべきは、先ほどの二人称と一人称の発想、考え方です。つまり、「相場が私をイライラさせている」という二人称ではなく、「相場の動きに自分が勝手にイライラしている」という一人称で考えるのです。

このような自分の心の動きを第三者的、客観的に捉えることが出来るようになれば、トレードスタイルは、がらりと変化していくことと思います。トレードを行うのは私達自身ですが、動く主体はあくまで相場(マーケット)だということをしっかりとわきまえておく必要があります。ですから、トレードを行う私達自身が相場の動きを真正面から受け止め、淡々と従うというスタンスをとれば、相場によって私達自身が不快になることもなく、ストレスの度合いも低くなると考えられるのです。

少し視点を変えれば、同じ相場が違って見えてきたりします。この点は、ご自身が持たれているポジションによって、同じ相場が堅調に見えたり、軟調に見えたりするご経験をされたこともあるかと思います。例えば、ロングを持っている間は、やたら相場が重く見えたり、一旦ロングを外すと、今度は、相場が堅調に見えたりするものです。同じ相場が、それぞれの投資家の心の中で、違う相場となって示現しているようなものです。そして、それぞれの投資家が、それぞれ勝手に快楽や不快を感じているようなものです。

やはり、自分の心は常に平安にして、相場を冷静、客観的に見ることが出来るようになれば、始めて「トレード技術」を存分に使いこなせるようになり、その結果、相場の流れに適ったトレードが出来るようになります。このように、心のあり方をコントロール出来るのは、それぞれの投資家自身である私達だけだという点、充分に理解、いや、知っておく必要があります。その為にも、二人称をベースとした発想、考え方でなく、一人称をベースとした発想、考え方が大事だということです。皆様がトレードされている時の心が少しでも平安になって、その結果、トレード成果が上がっていくことを祈っております。

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プロフィール

柾木利彦(マーフィー)

Toshihiko Masaki

インテリジェンス・テクノロジーズ代表

1980年、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)を卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。
ニューヨーク支店、東京本部の ドル円チーフディーラーを経て、1992年米銀大手の『シティバンク』や欧州系大手の『オランダ銀行』東京支店などで外国為替部長として外銀最大級のトレーディングチームを率いて活躍、現在に到る。その間、「東京市場委員会」での副議長や「東京フォレックスクラブ」委員などを歴任。卓越した市場関連知識でもって、テレビ、ラジオ、新聞などで数多くの情報発信を行い、東京外国為替市場の発展に貢献。自身、過去24年に及ぶトレード経験に基づき、独自のチャート分析 (「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」等)を確立。
個人投資家に向けて最強の投資法を伝授することをライフワークとして、現在も精力的に取り組んでいる。

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