「動的平衡」について
分子生物学を専門とし、文章そのものに関しても評価の高い「動的平衡」(木楽舎刊)の著者である福岡伸一氏が面白いことを書かれています。
そもそも、私達の身体を形成している分子は、日夜、高速で分解され、新たな分子(食物として摂取された分子)と置き換えられています。ですから、数か月前の自分と、今現在の自分とは、分子面で異なった生物なのだということは広く知られていることです。
そこで福岡氏の言うことは、自然環境は常に私達の間を通り抜けていること、通り過ぎていく分子が、私達の身体を形作っているということ。つまり、そこには「流れ」しかないわけで、その流れの中で、私達の身体は、変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っているということです。
そして、世の中の生命体は、「動的な平衡状態にあるシステム」と仰います。言い換えると、生命体とは、常に動いているものであり、「流れ」の中に存在しています。そして、流れながらも環境との間に一定の平衡状態を保っているということです。
氏は、より分かり易い表現を用いて、「一輪車に乗って、バランスを保つ時のようにむしろ小刻みに動いているからこそ、平衡を維持出来るのだ。」(「動的平衡」木楽舎刊、P233)と説明しておられます。
私は、この「小刻みに動いているからこそ、平衡を維持出来るのだ」と言う箇所を読んだ時、思わず「相場」のことを思い浮かべました。
「相場」が小刻みに動くとは、小動き、保ち合い相場、レンジ相場のことを指します。一般的には、需給が拮抗していれば、小動き、レンジ相場になるとも言えますが、本来、相場というのは、やはり自然現象の一つであるとも考えられます。
そうであれば、小動きであることは平衡状態であるとも言え、小動きながらも、ある一定のレンジ幅で小刻みに動きながら、平衡状態を保っていると言えそうです。そして、この平衡状態があるからこそ、次に、大きな動きにつながるのだということです。
ところで、先週末8月7日(金曜日)の海外市場では、ドル相場が大きく動きました。ドル円相場を例にとると、月曜日から木曜日に掛けては小動き、レンジ相場でした。1ドル=95円を挟んで、上下1円程度のレンジの中でまさに売り買い、拮抗した膠着相場となっていたわけです。
それが、米国雇用統計の発表と同時に、相場がレンジを抜け出して、大きく動く展開となったのです。まさに、バランスを保っていた相場が一気に平衡から放たれたわけです。このレンジ相場からトレンド相場への変化をいち早く捉え、その新たな流れに乗ることが成功トレードを行うために重要なことなのです。
「タイミングがトレードの全て」と言いますが、相場観で勝てるほど相場は甘くありません。このエントリーと手仕舞いのタイミングの把握を如何に的確に行えるかが、成功トレードの為に、必要不可欠なのです。
私は、「スパンモデル」や「スーパーボリンジャー」という独自の相場分析、トレード手法を用いて相場を判断、トレードしていますが、何故、相場がレンジ相場にあるとは言え、あるレンジ幅の中を往ったり来たりしているのか、不思議に思ったことが何度もありました。
売り手と買い手が存在しているから当たり前のことと言ってしまえばそれまでのことですが、レンジ相場にて相場が上下していること自体に、今回、「平衡状態の中の小刻みな動き」として意味が存在しているのだと改めて認識させられた次第です。
「相場」もこの世の1つの「自然現象」と言っても過言ではありません。人間界が生み出したものであるものの、人間そのものの身体が福岡氏の言うとおり、「流れ」の中で存在しているものです。そうであるからこそ、「相場」も「流れ」の中での一現象であると考えられるわけです。
「平衡」を「均衡」と言い換えれば、「均衡」と「不均衡」が相場の波動を生み出しているのだと言えるかもしれません。そして、「均衡」は「平衡」でありものの、やはり「流れ」の中に存在しているのです。
「平衡」でさえ、「変わりつつあるもの」の結果として保たれているという点が、普段、小動きであるにもかかわらず、時に大きく変動する「相場」の理解をまたさらに深めさせてくれる気がした次第です。
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