日銀、次回決定会合で金融政策現状維持の見通し=関係筋

日銀、次回決定会合で金融政策現状維持の見通し=関係筋
 4月21日、日銀は27―28日に開く金融政策決定会合で、金融政策を現状維持とする見通しだ。写真は13日、米ワシントンで記者会見する植田和男総裁(2023年 ロイター/Elizabeth Frantz)
[東京 21日 ロイター] - 日銀は27―28日に開く金融政策決定会合で、金融政策を現状維持とする見通しだ。複数の関係筋が明らかにした。足元で物価上昇圧力が高まっているが、海外経済などで不確実性が大きい中、2%物価目標の持続的・安定的な達成まではなお距離があり、金融緩和を続ける方針を示すとみられる。
イールドカーブ・コントロール(YCC)を継続し、10年金利の変動幅は上下0.5%程度で据え置くとみられる。年初に問題視されたイールドカーブのゆがみも、植田和男総裁は「総じて前よりスムーズになっている」と指摘、同様の声が日銀では目立っている。昨年12月の長期金利の変動幅拡大後、共通担保オペの拡充、国債補完供給の最低品貸料の引き上げなど、相次いで打ち出した金融市場調節上の工夫も、所期の効果を達成しているとの見方が出ている。
27日からの決定会合は植田総裁下で初の決定会合になる。金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)について、「新型コロナウイルスの影響を注視する」としてきた部分を削除することの是非を議論する見通し。ただ、この文言を修正する場合でも、政策金利について「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」として将来的な引き下げ余地を示してきた箇所は維持するなど、金融緩和を継続する方針を強調するとみられる。
<25年度コアCPI、1%台後半の公算>
決定会合では「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)も議論する。今回から予測が追加される2025年度について、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しは前年度比プラス1%台後半になる公算が大きい。
物価の先行きに強気な見方を持つ委員も見られることから、伸び率が2%台となる可能性もあるが、日銀では、海外経済などの不確実性が大きく、賃上げの持続性も不透明なため、物価目標の持続的・安定的な達成が見通せているわけではないとの声が目立つ。
<7月の春闘最終結果に関心>
    4月会合では金融政策の現状維持が見込まれるものの、日銀内では、今年の春闘の最終結果が明らかになればYCCの修正が可能になるとの声が一部浮上している。13日公表の春闘の第4次集計は定期昇給込みの賃上げ率が3.69%となり、日銀内でも予想以上の伸び率だとの声が多い。20日の支店長会議でも、人手不足感の高まりや物価上昇を受けて、中小企業でもベアを久しぶりに実施するなど「賃上げの動きが広がっている」との報告が多かった。
    早期のYCC修正を見込む向きは、例年7月上旬に出る春闘の最終集計で中小企業を含めた賃上げ率が確認できれば、政策修正が可能になるとみている。
    <賃上げの持続性は不透明>
    しかし、早期の政策修正論は現時点で日銀の一部にとどまる。植田総裁は12日の記者会見で、物価高への対応が遅れるリスクよりも「時期尚早に金融緩和を終了して2%のインフレ目標が未達になるリスクに日銀はより注意を払うべきだ」と述べている。
    来年の春闘も今年のような強い結果になるか、日銀では現時点で懐疑的な見方が目立つ。年度後半には米景気の減速が強まる可能性がある。米景気減速の顕在化は、来年の春闘に向けた労使双方の動きに影を落としかねない。
    日銀では、持続的な賃上げへの期待感が「確信」に変わる前に、拙速に金融政策を修正すれば人々のマインドを冷やしてしまい、賃金上昇が消費支出につながり企業の値上げにつながるという、日銀が目指す好循環に悪影響を及ぼしかねないとの指摘も出ている。 
(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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