「1万時間の法則」について
成功した人々についての膨大な資料を集めて書かれた、「天才!」(マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳)という本があります。天才はどのようにして天才になっていくのか、というテーマを実に分かりやすく丁寧に解き明かしてくれています。
グラッドウェルは、著書の中で、プロとアマチュアのピアニストについて調べ上げ、結論として、生まれつきの天才を見つけられなかったと書いています。トップランクの入るピアニストに共通しているのは、何よりも練習時間が圧倒的に長いということです。圧倒的にたくさんの努力をしているということです。
そして、具体的に、この時間について言及しています。すなわち、様々なジャンルにおいて、複雑な専門的な仕事をうまくこなす為に必要な時間は1万時間ということだそうです。
音楽家、プロスポーツ選手、小説家、大犯罪者に至るまで、どの調査をしても、この1万時間より短い時間で真に世界的なレベルに達した例を見つけたケースはないという重大な結果が紹介されています。要するに、専門的な技能を極める為に必要な全てのことを脳が取り込むためには、最低でもそれだけの時間が必要だということなのです。
あのモーツアルトでさえ、詳しく調べると、作曲を始めてから傑作を世に送り出すまでに20年以上かかったそうです。チェスのグランドマスター(最高級の選手)になる為にも、約10年が必要だそうです。そして、やはり、1万時間という時間枠が浮かびかがってくるのです。
このように、何事にも秀でる為に、膨大な時間を費やす必要があるというのは、どのジャンルでも、人間として避けて通れないことのようです。となれば、私達が取り組んでいる相場の世界における「トレード」についても全く同じことが言えるのでしょう。
私は、1984年に相場の世界に入って、かれこれ25年となります。その間、相場研究に費やした時間は明らかに膨大です。四六時中、チャートを眺め、プライス画面を見つめ、あれこれ研究してきました。
また、当たり前のことですが、トレーダーとして実際にトレードをして、収益を生み出すことの難しさを経験し、また、心理的ストレスも人一倍体験してきたと感じております。
自分としては、「熱心さ」「一徹さ」「根気」など、ある程度は持ち合わせていると思ってはいたものの、今回、マルコム・グラッドウェルの書いた著作を読んだことで、改めて、膨大な時間を掛けて、たゆまぬ努力をするのは「至極当たり前のこと」なのだと再認識しました。
物事を極める為の努力の大切さはもちろん、最低でも1万時間は必要なのだということを知り、改めて、「一芸に秀でる」ことを実現した人々の凄さを実感した次第です。
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