円が141円台後半に反落、米利上げペース減速期待のドル売り一服
小宮弘子朝の東京外国為替市場では円が対ドルで1ドル=141円台後半に反落している。海外市場では米消費者物価指数(CPI)の予想以上の鈍化を受け、米利上げペース減速期待の高まりから米金利が急低下し、ドル安・円高が急速に進んだが、その流れが一服。米利上げが当面続くこと自体は変わらないとの見方が根強い中、9月以来の円高水準ということもあり、円の戻り売りが優勢となっている。
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野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、「米CPIに対し利上げ期待が低下し、米金利が低下、株が買われドルが売られるのは素直な反応だが、値幅がやや大きく、特にリスクオンの中で円の買われ方にはやや行き過ぎ感もある」と指摘。「米インフレのピークアウト期待が高まったこと自体、ドル・円のピークアウト期待を高める」としながらも、「米利上げは続くというのがメインシナリオ」の中、さらに円高が進むというよりは、週末・週明けにかけては円が小反落する可能性の方が高いと話す。
10月の米CPIは前年同月比7.7%上昇と今年1月以来の低い伸びに鈍化し、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも同6.3%上昇と40年ぶり高水準だった9月から減速した。前月比の伸びも総合、コアともに市場予想を下回った。ダラス連銀のローガン総裁ら米地区連銀総裁3人は10日、金融政策引き締め継続の必要性を強調しつつ、引き締めペースの減速には支持を示した。
米利上げペース減速期待が高まる中、10日の米株式相場は急反発し、米国債利回りは急低下。10年債利回りは28ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い3.81%、金融政策に敏感な2年債利回りは25bp低い4.33%に低下した。
外国為替市場ではドルが全面安となり、ユーロ・ドルは8月15日以来となる1ユーロ=1.02ドル台に上昇。円は対ドルで直近高値145円11銭や節目の145円を突破し、政府・日銀が円買い介入に踏み切った後に付けた9月22日の高値140円36銭を一時上回った。
米金利先物市場動向によると、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅の予想は9日時点から縮小。インフレのピークアウト期待が強まる中、11日には11月の米ミシガン大学消費者マインド指数の発表が予定されており、10月に上昇したインフレ期待が注目となる。
後藤氏は、目先ドル・円が140円を試す可能性はあるが、「そのぐらいになると日本の輸入企業などのドルの押し目買い需要が顕在化してくる」と指摘。その上で、市場では米ターミナルレート(利上げの最終到達点)の織り込みも低下しているが、「5%ちょっとまでは利上げが行われる可能性は高い」とし、海外勢も「きのうきょうとポジションを落とした後、もう一度ドルを買うという可能性はある」とみている。
クリーブランド連銀のメスター総裁は10日、10月のCPIは総合およびコアの幾分の緩和を示唆しているが、「一方で、傾向的に根強いサービス分野のインフレ率はまだ鈍化の兆しを示していない。加えてインフレは引き続き広範だ」と指摘。「継続的な高インフレの代償が大きいことを踏まえると、引き締め幅が小さ過ぎるリスクの方が大きいと私は現時点でみている」と述べた。
背景
- 米CPI、総合・コアとも伸びが予想下回る-利上げ減速の余地
- ローガン氏ら米地区連銀総裁、利上げペースの減速を支持
- クリーブランド連銀総裁、金融引き締めが不十分なリスクの方が大きい
- 【米国市況】株が急反発、円は140円台に急伸-CPI予想以上に鈍化