相場を行うに当たって(5)
昨日、若林栄四氏と約3か月振りに懇談する機会があり、またまた二人で相場談義に花を咲かせました。その中で、相場を行うに当たって為になると思われる話題がありましたので、この機会にご紹介させて頂きます。(若林栄四氏は、株式会社ワカバヤシ・エフエックス・アソシエイツの社長であり、現在はNY在住で、今でも現役の投資家として活躍されている、外国為替業界の知る人ぞ知る重鎮です。)
それは、「損切りを行うことは簡単なことだけれども、利益を伸ばすことほど難しいものはない」という点です。
一般には、「損切り」「ロスカット」の重要性が説かれることは多いようです。しかしながら、そもそも、「損切り」「ロスカット」が出来る、出来ないというレベルは、相場を行うに当たっては、あまりにも初期の段階の話だということです。
より明確に言うと、「損切り」「ロスカット」が出来なければ、相場の世界に入ってはいけないということです。相場を語ることすら出来ないと断言しても過言ではないと言えるでしょう。
そう言えば、一目均衡表の創始者である一目山人翁も、原著書の中で、「何よりも大事なことは、売買をする以上、必ず儲けなければいけません。損をするようでは相場をやる資格はないはずであります。とにかく、絶対に損はしない、という固い決心のもとに売買すべきであります。」と仰っています。
ただ、若林氏も私も同じ考えなのですが、相場である以上、絶対と言うことはあり得ません。従って、損をすることはあり得るということを認めています。ただ、損切りが出来る、出来ないというレベルで話をしているようでは、相場の世界に入ってはいけないということです。
この点を重々理解した上で、相場を行う上で最も大事なことは、収益を上げるには、利食いを如何にして引っ張るかと言う点に尽きるということです。すなわち、利食いをせずに、利を伸ばせるだけ伸ばすということです。そして、利食いどころか、「利乗せ」を行うことが出来るかどうかが重要だということです。
「利乗せ」とは、相場が自分の相場観の方向に動いた時に、さらにポジションを造成していくことです。言い換えると、収益はすでに出ている中で、さらに同方向に、ポジションを増やしていくことです。この「利乗せ」が出来るようになれば、相当な上級者レベルに達していることになるわけです。
実際には、この利益を伸ばす、利乗せを行うことは並大抵のことではありません。評価益が出れば、この評価益が存在しているうちに何としても早く利食っておきたいと思うのが人間の煩悩だからです。すなわち、評価益を失うかもしれないという「恐怖感」に苛まれるのは普通の人間の感覚なわけです。
一般的な個人投資家が行うパターンは、評価益が出ればすぐに利食う一方で、評価損が出ればいつまでも引っ張ることです。これでは、長くトレードを行えば行うほど、損失が収益を上回るわけですから、生涯収益(キャリアプロフィット)がプラスになるわけがありません。
ところで、若林氏はすでに65歳になっておられるにもかかわらず、未だに毎日が勉強であると仰っています。ご自身、40代半ば近くになった時に、東京銀行(現:三菱東京UFJ銀行)からヘッドハンティンングされて勧角証券(アメリカ)に副社長として移籍されたわけですが、その頃から本当の意味で真剣に相場の勉強を始めたと仰っています。
逆に言うと、40代半ば時点で、すでに、市場では知る人ぞ知る為替ディーラーであったにもかかわらず、ご本人は、まだまだ勉強が足らなかったと仰っているのです。この、相場に対する謙虚な姿勢こそが、氏が現在も現役の投資家として大活躍されている所以でありましょう。
それから20年以上もの間、若林氏は相場探究の人生を送ってこられたわけですが、20年以上前と言えば、ちょうど私自身が相場の世界で生きていこうと思った頃と同じ時期でした。確かに、私も、相場を極めるには幾ら時間があっても足らないという実感に浸ったことが何度もあったのが正直なところです。
相場で収益を上げることが出来るようになるには、まず、自分で苦労して初めて自分のスタイルなりを確立し、その過程で、自分の相場分析手法に対する信念めいたものが育っていくことが必要なのだと思います。
利益を伸ばせるところまで伸ばす、「利乗せ」が出来るようになろうと「もがく」段階に至って初めて、本当の意味で「相場を行う」というレベルに達するのだと考えます。皆様も、ぜひとも、ご自身で色々と試されるのも結構ですので、どうぞ、ご自分のスタイルの構築に時間を掛けてみて下さい。そして、投資法の勉強に時間を掛けてみて下さい。資金にレバレッジを掛けて短期間に収益を上げることにエネルギーを注ぐより、遥かに将来性があると思いますし、人間としても成長出来ると思う次第です。
■尚、相場ですが、前回もレポートさせて頂いた通り、ドル円相場は底固めをして反転、上昇する展開というメインシナリオに変更はありません。
また、ユーロドル相場は、9月23日に戻り高値を付けて以降、反落する展開の流れにあるとのメインシナリオに変更はありません。
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