「FX」に関する誤解と偏見
かなり前のことではありますが、日本経済新聞夕刊に「FX」、外貨証拠金取引に関する解説コラムが載っていました。「ニッキィの大疑問」という名前のコーナーで、「ニッキィ」とは、最近日経を読み始めた女性の愛称であり、毎週、経済に関する疑問に答える場として設けられているものです。
こちらのコーナーのテーマとして「FX」、外貨証拠金取引が取り上げられました。そして、このコラム欄での「FX」、外貨証拠金取引に関する説明ですが、恐らく素人の投資家を対象に書いているとは言え、ちょっと引っ掛かる箇所が見つかったのを覚えています。
1つ目は、レバレッジに関する質問のところで、次のように答えが書かれていました。「1ドル=100円の時に10万円の証拠金を預け、10倍のレバレッジでドルを買うと、10倍の100万円相当のドル(1万ドル)を買えます」ここでは、「買う」ということしか表記されていません。「売る」は書かれていないのです。
2つ目は、外国為替を動かす要因は何ですかという質問に対する答えとして、次のように答えが書かれていました。「金利について言えば、一般的に低い国の通貨は運用に不利な分、人気が下がり、相場も安くなりやすいと言えます」このコラムでは、当時よく話題に上ったサブプライムローン問題等で「円キャリートレードの解消等で円高に振れた背景について書かれていたわけですが、所詮は、ポジションの解消であるにすぎないというトーンとなっています。
いずれにしても、上記の2点のことが私には、一般初心者の投資家の頭に強く残るとしか思えないコラム内容と感じ取れたのです。つまり、どう見ても、「外貨預金の延長」というニュアンスで書かれていたという印象は否めないということです。
確かに、レバレッジ1倍であれば、証拠金会社の信用さえあれば、確かに銀行で外貨預金を行うより、遥かに有利な条件で預金することが出来るとは思われます。しかし、それ以外では、このコラムを読んだ読者が初めて「FX」、外貨証拠金取引を行うに際して、歪んだ知識を植え付けさせられているとしか思えないと感じました。
とどのつまり、「FX」、外貨証拠金取引では、「買い」もあれば、「売り」もあるのは当然のことなのですが、その辺りがどうも読者には伝わりにくい格好となっています。恐らく、一般世間でも、このように捉えられているきらいがどうもありそうだと改めて確認出来た感じです。
それと、「安い金利の通貨は人気がない」と言う言い回しは、長年為替市場に携わってきた私にとってはとても違和感があります。本来は、人気がないから金利を上げて通貨を防衛している部分があるのです。その国のインフレ率が高いから金利が高くなる面があり、やはりインフレ率の高い国は経済的に弱いと見なされます。そもそも、昔から金利の高い国の通貨は弱いというのが、ある意味常識的な経験則でもありました。
2000年以降は高い金利の通貨が買われる場面もありましたが、基本的には脆弱なため、大きく売り戻される局面が必然的に訪れたのです。通貨の長い歴史の中では例外的な局面がこの何年間であったとも言えるわけです。
この日経のコラムの書き手である記者は、おそらく、外国為替のことは良く理解しているはずなのでしょうが、万人受けする為に、内容をより分かり易くする目的で書いたのかもしれません。ただ、ともすれば、誤解を招きかねない内容のコーナーとなっているだけに、ちょっと心配した次第です。
私達は、レバレッジを効かせて相場に参加する以上は、その相場のトレンドをしっかりと見定める必要があります。中長期的にみて、現在、どちらを向いているのか、そして、その流れの中での短期的なトレンドはどうなっているのかを把握することが大切です。科学的なアプローチでもって相場を分析し、短期間に一気に稼ぐというよりも、長きに亘ってのコンスタントな収益増大を目指すのが本来の「FX」投資のスタンスだと思う次第です。
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