「ルールを守ること」の大切さについて
私たち生身の人間は、どうも頭で思ったり考えたりしていることと違った行動をとってしまうようです。その典型的な行動パターンが「損切り(ロスカット)」です。
具体例として、このような例が挙げられます。
ポンド円を1ポンド=190円の時に買い、当初は1ポンド=187円程度になれば損切りをするつもりがいざとなると出来ず、持ち続けます。そして、1ポンド=185円になると、どういう考えになるかと言うと、「もうすでに5円やられているわけだから、あと2円、3円やられてもあまり大きな差はない」などと、とんでもない判断してしまいます。
そうして、1ポンド=182円を割る頃になると、途端に焦り始めるのです。周りに意見を求めたりしますが、往々にして、一人で苦しんで自分を追いこんでしまうものです。
そして、判断能力がなくなってしまう頃に、1ポンド=180円を下回るレベルになって、絶望の中、損切りをしてしまうのです。そして、往々にして、安値圏でロスカットしてしまうはめになります。このように追い込まれた状況下で損切りをすると、そのレベルが「ど底」か「ど高値」となってしまうことが頻繁にあるのです。
私は、以前、価格のレベルこそ違いますが、実際に、高い価格でのポンド円相場のロングポジション(買いポジション)を抱えて、多額の評価損で悩んでおられる個人投資家様から、友人を介して間接的に相談を受けたことがあります。
私は、そろそろ、ポンド下げ局面が、「時間的」に判断して限界的なところに位置しており、次第に底固くなるとの相場観を持っていると仲介の方には伝えましたが、同時に伝えたのは、まず一番にそのポジションを一旦はカットした方が良いという考えでした。
その上で、ポンドが上昇すると判断すれば、もう一度買えば良いだけのことと、アドバイスしたのです。
相場観云々を抜きにしてカットすることを勧めた理由は、その投資家がすでにルール違反をしていたからです。当初、1ポンド当たり幾らになれば損切り(ロスカット)するというトレードプランで行なわれたトレードです。
幾ら、この下がった水準でカットしたらロスが大きく出ると言っても、その時点なら、幾らでもやり直すことが出来るわけです。その個人投資家がさらにロスを抱え込んで破産でもされると、もう回復どころか、将来のトレードでの収益チャンスを全て失うわけです。
結局のところ、正しいトレード方法を学ぶ機会を失うことになるわけです。いや、悪い癖をさらに強めることになるのです。
実は、その後、ポンド円相場は反転上昇し、戻す展開になりましたが、それは、あくまで「結果論」です。恐らくその個人投資家は、悪い癖を治すことなくその後もトレードを続けたかもしれません。
ここで、重要なポイントは、ルールを守ることと収益を上げることは別だという認識です。ルールを守る習慣をつけないと、相場では決して成功しないのです。
たとえ、ルールを守ることが、その時点では損失を出すことになっても全然構わないのです。
ある時点で、ロスカットをせずにポジションをキープしていたお陰で、相場の回復につれて評価損が大きく減ったことを評価するという思考パターンは非常に危険です。
実際のトレードでは、自分のルールに従って取引を続けていくと損失を計上することは当然起こりえます。そうすると、トレードを行う人は、どんどん自信を失ってしまうのです。
そこで、自分のルールに違反するようになり、結局、場当たり的なトレードを続けるようになってしまうのです。そうなると、結果は悲惨です。破産する可能性がどんどん上昇していくことになるのです。
尚、上記のことに加えて、「相場観」にこだわり過ぎることの危険性を改めて理解しておく必要もあると考えます。とどのつまり、「相場観」より遥かに重要なことは、「トレードルール」を守れるかどうかだということだと思います。
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