システムトレードについて
昨今、「システムトレード」が人気を集めていると言われています。この人気の背景は、自分でトレードしても上手くいかないから、機械(PC)に任せてしまおうというものです。
それにしても、この近年の各FX会社、証券会社が提供しているサービスの質の高さには驚かされます。手数料ゼロは当たり前、スプレッドもこれ以上縮小出来ないくらい狭くなっています。さらに、約定率の向上も改善しているようです。その分、現場担当者の負担は以前にも増して高まっているようです。
一方、経費削減等の理由から、各社ともにセミナーの数は減っているようですが、それでも情報サービスの拡充には依然として精力的に取り組まれている様子です。ところが、このように、お客様である個人投資家にとって実に恵まれた好条件、好環境にも関わらず、相変わらず、やはりFXは難しいというのが一般的な見方のようです。
一時的には収益が上がる時期があっても、その後、評価損を抱えたり、売買損を実現してしまって、次第に自信を失っていく方が多いようです。
プロのトレーダーであれば、厳格な社内ルールがある為、ある一定限度の損失を越えれば、強制的にストップさせられるわけですが、個人投資家の方の場合は、次々に自己資金をつぎ込まれて事態を悪化させるケースもあるようです。また、ある程度収益が上がっていても、トレードに伴うストレスや肉体的疲労に耐え切れずに、音を上げてしまう方もいらっしゃいます。
理由はともあれ、結局は自分でトレードする気力が失せてきてしまうことから、機械(PC)に任せてトレードしようという発想につながるようです。
確かに、一般論として、「システムトレード」にはメリットがあります。まずは、心理的ストレスから解放されるということです。あらかじめ利益確定や損失確定のルールを決めておくわけですから、判断を見誤るとか遅れるという事態は原則として生じません。続いて、曖昧さが排除されるということです。つまりは、判断基準が数値化され、売買の為のルールが明確にされる為に、途中経過や結果が客観的に見られるようになることです。
また、その結果、システムに関する様々なノウハウが蓄積されるようになります。そして、まさに、システムの改善につなげることも可能になるわけです。さらに、何と言っても、トレードに掛ける時間が大幅に短縮出来ることです。自動売買という方法を利用すれば、自分が寝ている間も、機械(PC)が勝手に取引をやってくれるわけです。
このように書くと良いこと尽くしですが、実際にはそうは上手くいきません。そもそも、良いシステムはほとんどないという現実です。ある局面、例えばトレンド性の高い相場で上手く収益を残せても、レンジ相場に入った途端に損失が膨らむシステムもあれば、その逆のケースもあります。
それでは、相場の地合いによってシステムを変更すれば良いとなるのですが、その場合は、当然のことながら、恣意的な判断を必要とするわけです。例えば、トレンド相場とレンジ相場の分かれ目の判断ということになります。その他、システムのご操作やプログラムの「バグ」の問題、システムの安定性の問題コンピューターに関する専門知識問題等々、幾つも乗り越えなければならなり課題があるわけです。
それと、やはり知っておかねばならない事実として、大体、世の中で、上手くいっていると宣伝されているシステムはあくまで過去の検証に基づいたものです。つまりは、過去の相場においてもっとも収益が上がる方法をシミュレーションし、最適化(オプティマイゼーション)した結果として辿り着いたプログラムと言い換えることも出来ます。従って、やはり、信頼出来るものはほんの一握りであると考えざるを得ないようです。
尚、私個人の意見としては、いろいろな意味で、「システムトレード」には賛成しません。相場判断、売買判断については、システム的に行うことが望ましい一方で、ある程度の恣意的な判断を加えてこそ、より理想的なスタイルになると思います。何もかも白黒はっきりさせる判断基準は、一見簡単で楽そうに見えますが、実のところ、実際の相場と正しく向き合うことが困難となります。グレーの部分があるのは相場らしいことであり、それを認めた上で、恣意的な判断を加えることで最高のトレードスタイルに完成されていくものと考えています。
それと、これほど楽しいトレードを、機械(PC)任せにすることほど無味乾燥なものはないと思います。相場の世界から得るものは、金銭面のみならず、計り知れないものがあります。トレードは「苦痛を伴う仕事」だから機械(PC)に任せるという発想にはついていけません。相場と共に歩み、毎日を楽しく過ごしていきたいものです。
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