あり得ないほどの好条件、好環境
改めて思うのですが、昨今のFX取引の環境は、あり得ないほど恵まれています。たとえば、スプレッド(買い値と売り値の差)ですが、既に、縮小の傾向にありましたが、今や、1銭だとワイドであり、0.3銭、0.4銭も当たり前となっています。そもそも、小数点以下、3桁まで表示すること自体、凄まじいほどの好条件です。
したがって、私のように、長年為替相場に携わってきた人間にとっては、驚異的と言って良いくらい取引する人にとって、好都合、好環境の世界となっています。
私自身も取引を毎日やっていますので、良く分かるのですが、重要経済指標などの発表の直前に、スプレッドがやや広がる時間帯はありますが、すぐに、元のタイトなスプレッドに戻ります。私が利用しているFX会社でも、経済指標として最重要な「米国雇用統計」の時でさえ、ほんの僅かな時間だけスプレッドがワイドになるものの、何もなかったかのように、1銭以下のスプレッドが表示されるのです。
私は、長年インターバンクディーラーとしてニューヨークや東京市場でトレードをしてきましたが、顧客に対して1銭のスプレッドでプライスを出すなどというのは、よほど動かない相場か、何でもいいから取引して欲しいとばかりに、相手である顧客をまるで挑発するような時以外は、滅多に行ないませんでした。
確かに、個人投資家相手であるFXでは、銀行間取引と違って、取引金額は決して大きくはありません。そう言った基本的条件を除いても、「異常な世界」が存在していると言っても過言ではなさそうです。
確かに個人投資家から見れば、スプレッド幅が小さいほどメリットがあるのは事実です。このメリットを思いっきり享受しているのは、スキャルピングと呼ばれる、僅かな「さや取り」を目的としたデイトレーダーであると思われます。
しかしながら、投資家にとって必要な要素として、システムの安定性や、マーケットが変動した時のスプレッドの固定度合いがあります。仮に、「良いレート」「有利なレート」でエントリーは出来ても、手仕舞いする時に、同様に、「良いレート」「有利なレート」である保証などないのです。
ところで、ここでご理解頂きたいのは、たとえ1銭のスプレッドでも、実は、ものすごく良いレートであり、スプレッド幅は充分に小さいということです。過去、私がインターバンクディーラーとしてニューヨークに駐在していた当時、大手の米系銀や欧州系銀行と、プライス(価格)を互いに提示し合っていましたが、5銭(ポイント)から10銭(ポイント)というのが通常でした。
もっとも、取引金額の単位は、5百万ドルや1千万ドルという巨額ではありましたが、マーケットが荒れてくると、10銭(ポイント)で提示し合う関係はよほど互いに良好でなければあり得ないほどの「良いレート」だったのです。
今でもはっきりと覚えていますが、ニューヨーク外国為替市場にて、米雇用統計、米GDP、米貿易収支(当時は重要経済指標でした)などの発表時には、瞬間的にプライス(価格)が市場から消えました。そして、ひどい時はスプレッド幅が100ポイントから取引が開始したこともありました。それでも、レートを提示してもらえたらまだ良い方で、なかなか適当なスプレッド幅に落ち着かないうちに、顧客からレート提示を求められては、無理にポジションを持たされるということも頻繁に起こりました。
その時のストレスたるや、尋常なものではありませんでした。まさに、足の指から脂汗が出るような感覚(汚そうで失礼します)です。それでも、「自分の相場観」で、持たされても納得出来るようなレート提示を必死で行うのが、一流のインターバンクディーラーの仕事でした。
つまり、ディーラー、トレーダーたるものは、「自分の相場観」でトレードして稼ぐわけです。スプレッド幅が大きい、小さいと言っている場合ではないわけです。相場が上昇すると思えば、ロングポジションを持ち、相場が下がると思えば、ショートポジションを持つように、自分のポジションを調整していくのです。
もっと言えば、相場が荒れている時は、レートのスプレッド幅云々ではなく、レートが存在していること自体、感謝しなければならないわけです。たとえ、10銭、いや20銭のスプレッドであっても、レートが存在しているだけで、安心感を覚えたものです。
最近では、外国為替相場というのは、誰も彼もが簡単に参加出来るようになり、FX会社間の顧客獲得競争が激化している模様ですが、FX会社が提供するサービスの最も根幹とも言えるスプレッド幅があまりにも縮小したことで、その恩恵が感じられなくなってしまっているようです。
本来、相場というものは、その上げ、もしくは下げを予測し、自分のポジションを調整していくことで、収益の極大化を目指すものだと思います。そして、この相場変動を自分なりに現状分析した上で、将来の動きを予測する能力を高めることに全力を尽くす姿勢を貫くことで、投資家として、また人間として成長していくのだと思います。
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