相場には「初心者レベル」も「上級者レベル」もない(1)
これは、以前、ある出版社にてインタビューを受けた時の話です。近々発売になるFX関連の特集についての話をして欲しいとの依頼があって出向いたのですが、改めて、株式も同様なのでしょうが、FX関連の投資情報がかなり歪んだ格好で個人投資家のところに伝わっている実情を知った次第です。
「歪んだ」と言っても、決して、雑誌社の編集担当者が悪いわけではないのです。別に、編集者がわざと偏った記事内容にしているわけではないのだと思います。この時も、インタビューの開口一番、初心者向けの特集記事を組むに当たって、ぜひ、初心者に分かりやすい内容にしたいと思いますので宜しくお願いします、とのこと。そして、また、初心者に分かりやすいテクニカル分析をご紹介願いたいとの先方の要望を聞かされました。例えば、「トレンドライン」「移動平均線」は含めたいとのお話があったのです。
ここで気になったのが、「初心者に分かりやすい」という言葉です。確かに、編集者の方が言わんとしていた意図は分かりました。要するに、FXの世界に入って間もない個人投資家にとって少しでも分かりやすいテクニカル分析を説明する内容にしたいということです。
改めて私が考えたことは、相場とは、そもそも「初心者向けの相場」があるわけではないということです。よく、初心者向けとか、中級者向けとか、さらには上級者向けという表現をする人がいますが、かなり、個人投資家を馬鹿にした表現だと思います。大体が、個人投資家イコール初心者であるという発想もおかしいです。
個人投資家の中には、コンスタントに生涯収益を残している人もいれば、プロと言われる雇われディーラーの中にも「初心者レベル」のディーラーが多いのも実情だからです。基本的なことを言うと、そもそも、相場そのものに、初心者レベル、中級者レベル、上級者レベルなどないということです。
と言うわけで、相場で収益を残せる方法について語る時に、「初心者用のテクニカル分析」という発想自体に違和感を覚えるのです。収益を残せるかどうかについて語る時は、初心者でもなく、中級者でもなく、上級者でもないということです。何故なら、相場に初級、中級、上級などのランク分けなどないからです。従って、本来、テクニカル分析を、初級、中級、上級などのランクで分けること自体の目的にあまり意味がないということです。
例えば、「移動平均線」というテクニカル分析が「分かりやすい」からと言う理由で、初心者レベルというものではありません。単に2本の移動平均線を表示させて、2本の移動平均線が交差するタイミングを、ゴールデンクロスだとか、デッドクロスとして売買の判断に使うのはお勧めしません。解説するのが簡単だから初心者レベルというのは、全く論点が外れてしまっているとか言いようがありません。
つまり、「移動平均線」1つとっても、使い方は様々なわけです。早い話が、移動平均線とは、私の「スーパーボリンジャー」のセンターラインのことでもあります。そして、このセンターライン自体、実に重要なラインなのです。実勢レベルローソク足終値がセンターラインの上に位置しているのか、それとも下に位置しているのかは重要なポイントです。さらに、このセンターラインの向きも重要なチェックポイントです。
私の「スーパーボリンジャー」では、遅行スパンがこの辺りの分析を行う上で重要な役割を果たしてくれます。また、移動平均線のパラメータにどの数値を利用するかも重要なテーマです。パラメータを変更させることで、その時の相場のリズムに適ったサポートやレジスタンスラインを探し出すことが出来るからです。いずれにしても、「移動平均線」1つとっても、実に様々な利用法があるわけです。その意味では、あるテクニカル分析の利用法についての「初心者レベル」や「上級者レベル」というのは存在すると思います。
繰り返しになりますが、初心者の相場がなければ、上級者の相場など存在しないのです。相場は世界中の誰もがエントリー出来るものです。クラス分けもなければ、ハンディキャップも与えてもらえません。まさに「バトルロイヤル」です。このように表現すると、「戦う」というイメージがどうしても生じてしまいますが、印象としてはそのようなものと捉えるのが確かに分かりやすいかもしれません。
相場そのものは、決して優しい相手ではありません。大きな恐竜のようなものと言っても良いかもしれません。この「恐竜」に立ち向かうにあたり、自分は初心者だからと言って、手加減してもらえるものではありません。相手である「恐竜」は容赦なしに、こちらが「初心者」であろうと、「上級者」であろうと、立ち向かってくるわけです。
ですから、こちらは、最低限度の「武装」をしておかねばならないわけです。また、悪くとも自分の身を守れる程度の「武器」を持っておかねばならないわけです。そうでない限りは、「参戦」してはいけないということになります。言い換えると、自分は「初心者」だから、相手はこちらを優しくしてくてるわけでもなく、手加減してくれるものではない以上は、相手に向かっていっては危険極まりないということです。(続く)
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