「打たせて取るピッチング」
以前、大リーグの中継(マリナーズ対エンジェルス)を見ていた時、解説者の方が面白いことを仰っていました。(この試合は、昨年の試合であり、私の大のお気に入りの松井選手はまだエンジェルスに移籍していませんでした。)
試合が進んでいく中で、先発投手が自チームのリードを守りつつ、途中降板しました。確か、やはり私の好きなイチローがいるマリナーズが優位に進めていた試合でした。
そして、中継ぎ投手が現れました。中継ぎ投手とは、先発投手の後を受けて、試合の途中で登場してくる選手です。特に自分のチームが勝っている場面で登場する場合は、既に自分たちのチームが優位に立っているだけに、リードを守ることで試合を壊さないように、相手チームの攻撃を抑え、ホールドする役目があります。
ところが、その中継ぎ投手は、登場するや否や、相手チームのバッターに2塁打を打たれました。いきなり、ノーアウト2塁になったのです。
さらにその後、一人アウトに取ったものの、進塁されたことで、依然としてワンアウト3塁のピンチの状況でした。試合は、マリナーズが余裕でリードしていたものの、中継ぎ投手としては、1点も相手チームに与えたくない場面です。
しかし、最少失点の1点であれば、特に試合に影響はない状況でもありました。そこで、中継ぎ投手は、1点は与えても良いピッチングをしようとしました。打たせて取るピッチングという方法であり、とにかくアウトカウントを増やそうとしたわけです。
ところが、1点を与えても良いとの余裕を持って投げた結果、1人のバッターをアウトにすることが出来ました。その結果、ツーアウト、ランナーは3塁という状況となりました。まだ1点も入っていない状況です。
ここで、次のバッターを抑えることが出来れば、1点も相手チームに得点させることなく、自分は責任を果たせることになります。ところが、この場面で、中継ぎ投手は「欲」を出してしまいます。
結果は、次のバッターを何が何でも抑えてやろうと、無理に丁寧に投げようとしました。何と言っても、もし1点も与えなければ、自分の防御率も良い数値を残せるのです。しかし、ここで肩に力が入り過ぎたのか、結果は相手にフォアボールを与えてしまうのです。
解説者は、現役時代、中継ぎ投手の仕事を何度もこなした方であり、選手の心理状態を上手く解説されていました。1点は与えても良いと開き直った時は上手くピンチを凌げるけれども、一旦、1点も与えるものかと肩に力が入ると、途端にボールコントロールが悪くなるそうです。
この話を聞いていて、私は、トレードに通じるものがあると感じました。これだけのロスは覚悟しようと思った時は、大きな損失を出すことなくピンチを凌げるものの、一切のロスは出すまいと無理に頑張ると、結果として大きな損失につながるケースが多いということです。
確実にロスを出しても、残りの利益を自分のものとして残せるか、それとも、ロスを出すまいと無理をして、逆に、大きなロスを出してしまう結果となるかの違いと言えましょう。野球の試合を見ていて、「ロスカット」の意義について、改めて、考えさせられたという次第です。
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