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マーフィーの日々是好日

「流動性(価格)」があることのありがたさ

前回でも触れましたが、昨今のFX会社、証券会社の顧客サービスの向上度合いは「尋常と思えないくらいのレベル」に達していると考えられます。1ポイント以下のスプレッドや、約定率の向上など、それぞれのFX会社や証券会社が、自らの収益の為とは言え、かなりの無理をして顧客獲得競争をしていると想定されます。

中には取引時間や相場状況に関わらず、固定スプレッドを売りにしている先もあるぐらいです。この固定スプレッドについては、長年、外国為替相場に携わってきた一市場参加者として、「あり得ないほどの高水準のサービス」と考えられます。そもそも、たとえスプレッドが大きくても、プライス(価格)が存在するだけでもありがたいという市場環境でも生き残ってきた私のような人間からすれば、今の投資環境は「天国」と言っても過言ではありません。

市場に常に流動性があるということ、つまりは、価格が存在すること自体、そもそも、マーケットに生きる人間にとっては、決して「与件」(与えられた条件)ではありません。私は、かつては、重要経済指標が発表にある直前には、ポジションのサイズを大幅に落としていました。何故なら、経済指標の発表結果内容が、事前予想と大幅に違って、相場が大きく変動する可能性が常に存在していたからです。

この相場変動の可能性については、本来、昔も今の同じはずなのですが、最近では、リーマンショック等で大きく荒れた時期を除いて、市場から価格が「消える」ということはほとんどあり得ません。「スリッページ(すべり)」自体、過去では当たり前のように起きていました。それが、本来の外国為替市場であったのです。

ここに笑い話とは言えない「実話」があります。

私がかつて在籍した邦銀にて、ある海外支店にいたチーフディーラーが、ある重要経済指標の発表直後に、相場が当初の思惑と違った方向に動いたので、自らのポジションを手仕舞しようと思って、価格を求めるべく、ブローカー(仲介業者)に求めた時のことです。彼はドル円のロング(買い)ポジションを持っており、市場で売り戻してスクウェアにしようとしました。実際の価格の大台は忘れましたが、ここでは説明を分かりやすくする為に、仮に大台を109円としておきましょう。「80 Bid(買値80銭)」とブローカーが叫ぶので、彼は「Yours(ユアーズ、売り)」と叫びました。これは、109円80銭の買値が見えたので、その買値を叩いて「売ろうとした」ということです。
 
しかしながら、途端に、ブローカーは、「Change(チェンジ、変更になった)!!」と叫び、続けて「70 Bid(買値70銭)」と叫んだのです。つまり、価格が変更になり、109円80銭が109円70銭に変更になったわけです。つまり、ドル円相場が下がったわけです。チーフディーラー氏は、納得いかないものの、それでも良いと思い、すかさず、「Yours(ユアーズ、売り)」と叫びました。ところが、またしても、ブローカーサイドから、「Change(チェンジ、変更になった)!!」との声が・・。そして、続けて「60 Bid(買値60銭)」と聞こえてきたのです。

この繰り返しが続き、何と、チーフディーラー氏がようやく売れたのは、20銭(109円20銭)だったのです。すなわち、当初は、109円80銭で売るはずのところが、実際には、109円20銭で売るはめとなったわけです。その差、60銭ですから、元々のポジションサイズからして、予想外に「損失」を拡大させたことは言うまでもありません。

実は、この話には、続きがありまして、実際のマーケットは、20銭まで売られた後、反転し、逆に、どんどんと上昇していき、チーフディーラー氏が当初に売ろうとしていた水準であった80銭レベルにまで戻るのにあまり時間が掛からなかったのです。買値(Bid)がないうちは、どんどんと下げていき、一旦、買値(Bid)が現れたと思うと、そこが底となり、反転・上昇という、ある意味、典型的な「往って来い」の往来相場となったのです。

相場の格言に、「押しのない相場は暴騰し、戻りのない相場は暴落する」というのがありますが、その時の相場は、売りたい時は買い手がいない為に、誰も売れず、相場はどんどんと下げていき、誰でも売れる段階となると、もはや、それ以上は下がらず、あとは上がるのみという、まさに相場らしい動きを見せつけられたわけです。

チーフディーラー氏は、この一連の動きを味わわされた後に、苦笑いしながら電話で話してくれたのですが、私自身もこの類のマーケットは無数に経験してきました。ですから、基本的には買いたい時には買うことが出来、売りたい時には売ることが出来るのは当然である上に、価格自体のスプレッド(BidとOfferの開き)が極小であるという、昨今のFX市場の「異常なほどの流動性の存在」には驚かされる次第です。

もちろん、FXが、このように個人投資家にとって好環境であること自体、喜ばしいことなのですが、この背景には、涙ぐましいFX会社、証券会社の努力があることを忘れてはなりません。と同時に、実際の外国為替市場の恐ろしさが個人投資家にまで伝わっていないのが気掛かりとも言えそうです。

いつなんどき、あの2008年のリーマンショック時のような動きがないとも限りませんし、何らかの突発的な動きが生じて価格が「消えて」しまうリスクが生じないとも限りません。砂上の楼閣」とは言いたくありませんが、最近では、FXにおいて、本来の相場からはあり得えない、個人投資家にとって無類の好環境の下でトレード出来ているのだという理解が必要だと思います。本当にありがたいことだと思うのです。ですから、例えば、「自分のロスカット注文が無理やり付けられた」等々と苦言するのは、あまりにも、本来の市場を知らなさすぎる、そんな気がするのです。

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プロフィール

柾木利彦(マーフィー)

Toshihiko Masaki

インテリジェンス・テクノロジーズ代表

1980年、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)を卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。
ニューヨーク支店、東京本部の ドル円チーフディーラーを経て、1992年米銀大手の『シティバンク』や欧州系大手の『オランダ銀行』東京支店などで外国為替部長として外銀最大級のトレーディングチームを率いて活躍、現在に到る。その間、「東京市場委員会」での副議長や「東京フォレックスクラブ」委員などを歴任。卓越した市場関連知識でもって、テレビ、ラジオ、新聞などで数多くの情報発信を行い、東京外国為替市場の発展に貢献。自身、過去24年に及ぶトレード経験に基づき、独自のチャート分析 (「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」等)を確立。
個人投資家に向けて最強の投資法を伝授することをライフワークとして、現在も精力的に取り組んでいる。

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