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マーフィーの日々是好日

トレードでの「思い込み」について

今回は、「トレードに際しての思い込み」について考察してみたいと思います。

「思いこむ」を辞書で引くと、(1)1つのことだけを強く思う、心に深く思う、固く心に決める、(2)確かなこととして心に思う、そうだと独り決めして信じてしまう、(三省堂国語辞典)とあります。一般論として、FXをトレードし始めると、突然、人間が変わったかのように豹変してしまう人がいます。

また、豹変しないまでも、普段の言動パターンから、かけ離れた状態になってしまう人も多いようです。確かに、大事な自己資金を投じてポジションを持った途端に、価格変動リスクに晒されるわけですから、人間としての様々な感情が現れるのは当然のことかもしれません。

そもそも、相場というものは、人間の不合理な行動が背景となっている面はあります。そして、この不合理な行動を引き起こす原動力となっているのが、「希望」「貪欲」「恐怖」「怒り」「迷い」「絶望」などの感情です。特に、「貪欲」「怒り」「迷い」というのは、人間の煩悩の三大要素とも言え、潜在意識の上からも知らず知らずのうちに影響を受けているものと言えましょう。

これらの感情をコントロール出来ないと市場で生き残り、生涯収益(キャリア・プロフィット)を拡大するのは困難であると以前にも述べたことがあります。本ブログ上でも、トレードを行うに際しの、これら精神面のコントロールの大切さについて触れたこともありました。

私自身、自分の過去を振り返ってみても、数多くの経験をしてきた中で、それぞれの局面で、何故あのような思いや感情を抱いたのだろうとか、何故あのような行動パターンを取ったのだろうと、大いに反省することは何度もありました。それ故、日々行っている、有料会員様向けの「トレードコーチング」を通じて、相手会員様の投稿文から、自分が過去(時には、今現在もなお)に経験したのと全く同様のものが、ひしひしと伝わってくることがあるのです。

だからこそ、個人投資家である会員の皆様と同じ立場に立って、「喜び」や「痛み」を共有することが出来るのだろうと思っています。

もちろん、ただ共有するだけでは「コーチング」を行うことは出来ませんので、共有した上で、こちらの経験も踏まえて、相手の置かれた状況を想像し、しかるべきアドバイスなどを提供させて頂いています。

そして、このような「トレード・コーチング」を通じた双方向のコミュニケーションを通じて思うことが幾つかあります。その1つが、人間とは実に「思い込み」に左右される生き物であるということです。


■さて、先ほど引用した辞書の解釈にもあるように、「そうだと独り決めして信じてしまう」という行動パターンは、心理学で言う「認知バイアス」に基づいたものと考えられます。

「認知バイアス」とは、心理学の理論の一つですが、「ある対象を評価する際に、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり、対象の目立ちやすい特徴に引きずられたりして、ほかの特徴についての評価が歪められる現象」を指します。要するに、相場で言えば、先入観とも言うべき「思い込み」が生じ、先ほど挙げた、トレードに付き物の「希望」「貪欲」「恐怖」「怒り」「迷い」「絶望」が正しいトレードを妨げるわけです。

先ほどの「認知バイアス」の定義にあるように、「ある対象を評価する際」の「ある対象」とは、通貨ペアであり、その通貨ペアの相場チャートのことを指すと考えても良いでしょう。そして、「自分の利害や希望の沿った方向」とは、トレードで造成したポジションが自分の相場観、思惑に沿って、利益が出る方向に推移してくれと願う姿を指しています。

加えて、「対象の特徴」とは、チャートの形を指すと捉えると分かり易いでしょう。つまり、同じチャートを見ていても、自分に都合の良いように先入観を持って眺めたり、分析・判断したりすることが「認知バイアス」と言えます。考えてみると、人間の目と言うものは、いい加減なものかもしれません。同じチャートを見ていても、その時の自分が持っているポジションの方向に合わせて、チャートが異なって見える傾向があるからです。

この現象は、チャートを必ずしも見なくても分かることです。つまりは、自分のポジションが買い持ち(ロング)であれば、相場が上値重く感じられますし、自分のポジションが売り持ち(ショート)であれば、相場が底固く感じられる傾向があります。ですから、いくら自分が客観的、冷静に相場を見ていると言っても、かなりの程度「認知バイアス」が入っていると考えておいた方が妥当でしょう。


■ところで、「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」で価格分析を行い、「アクティベート時間分析」で時間分析を行うことで、価格=縦軸、時間=横軸という相場の2大次元を網羅することが出来ます。そのことで、上記で触れた、人間本来が持つ弱さである「認知バイアス」を極力排除し、人間の持つ強みである過去の経験則を活かしながら相場と会い向かう時、最大の成果が生まれるものと信じています。

とどのつまりは、正しい「トレードルール」の実践を実現することが出来るかどうかが成功トレードにつながる分岐点となります。「認知バイアス」を克服するには、出来るだけ論理的に裏打ちされた「トレードルール」が必須であり、その「トレードルール」は、「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」の正しい理解から生まれます。

相場に関して、人間の英知の極めつけは「時間分析」であると思いますが、そもそも、相場の本質は、波動であり、周期であると考えられ、多く自然界に存在する根本原理、真理にもつながっていることからして、価格のみならず時間の分析を行う必要があるのは当然のことでしょう。

ちょっと話が大袈裟なレベルに飛躍したかもしれませんが、「トレードに際しての思い込み」の根本原因である「認知バイアス」を克服する意味でも、正しい「トレードルール」の徹底は必要不可欠と思います。

ただただ、人間が本来持つ、経験則を活かす能力や英知を存分に発揮しながら、トレード成果のみならず人間としての成長を実現することが出来れば、本当の意味で、トレードで成功したと言えるのではないかと思います。

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プロフィール

柾木利彦(マーフィー)

Toshihiko Masaki

インテリジェンス・テクノロジーズ代表

1980年、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)を卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。
ニューヨーク支店、東京本部の ドル円チーフディーラーを経て、1992年米銀大手の『シティバンク』や欧州系大手の『オランダ銀行』東京支店などで外国為替部長として外銀最大級のトレーディングチームを率いて活躍、現在に到る。その間、「東京市場委員会」での副議長や「東京フォレックスクラブ」委員などを歴任。卓越した市場関連知識でもって、テレビ、ラジオ、新聞などで数多くの情報発信を行い、東京外国為替市場の発展に貢献。自身、過去24年に及ぶトレード経験に基づき、独自のチャート分析 (「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」等)を確立。
個人投資家に向けて最強の投資法を伝授することをライフワークとして、現在も精力的に取り組んでいる。

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