「大数の法則と少数の法則」
これまで、当ブログにて取り上げてきた「アンカリング」「確証バイアス」「ヒューリスティック」などは、「行動経済学」と言う分野の学問で研究されているテーマです。既に、お気づきの方も多いと思いますが、「行動経済学」は相場を行う上で非常に有益な知識を与えてくれます。
そこで、今回は、比較的広く知られている「大数の法則」というものをご紹介します。(尚、元来は、確率論、統計学の分野で知られている法則です。)
これは、ある現象を判断する時に、出来るだけ多くの標本が入ったグループに頼る方が結果としての偏りが少なくなるということです。分析対象となる「標本」が少ないと、グループの性質を正確には現さないということを意味します。
例えば、サイコロを振った時に、ある目が出る可能性は、振る回数が少ないよりも多い方が6分の1に近づくという現象です。
次に、「少数の法則」というのがあります。これは、ほんの少数の標本から発生した結果を、全体の結果も同じようなものになるだろうと錯覚してしまう現象です。
例えば、ある学校で、ある限られた生徒をピックアップして彼らの成績を調べて、その学校全体の成績もそうだろうとバイアスをもって判断してしまうケースなどです。
これを、相場の世界に当てはめて考えると、あるマーケット・アナリストの予測が3週連続で的中すると、そのアナリストは優秀であると判断し、逆に3週連続で外すと能力がないと判断しがちであるという現象がそれに当たります。
これは、まさに、「少数の法則」によってバイアスがかかった結果であると言えましょう。例えば、あの大リーグのイチロー選手でさえ、無安打が何試合か続くこともありますが、一方で、新人の選手が1試合で3安打することもあり、こういった現象だけで、新人選手よりイチロー選手が劣っていると判断出来ないのは分かります。
つまり、短期的には、打率は上下しても、「大数の法則」により、長期的には平均値(打率)に収束するわけです。この現象を「平均への回帰」と言います。
相場においても、同じことが言えると思います。例えば、3回のトレードだけで、その人のトレーダーとしての資質を判断するのは無理だと思います。結果(収益)が良くても、悪くても一喜一憂してしまうのは危険です。正しいトレード方法を習得さえすれば、長くやればやるほど結果はついてくるはずだということです。
トレードは、確率に左右されると思われる面もある点、一見すると、「博打的」な要素が存在している点は否めません。しかし、トレードというものは、やはり、長くやればやるほど、正しいトレード方法に従っている人の成績と、そうでない人の成績では、大きな違いとなって現れます。
また、トレードはセンスのある人が上手だという意見もありますが、そう言った面は、全面否定出来ないまでも、ほんの僅かだと思います。すなわち、正しいトレード方法を学んだ人と、そうでない人の違いの方が、長くやればやるほど、やはり結果として、大きな違いになるということです。
このように見てくると、相場と言うものは、人間の行動に根ざした、実に奥深いものであることが良く分かります。
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