米地銀FRC株が5割安 預金急減で経営不安再燃
【ニューヨーク=竹内弘文】25日の米株式市場で米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)株が一時前日比51%安まで急落し、3月に付けていた上場安値を更新した。前日発表した2023年1〜3月期決算で期末の預金が22年末比で4割超減った。市場想定を上回る大規模な流出で、同行の経営不安が再燃した。
前日比49%安の8ドル10セントで引けた。22年末時点に比べて93%安い水準だ。3月10日にシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻するとFRCでも取り付け騒ぎが発生し、預金は1〜3月期に719億ドル(約9兆6000億円)減った。資金繰りを助けるためJPモルガン・チェースなど大手米銀11行が実施した計300億ドルの預金を考慮すると、一般顧客は1000億ドルあまり預金を引き出したことになる。
預金引き出しに対応するため3月末時点の借入金は22年末時点の7倍に膨らんだ。1〜3月期は最終黒字を確保したが、シティグループのアナリスト、アレン・シガノビッチ氏は25日付リポートで「資金調達コストが高いため今後は最終赤字に陥る可能性がある」と指摘。同銘柄に対する投資判断を「売り推奨」とした。
FRCのマイケル・ロフラー最高経営責任者(CEO)は24日の決算説明会で「戦略的な選択肢を模索する」と述べ、他行への身売りや出資要請を示唆した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は関係者の話として、大手行による救済や米連邦預金保険公社(FDIC)の公的管理入りが案として浮上していると伝えた。株式の希薄化や減資のリスクも株安を後押しした可能性がある。
資金面で脆弱なほかの地銀株にも売りが波及した。ノーザン・トラストとパックウエスト・バンコープはともに前日比9%安となった。25日に決算発表した両行の3月末時点の預金は22年末比でそれぞれ8%減、17%減だった。地銀株全体の値動きを映すKBW地銀株指数は前日比4%安で引けた。
米ブルームバーグ通信は25日、FRCが経営再建に向けて、満期までの期間が長い債券や融資債権など最大1000億ドル規模の資産売却を検討していると報じた。金利上昇で含み損が膨らんだ債権も多いとみられ、売却の条件交渉などで難航する可能性もあるという。
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