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自尊心とプライドの影響について

人間誰しも、自尊心とプライドがあります。特に、年齢を重ねるに従って、これらの度合いが増すようです。そして、社会的地位を築き上げてきた人ほど、この傾向は強いです。

ところで、投資を行う上では、この自尊心やプライドが障害となるケースが多いのです。まず、多く見られる現象として、自分の相場観を一旦周りの人に伝えると、そう簡単に変更しないことが挙げられます。

為替相場で言えば、ドルは上がると一旦あからさまに公言してしまうと、「格好悪くて」撤回出来なくなるのです。しかしながら、これは良くないことです。その人は、既に相場を見失っています。

すなわち、自分が相手にしているのは、世間の目だけです。決して相場を相手にはしていません。それに、自分の相場観に固執してしまっています。やはり、目の前の相場を見てはいません。

自尊心とプライドがあるから、自分の相場観を撤回出来ないのです。格好悪いからです。一方で、相場そのものは気にしています。注意を怠りません。自分のトラの子の資金を注ぎ込んで持ったポジションは本当に大事です。しかし、自尊心とプライドが邪魔をして、マーケットが自分のポジションと逆向きに動き、想定外の展開となっても、潔く損切りしたりしません。

もちろん、想定の範囲内であれば、逆向きに動いても心配する必要はありません。最悪なのは、自分の頭では自分の行動が間違っていると分かっていながら、実際の行動が違ったものとなってしまうことです。そして、自己嫌悪に陥り、自分を責めてしまいます。何の為の投資か、初心を完全に忘れてしまい、見栄や格好を気にしてしまいます。

「三猿」という、昔から伝わる名言があります。

「見ざる、聞かざる、言わざる」です。「見ざる」、「聞かざる」は分かり易いです。あれこれ、相場関連の情報を追い求めても、生きた情報でない限り、実際の取引には何ら役立たないということです。ただ、そもそも生きた情報そのものがほとんど存在しないわけで、見たり、聞いたりせず、自分の運用方法を打ち立てる以外に収益を上げる方法はないという意味です。そして、最後の「言わざる」というのは、自分の相場観をむやみたらに公言してはならないということです。

私自身経験があるのですが、新聞紙上などに、自分の相場観を公表すると、その後の自分のポジションが既に自分が話した相場観の影響を受けてしまうことです。

目の前の相場が変化していく中で、当初自分が語った相場観を変更する必要がある時に、過去の自分自身の言葉の影響を受けてしまうのです。これは、人間だから、ある程度は仕方のないことですが、決して拘ってはいけません。自分が自由になっていない証拠だからです。

「任運自在」(運びに任せて自由に在れ)は、有名な言葉ですが、逆に、自尊心、プライド、見栄などに振り回されて相場を自由に見られなくなったらおしまいです。相場をやるということは、人間として成長することでもあるとつくづく思うのです。

本当に相場というものは難しいものだと思います。しかし、だからこそ乗り越えていく喜びや楽しみがあると思います。一歩、二歩、次元を越えて先に進むと、素晴らしい世界が待っています。

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プロフィール

柾木利彦(マーフィー)

Toshihiko Masaki

インテリジェンス・テクノロジーズ代表

1980年、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)を卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。
ニューヨーク支店、東京本部の ドル円チーフディーラーを経て、1992年米銀大手の『シティバンク』や欧州系大手の『オランダ銀行』東京支店などで外国為替部長として外銀最大級のトレーディングチームを率いて活躍、現在に到る。その間、「東京市場委員会」での副議長や「東京フォレックスクラブ」委員などを歴任。卓越した市場関連知識でもって、テレビ、ラジオ、新聞などで数多くの情報発信を行い、東京外国為替市場の発展に貢献。自身、過去24年に及ぶトレード経験に基づき、独自のチャート分析 (「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」等)を確立。
個人投資家に向けて最強の投資法を伝授することをライフワークとして、現在も精力的に取り組んでいる。

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