24年ぶり円買い介入、「過度な変動は見過ごせず」と鈴木財務相
占部絵美、氏兼敬子-
介入額や協調かは明言せず、「隠しきれる規模ではない」と財務官
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円は1ドル=145円台から一時140円台まで急反発
政府・日本銀行は22日夕、円買い・ドル売りの為替介入を実施した。日米金利差の拡大を背景に急激に円安が進む中、24年ぶりの円買い介入によって過度な円安を阻止する姿勢を示した。
鈴木俊一財務相は会見で、為替市場で投機的な動きを背景に急速で一方的な動きが起きているとし、「投機による過度な変動は決して見過ごせない」と介入の理由を説明した。協調介入かどうかについても明言せず「関係通貨当局とは常に連絡を取り合っている」と述べるにとどめた。
介入額も明らかにしなかったが、神田真人財務官は「隠しきれるものではない規模になっていた」と公表の理由を説明した。145円が防衛ラインとの見方を強く否定し「水準は全く考えていない」と話した。海外市場での委託介入もあり得るという。外貨準備のうち介入にすぐに投入できる預金は1361億ドル(約19.5兆円)。
会見に先立ち神田財務官は同日夕、記者団に政府として為替の「過度な変動を憂慮」しており、「先ほど断固たる措置に踏み切った」と介入を認めていた。
外国為替市場では、日銀による金融緩和維持や当面の利上げに否定的な黒田東彦総裁の発言を受け、円が1ドル=145円90銭まで下落していたが、介入の実施を受け一時140円台まで上昇した。午後7時40分現在は142円台後半で推移している。
円買い介入は、アジア通貨危機による急激な円安に対応し、1998年6月に日米通貨当局が円買い・ドル売りの協調介入に踏み切って以来24年ぶりとなる。円売り介入を含めると、東日本大震災後の円高進行を食い止めるために行った2011年11月以来、11年ぶり。
米財務省は6月の外国為替報告書で、日本を監視対象国に引き続き指定していた。為替介入は「適切な事前協議を伴う、非常に例外的な状況に限定されるべきだ」と従来の表現を用いて介入をけん制している。
共同通信によれば、経団連の十倉雅和会長は都内で記者団の取材に応じ、「投機的な動きが続いており、放置しないぞという意思を表明したのは意義あることだ」と介入を評価した。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、黒田総裁が金利は上げないと発言したことで、「為替は放置」だと思っていたため介入はサプライズだったと指摘。今後「日本は徹底的に介入を続けるしかないと思う。それで金融政策の修正のタイミングを計っていくしかない」と語った。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、介入の効果は「限定的・一時的にとどまる可能性が高く、相場のトレンドを転換させることは難しい」との見方を示した。
為替市場への介入の判断は財務省が行い、日銀は財務省からの具体的指示に基づいて介入を実施する。急激な円安に対応するためには、財務省所管の外国為替資金特別会計(外為特会)の保有するドル資金を売却して、円を買い入れる。
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