店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第6回)議事録

平成30年6月12日
 
 

【池尾座長】  
 それでは、定刻になりましたので、まだ到着されていない方がおられますが、ただいまより、店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会第6回会合を開催したいと思います。
 皆様には、ご多用中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、早速ですが、議事に移らせていただきます。
 本日は、資料1として、「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会 報告書(案)」がお手元にあると思いますが、その報告書(案)につきまして、事務局よりご説明をいただいた後、取りまとめに向けた討議を行いたいと思います。
 それでは、早速ですが、事務局より報告書(案)のご説明をお願いいたします。
 
【御友市場業務監理官】  
 それでは、資料1の報告書(案)についてご説明いたします。
 前回の検討会においていただいたご意見等を踏まえまして、前回ありました討議資料に修正を加えております。その修正を加えた部分を中心にご説明申し上げます。
 1枚めくっていただきまして、目次がございます。前回、ご議論いただいた討議資料に沿った内容となっておりますけれども、冒頭と結末に「はじめに」と「おわりに」を追加させていただいております。そこも順次ご説明いたします。
 次に、メンバー等名簿があった後、1ページ目になっておりますけれども、「はじめに」がございます。本検討会の設置目的、開催状況等を記載させていただいております。新しい部分なので、読み上げさせていただきます。「はじめに リーマン・ショック以降、国際的に金融規制の見直しが進展しているところであり、金融取引の清算・決済・記録を担う金融市場インフラについても、その決済リスクの管理を強化するとの観点から体制の整備が進められている。
 店頭外国為替証拠金取引(店頭FX取引)市場については、こうした国際的な金融規制の直接の対象ではないものの、我が国では近年その取引規模が5,000兆円程度まで拡大していることなどに鑑みると、店頭FX業者の決済リスク管理を不十分なままにしておけば、顧客やカバー取引先に大きな影響があるほか、外国為替市場や金融システムにも影響を及ぼし、システミックリスクにつながる可能性を有しており、その決済リスク管理の重要性が高まっている。
 こうした状況を踏まえ、金融資本市場におけるセーフティーネットを整備する取組みの一環として、現行の決済リスクの管理が十分なものとなっているかについて検討を進めるため、平成30年2月に当検討会が設置された。その後、関係者からのヒアリングや、個人投資家を含め幅広い利用者を対象とした意見募集も行いながら、6回にわたり検討を行った。
 本報告書は、当検討会における検討結果を取りまとめたものである」となっております。
 2ページ目は、1として、討議資料にもございました、店頭FX取引の規制に関する経緯が書いてあります。
 3ページ目が、2としてリーマン・ショック後の国際的な規制の動向となっており、討議資料と同内容でございます。
 4ページ目、3としまして、店頭FX取引の外国為替市場及び金融システムに対する影響の部分でございます。(1)の市場規模が新しい数字が出ておりまして、修正している部分がございますので、ご説明します。脚注3を見ていただきますと、年間取引規模の2017年度末の数字が4,191兆円となっております。建玉残高は6.8兆円となっております。こういったものを踏まえまして、3の(1)の1段落目のところは、近年は5,000兆円程度まで拡大し、また、建玉残高で見ても、2010年度末の3兆円程度から、近年では6兆円程度と増加しているといった、大体近年3カ年の状況ということで記述いたしております。
 この箇所以外は変更がございません。次の5~6ページ目には、4として、店頭FX業者の3つのリスクと対応状況というのが記載されており、これは討議資料のままでございます。
 7ページ目、5といたしまして、店頭FX業者の決済リスク管理の強化に向けた対応策とあります。討議資料にもございました基本的な考え方を示しまして、こうした基本的な考え方のもとで具体的な対応策として以下が考えられるとしまして、(1)ストレステストを通じた自己資本の拡充と、以下が書かれてございます。
 1つ目は、①としまして顧客未収金の発生リスク、次のページをおめくりください。8ページ目、②といたしまして、カバー取引先の破綻リスクとありまして、ここの黒丸が3つございますが、3つ目の黒丸のところを変更しております。前回会合におきまして、複数のメンバーの方から、清算機関の活用についてぜひ進めるべきとのご意見を頂戴いたしましたので、3つ目の黒丸のところ、このような取扱いとすることは、リスク削減のため清算機関の活用を促すことにもつながることと考えられる。なお、現在カバー取引の清算業務を行っている機関はなく、今後の関係者における取組みが期待されるという記述に変更しております。その次③、ストレステストの実施頻度とありますが、ここは記述を変えておりません。
 10ページ目、(2)取引データの報告制度の充実というところがございます。ここの上から4段落目、「さらに」から始まる段落でございますけれども、ここで取引データの報告制度の充実の結果、経営層の意識向上が促されるとの記述を、ご意見を踏まえて入れております。
 次の「なお」で始まる5段落目になりますけれども、最後に、複数のメンバーの方から、取引データの報告制度の充実に当たっては、一定のレベルの規制の実効性を担保しながら、低コストで、合理的、効率的に規制を行っていくべきとのご意見を前回いただきましたので、5段落目にこうした米国の取組みも参考に、我が国の自主規制機関においても効率的・効果的に監視の実効性を確保するための対応が採られていくことが適当と考えられると記述しております。
 次の11ページ目をご覧ください。(3)といたしまして、証拠金倍率(レバレッジ倍率)についてというものがございます。その2段落目に、前回会合におきまして、投機性を抑制するため、レバレッジ倍率の一律引き下げが望ましいとのご意見がございましたので、そのご意見をそのまま載せております。
 4段落目になりますが、今回、提示された対応策を確実・迅速に実施していくこと、また、当局がその実施状況を確認していくことが重要というご意見がありましたことから、まずは厳格化・適正化された新たなストレステストの確実な実施を通じた自己資本の充実等により、高度なリスク管理体制の構築を確実かつ迅速に進めることとし、当局がその対応状況を確認するとともに、その成果を厳正に評価することが重要である。その上で、なお十分な効果が得られていないと判断された場合には、証拠金規制を含めた他の方策の採用について再度検討することが適当と考えられると記述しております。
 12ページ目でございます。(4)その他の対応策。①の未カバーポジションの情報開示の部分でございます。これも、前回会合でご意見をいただいており、最後でございますけれども、情報開示に加えまして、情報開示や適切なリスク管理を求めることが適当と考えられるという記述にしております。
 13ページ目、④顧客の損失を限定する規制で、ドイツ、フランスで導入されている「Negative Balance Protection」の話でございますが、前回、この制度の我が国における導入について、前向きに検討すべきとのご意見を頂戴したことを踏まえまして、一番最後の部分の導入については、欧州等における実施状況も踏まえつつ、なお慎重な検討が必要であると考えられるという記述に変更しております。
 14ページ目が「おわりに」でございます。ここでは、前回複数のメンバーの方からいただいたご意見を踏まえまして、今回の対応策を実施することによって得られる成果、あと実効性確保についての留意点等を記載しております。読み上げさせていただきます。
 「おわりに 以上が、当検討会における検討の結果である。
 店頭FX業者の決済リスクへの対応として、厳格なストレステストを通じた自己資本の拡充や自主規制機関による取引監視の強化等を実現することは、店頭FX業者の信用力のみならず業界全体の信頼度を向上させるものであり、中長期的に良質な店頭FX取引市場の成長につながるものと考えられる。
 店頭FX業者及び自主規制機関においては、こうした趣旨を十分に踏まえ、迅速かつ着実に取組みを進めるとともに、当局がその実施状況を検証することにより、本報告書で示した各施策の実効性を確保していくことが重要である。
 今後、関係者における適切な対応を期待したい」。
 説明は以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、討議に移りたいと思います。どなたからでも結構ですので、ご意見、あるいはご質問等ございましたら、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。前回討議資料に関してはほぼ合意をいただいたという感じで、それに加え今ご説明していただいたように、前回の会合で出された意見をさらに反映させて修文をしたという感じの報告書(案)ですが、いかがでしょうか。
 どうぞ、松井メンバー、お願いします。
 
【松井メンバー】  
 ありがとうございます。前回の議論も踏まえて取りまとめてくださいましたこと、感謝申し上げます。修正点につきまして、全く異存はございません。前回も申し上げたとおりでありますけれども、引き続き金融庁でこの業界を見続けていただきたいということと、何より業界自主規制機関の取組みにかかっているところもありますので、今後その点について業界には頑張っていただきたいと思っております。
 コメントだけですけれども、以上でございます。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 あと、いかがでしょうか。お願いします。
 
【永沢メンバー】  
 とりまとめありがとうございました。私も、本日お示しいただきました報告書(案)に異存ございません。
 松井メンバーのご意見と同じになりますが、今回の検討会を通じまして、FX業界が大きな業界となっていることを認識いたしましたし、自主規制機関に頑張っていただく必要があると思っております。自主規制機関には、隅々にまで目を光らせていただきたいということと、それから、金融庁におかれましては、投資信託の分野ではしっかりと監督いただいていると評価しておりますが、これだけの規模になっている店頭FX市場についても、投資信託に劣らないくらい、しっかりと監督をお願いしたいと思っております。
 それから、この機会ですので、申し上げたいことがございます。検討会の途中で何回か申し上げたことですが、業者の方々がたくさん集まっていらっしゃる機会でもありますので、2点、お願いしたいことがございます。
 まず、店頭FXではなくて、取引所FXのこととなりますが、取引所FXは不招請勧誘が禁止されておりません。私は、オンライン取引ができないような高齢者に、こうした取引に強く求められるような自己責任を果たしていただくことは難しいと感じておりまして、取引所FXのほうも店頭FX同様、不招請勧誘を禁止すべきと考えます。
 二点目は、検討会の冒頭でお話させていただきましたことで、繰り返しますが、店頭FX取引は金融リテラシーの高い方はまだしも、一般の人はすべきではないと思っておりまして、そういう意味でも、テレビコマーシャルなどの広告の在り方につきましてはもっと慎重に考え、十分な配慮をしていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 では、弥永さん。
 
【弥永メンバー】  
 ありがとうございます。私も事務局でまとめていただいたものに全く異存はございません。この検討会でも明らかになったように、店頭FXが我が国の金融市場において非常に重要な役割を果たしているという状況のもとで、やはり自主規制団体にはぜひご尽力いただき、それを金融庁が後押ししてくださればと思っています。以上です。
 
【池尾座長】  
 では、坂メンバー、お願いします。
 
【坂メンバー】  
 ありがとうございます。私も今回の非常に的確な取りまとめについては賛成したいと思いますし、ぜひこれに従った今後の取組みをお願いしたいと思います。
 今回の報告書に基づく施策が確実に実施されることによって、店頭FXにおけるリスクの把握、管理について、より高度な技術――これはコストの面でも、実効性の面でもより高度な技術が実装されることを期待したいと思います。
 あと、若干二、三の点について感想的なところも含めて述べさせていただければと思います。まず1つ、清算機関については、ぜひ今後とも積極的な取組みをお願いしたいと、重ねて申し上げたいと思います。取組みに当たっては、清算機関自体の経営基盤の確立とともに、高度な信用力を確保できるよう、適切な仕組み、体制の構築をお願いしたいと思います。
 それから、次に、今回の報告書には必ずしも明示的には盛り込まれておりませんが、店頭FXにつきましても、海外関連事案への法執行の確保・充実、これも重要な課題と思います。金融商品取引法に基づく登録業者の適正な競争環境を確保する観点からも、海外当局との連携ですとか、あるいは法執行手段の開発、充実は、いろいろな分野でご尽力いただいていることと思いますけれども、ぜひ引き続きお願いしたいと思います。
 それから、今回の報告書に基づく制度整備が進められるということになりますと、取引データの報告制度や、未カバーポジションの情報開示が進められていくということになると思います。これらは、投資者の皆様の立場からも極めて重要な意義を有するものではないかと思います。この間のご議論は、投資者の皆さんの注視の中で進められてきたかと思いますけれども、できれば、ぜひ可能な範囲で今後のこうした実施状況についても関心を持って見ていただけるとありがたいのではないかと思います。
 それから、今回の検討会の議論には、オブザーバーで参加いただきました業界団体、あるいは業者、金融機関、取引所の方々より、店頭FXをめぐる実情や取組み等について豊富な情報提供をいただけたと思います。また、報告書においては、官民関係団体、関係機関がそれぞれの役割のもとで、決済リスクの把握と管理の高度化に向けた取組みを行うことが確認できたのではないかと思います。
 いろいろと技術の進展も進む中で、実情や技術的な可能性等について、関係者が認識を共有して協働して取組みを行う必要性が高まっているのではないかと思います。引き続き、官民関係機関それぞれの立場を前提に、適切な協力、協働のもとで今後の取組みが実現されていくことを期待したいと思います。ありがとうございました。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 では、黒沼先生、お願いします。
 
【黒沼メンバー】  
 私も今回の報告書(案)に賛成でございます。今回、店頭FX取引の決済リスクへの対応という観点からの検討をしたわけですけれども、決済リスクへの対応として適切な対応策というか、なすべきことを特定できているのではないかと思います。皆さんが指摘されているように、今後の取組みが重要だと思いますが、終わりのほうにも書いてあるように、当局がその実施状況を検証することが重要であると思います。その際には、どのぐらいのスピードで取組みが行われていて、その結果、どこがどう変わったのかということを検証して、適切な場で公表していただければと願っております。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 今回、迅速にという抽象的表現で、1年とか、期限を必ずしも切りはしませんでしたが、期限を切らなかったからといって、とにかく「迅速に」ですので、よろしくお願いしたいということです。
 それでは、大変重責を負わされたような感じですが、オブザーバーの山﨑さん、いかがでしょうか。大変かとは思いますが。
 
【山﨑オブザーバー】  
 まずは、いろいろとご検討いただきましたメンバーの先生方、そしてまた、事務局の金融庁の方々に感謝を申し上げます。皆様、多分ご存じのように、日本でFX取引が開始されて、今年で丁度20年に当たります。また、デリバティブ取引として一般投資家に浸透した初めての商品ではないでしょうか。また、世界最大級の取引市場に成長したビジネスでございます。
 この20年間に、投資家保護ということにおきまして、各種の法規制、そして自主規制、そして業者の自己規律ということで一定の成果を上げてきたと考えております。今回の検討会の報告を踏まえまして、次は金融市場の仲介者としてリスク管理を高度化し、そして情報の開示等を通じて投資家、そして金融市場の参加者の信頼を確実なものにしたいと考えております。どうもありがとうございました。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 ほかにご発言をご希望の方いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、審議官からお願いできますか。
 
【中島審議官】  
 6回に渡るご議論を賜り、池尾座長を始めとするメンバーの皆様、オブザーバーの皆様、本当ありがとうございました。この店頭FX市場は一般投資家が入ったこれだけ大きな規模の金融市場、しかも我が国固有の市場ということで、当局もどういうふうにリスク管理をやっていけばいいのか手探りしながらやってきております。今回、こうして非常に有益な報告書が取りまとまって、これをもとに当局として今後しっかり進めていかなければいけないなと、また責任の重さを痛感しております。
 引き続き、色々とご指導をいただければと思います。本当にどうもありがとうございました。
 
【池尾座長】  
 よろしいでしょうか。
 それでは、基本、おおむねこの資料1の報告書(案)に関してご賛同いただいたということで、あとは表現の平仄とか、再確認いたしまして、て・に・を・は等を直すことはあるかもしれませんが、そのレベルの修正に関しては私にご一任いだいて、最終的に確認した上、取りまとめとして公表したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)

 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、実際、いつ、どういうタイミングで正式に公表するか、事務局と相談して決めたいと思いますので、そこもお任せいただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、報告書の中にも書かれていますが、本検討会につきましては、本年の2月13日に立ち上がって6回会合を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には、大変ご多忙のところ、精力的なご議論を賜りまして、誠にありがとうございました。メンバーの皆様のおかげで何とか検討会を終了させることができまして、私としても大変安堵しているところでございます。どうも、本当にありがとうございました。
 それでは、事務的な連絡はございますか。特にないですか。
 
【御友市場業務監理官】  
 特にございません。
 
【池尾座長】  
 それでは、以上を持ちまして、店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会は、終了ということにさせていただきたいと思います。誠にありがとうございました。
 

――了――

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