「両建て」について
以前、私がアドバイザーをしていたFX会社のミーティングにて聞いたことですが、意外と多くのお客様が「両建て」でポジションを持っておられるそうです。
たとえば、高いところで買ったロングポジションと、安いところで売って「ヘッジ」したショートポジションです。そして、やはり聞こえてきたのが、安いところで売ったポジションをどこで買い戻そうかと悩んでおられる方が多くおられるとのことです。ロングとショートで実質的にはポジションはスクウェアなのに、両方とも「生きている」ポジションと見なされているようです。
いったい誰がこのような「両建て」を推奨したのでしょうか?
確かに、先物相場では、両建てというか、ロングとショートを同時に持つのはよくあることです。私は、かつてニューヨークでのディーラー時代に米国債のトレーディングをやっていた時期があります。現物だけでなく、先物でもやっていたので、ロングとショートを持っていたこともあります。
ただし、米国債の先物であり、満期(限月)の異なるものをロングにしたり、ショートにしたりしていました。これは「カレンダースプレッド」と呼ばれるトレード方法であり、異なる限月の債券先物をロングやショートにするのは金利面で利益を得るための目的があるわけです。ですから、一般にFXで広まっている「両建て」とはまったく異質なものです。
はるか高いコストのロングポジションを、我慢出来なくなってショートポジションを両建てしてヘッジする方法は、やはり問題があると言わざるを得ません。ヘッジするところまでは良いにしても、いずれものポジションをいつまでも持っていること自体、健全とは言えないのです。
そう言えば、私が銀行にいる時に、投機筋と言われた商社、メーカーが高い価格のロングと安い価格のショートポジションを同時にキープしているのをよく聞きました。結局、それらの会社は大きなロスを実現することで、為替市場から撤退していきました。
特にその商社は、為替市場では有名なプレーヤーで、ある時期はマーケットを動かしているという印象がありました。為替市場のプレーヤーとして、テレビでも大きく取り上げられたほどでした。にもかかわらず、後で分かったのは、為替で大きなロスを出したということでした。
根っこで、捕まったポジションを外しきれず、一方で小刻みにトレードを繰り返しながら、根っこの捕まりポジションのコストを改善しようと努めていたようです。この小刻みトレードでは、ある程度収益を積み上げる時期もあったようです。もし、両建てと言う方法でポジションを持っていなければ、これらの商社やメーカーは、為替市場で生き残っていた
かもしれません。
とにかく、昔も今も、プレーヤーが会社であろうと個人であろうと、「両建て」ポジションはお勧め出来ないということです。お勧めしない最大の理由は、一般的に人は損失に対する恐怖感が大き過ぎるからです。そして、「実現損」が出るまでは、「評価損」であるわけですが、この「評価損」を損失と見なさない間違いを犯すからです。実現損を出す恐怖感が大き過ぎるために、評価損が出ているポジションを引っ張るわけです。
では、何故、そこまで損失を恐れるのでしょうか?損失を出せば、世間、周りの人から非難されるとして、拒絶することが深層心理のようです。また、成功へのプレッシャーが大き過ぎることも原因です。
子供のころの環境、育ち方にも原因を見出すことも出来そうです。良い成績をとること、人から評価されることを良しとすることを学ばされている私達は、損失を出すことにあまりにも抵抗を感じるようです。
しかし、失敗を犯すことで人は学び、成長していきます。時には損失を実現することをあえて経験して学ばねばならないのです。トレードしている時に避けねばならないことは、評価損が出ているからと言って、ポジションを忘れようとして、マーケットから逃げることです。
そしてあらゆる言い訳を探し始めることも一般的な傾向としてありますが、やはり百害あって一利なしです。目の前のマーケットの動きから目を背けること、これは絶対にしてはならないことです。自分をあざむくこと、これだけは絶対に行ってはいけません。
現実をしっかりと見つめ、間違いを認め、そしてそれを次に生かすことが大切です。成功したトレーダーは皆、大きな失敗をしているものです。それを良い教訓としているわけです。評価損を引っ張り続ける「両建て」ポジションだけは絶対に持たないことをお勧めします。
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