アングル:デルタ株拡大で主要中銀の出口遠のく、NZは利上げ見送り

アングル:デルタ株拡大で主要中銀の出口遠のく、NZは利上げ見送り
世界で新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染が拡大する中、NZ準備銀行(中央銀行)の利上げが先送りされた。写真は2017年7月、ウェリントンの同行前で撮影(2021年 ロイター/David Gray)
[ロンドン 18日 ロイター] - 世界で新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染が拡大する中、ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)の利上げが先送りされた。この結果、ノルウェーが先進10カ国(G10)で初めて、危機対応の超低金利からの脱却を開始する見通しとなった。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)対応の超金融緩和政策の解除に向けた主要中銀の現在の立ち位置を以下にまとめた。
1.ノルウェー
ノルウェー中銀は他の主要中銀に先駆け、9月に政策金利を過去最低のゼロ%から引き上げるとみられている。
中銀は実際、景気回復に伴い、2022年半ばまでに4回の利上げを計画している。債券買い入れは行っていない。
2.ニュージーランド
NZ中銀は18日の政策決定会合で、大方予想されていた利上げを見送り、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を0.25%に据え置いた。国内でコロナ新規感染者が確認されたのを受け、様子見姿勢を取った。
ただ、中銀当局者は引き続き年内の利上げを見込んでおり、OCRは年内に0.50%に達し、来年半ばには1.5%、2023年末には2%を超えると予想している。
3.カナダ
カナダ銀行(中銀)は4月にテーパリング(量的緩和策の縮小)を開始する考えを表明し、7月に毎週の国債の純買い入れを30億カナダドルから20億カナダドル(16億米ドル)に縮小することを決定した。
年内に買い入れ規模をさらに縮小すると見込まれており、22年終盤の利上げに向けた土台作りを進めるとみられる。カナダの政策金利は現在、過去最低の0.25%。
4.米国
米連邦準備理事会(FRB)は利上げ開始時期の見通しを24年から23年に前倒ししている。経済が力強く成長し、労働市場が回復する中、複数の当局者はテーパリングを近く開始する可能性を示唆してきた。
最新のロイター調査によると、大半のエコノミストはFRBが9月に月額1200億ドルの資産買い入れ規模を縮小する計画を発表すると予想。
ただ、デルタ株の感染拡大が引き続き逆風となっており、景気回復を危うくしている可能性が示されれば、FRBはテーパリング時期の再考を促される可能性がある。
5.オーストラリア
豪準備銀行(RBA、中央銀行)は今月、債券買い入れを9月に週50億豪ドルから40億豪ドル(29億ドル)に縮小する計画を堅持し、市場関係者を驚かせた。
RBAは縮小の延期も検討したが、ロックダウンへの対応では財政政策のほうが「適切」だと判断した。
ただ、利上げは遠い先になるとみられている。RBAは現行0.1%の政策金利を引き上げるのは、インフレ率が持続的に目標レンジ(2-3%)に入ってからだと強調。利上げは2024年以降になる可能性が高い。
6.英国
イングランド銀行(英中央銀行)は今月、超金融緩和策の将来的な正常化を見据えた「出口戦略」の新たな指針を公表した。
ただ、債券買い入れはフルスピードで継続しており、将来の縮小も小幅なものになるとの見通しを示している。
インフレ率は年内に、目標の2倍の4%に達する見通しだが、イングランド銀行はインフレは一時的との認識を示している。
このため、債券買い入れ枠は8950億ポンド(1兆2400億ドル)で据え置かれ、政策金利も0.1%で維持されている。
ロイター調査によると、利上げは2023年以降になる見通し。市場は2022年下期に1回の利上げがあるとの見方を織り込みつつある。
7.スウェーデン
スウェーデンでは物価が上昇しており、インフレ率は中央銀行の目標である2%をわずかに下回る水準にある。ただ、中銀は物価上昇は一時的とみており、金融緩和の拙速な縮小には反対している。
中銀は今後数年間にわたってゼロ金利が続くと予想している。
ただ、スウェーデン経済はすでに新型コロナ前の水準に戻っており、7000億スウェーデンクローナ(809億2000万ドル)規模の資産買い入れは2021年末で終了する予定。
8.ユーロ圏
市場関係者は、欧州中央銀行(ECB)が1兆8500億ユーロ(2兆2100億ドル)規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の縮小について、第4・四半期にも協議を開始すると予想している。PEPPは少なくとも来年3月末まで継続する予定。
ECBはその後も、既存の大規模な資産買い入れプログラムを維持する見通し。ECBはインフレ目標を2%に変更している。
利上げ時期は、主要国中銀では最も遅くなる可能性が高い。
9.日本
日本はコロナ禍で当面は低成長となる見通し。エコノミストは、9月の日銀決定会合で政策据え置きを見込んでいる。 
10.スイス
スイス中銀は当面、超金融緩和政策を継続する見通し。物価上昇が予想されているが、方針を変更する理由にはならないとみている。
政策金利は世界最低のマイナス0.75%。金融政策の重要な手段として為替介入を活用している。
課題の一つがスイスフランの急騰。フランは6月下旬以降、対ユーロで2.5%近く値上がりしている。
フラン高抑制に向けた介入により、中銀の巨額のバランスシートはさらに膨らむとみられるが、介入を見送れば輸出主導の景気回復に悪影響が出る。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab