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為替コラム

デリバティブ倒産急増 円高で差損 銀行を調査〜その1

2010年12月22日(水)

金融庁が実態調査

 表題は平成22年12月12日付け朝日新聞朝刊一面に載った記事見出しである。記事は、「銀行から薦められて為替相場変動リスクを回避するための金融商品゛デリバティブ゛を契約した中小企業が、2008年10月のリーマンショック後の急激な円高で、その取引によりかえって大きな損失が生じ、倒産に至ったケースが相次でいる」と言うもの。 記事は、「融資とセットで購入させられた、など銀行に対する企業側の不満が強く、全国銀行協会への苦情・相談件数も増加。金融庁も深刻な事態として実態調査に乗り出した」と続いている。

▼デリバティブ倒産 急増 円高で差損 金融庁、銀行を調査(朝日新聞/2010年12月12日付朝刊)
為替変動によるリスクを避けるための金融商品「デリバティブ」を銀行から購入した中小企業が、急激な円高でかえってその取引による損失が生じ、倒産に至ったケースが相次いでいる。「融資とセットで購入させられた」など、銀行に対する企業側の不満は強く、全国銀行協会への苦情・相談件数も増加した。金融庁は深刻な事態として実態調査に乗り出した。 >>記事本文へ


長期フラット予約

 記事でいう「デリバティブ」と言うのは、我々銀行の為替ディーラー出身の仲間内では「長期フラット予約」と称している外国為替先物予約取引である。

この取引を簡単に説明すると、契約した企業は、銀行から一定の外貨額(例えば、50万ドル、100万ドルとか50万豪ドル、100万豪ドルなど)を、契約した外国為替相場(例えば1ドル=100円とか1豪ドル=80円など)で、長期間(3年間、5年間、7年間など)毎月一回買う(つまり輸入予約)事ができる外国為替の先物予約取引である。仕組みは通貨オプションの売りと買いを組み合わせた取引にしているため一般的にはデリバティブ(金融派生商品)と呼ばれる金融商品の一つとして分類されている。

毎月外貨を購入する時の相場が同じ相場なので、この種の長期為替予約が顧客市場に出てきた当時(1980年代後半)の為替ディーラー仲間はこの種の為替予約を「長期フラット予約あるいは単にフラット予約」と呼んでいた。後でそのからくりを詳しく説明するが、不思議な事にこの長期フラット予約は輸入予約(企業の買い予約、銀行の売り予約)のみで、輸出予約は無いのである。

長期フラット予約からデリバティブへの変遷

 外国為替予約は、外貨交換実行日が1年以内の短期予約が一般的である。しかし、1982年頃から続くドル高レンジの時代に、長期間ドル高傾向が続くと輸入コストが上昇し続けることになる事を懸念した一部の石油会社や輸入商社から1年を超える輸入予約の要望があり、その時以降1年を超える長期輸入予約の締結が増加してきた。長期輸入予約は予約の実行日が違うと予約相場もその期間の金利差だけ違う相場になる外国為替市場実勢に則した為替相場を適用していた。

その後、銀行の決算基準が原価主義から時価主義に変更になった事から、外国為替の先物市場相場実勢を反映しない、予約期間中は予約の実行日に関係なく同じ相場を適用する「長期同一相場先物予約(長期フラット予約)」が誕生した。筆者は「新聞記事のデリバティブの原型が、この長期フラット予約にある」と判断している。

「長期フラット予約」は、その後。金融のビッグバン(金融の自由化)の進捗と共に生まれてきた数多くの「デリバティブ(金融派生商品)」の一つとして、「クーポンスワップ」と言う名称に変更して2000年200年頃に再登場した。

その後「クーポンスワップ」は「シンセティクフォーワード」あるいは「シンセティク輸入予約」と言う名称に変更して再々登場し、2008年10月のリーマンショック後の急激な円高になるまで、外国銀行やメガバンクを中心として多数の銀行が積極的にこの金融商品を顧客に売ってきた。

多くの問題を孕むこのデリバティブ取引

 この取引は、当初は輸入商社からの要請から生まれた取引だったが、その後デリバティブ商品として「クーポンスワップ」と言う商品名で、さらにその後は「シンセティク輸入予約」などの商品名で、銀行の収益獲得の一つの商品として、積極的に企業に売り込む商品になってきた。外国為替取引をするよりもデリバティブ取引とした方が銀行の収益幅が大きく設定できるからである。このからくりについても後ほど説明しよう。

貿易業者は、一般的に言って外国為替は銀行の専門的な業務分野と理解しているため余り知識が無い。従い、銀行が薦める取引だからと言う簡単な理由だけで、この金融商品のリスクを理解しないまま契約をしたものと思われる。筆者が各地で「貿易実務セミナー」を開催した時に、この取引に関する質問・相談を受ける事が多々あったが、質問者は全員この商品に対するリスク認識について理解してなかった事実から、この取引をした企業の大多数がリスク認識がないまま契約したものと思っても大きな間違いではあるまい。

この取引が大きな社会的な問題となっている事が今回朝日新聞が一面で採り上げた理由であろう。

FX業界に実需取引を取扱う絶好の機会到来

 筆者は、リーマンショック後に当コラム(2009年3月11日付け)で、大手ファミリーレストランチェーンのサイゼリアがしたこの取引契約を153億円と巨額の解約手数料を払って解約した事を含めて、この金融商品の危険性を指摘した。筆者が、FX業界の経営者に対し、度々「FX市場の安定的な成長に向けて、FX取引を実需取引の有効活用を貿易業者に啓蒙する事」を提案している。 
 筆者は、銀行在勤中から長期輸入予約について顧客から相談を受け、長期輸入予約のリスクについて説明した経験を基に、日本各地で開催される「貿易実務セミナー」でこの種のデリバティブ為替予約のリスクを啓蒙している。

筆者がFX業界にFX取引の貿易取引の相場変動ヘッジへの有効活用提案をしているのは、外国為替取引の専門家であるべき銀行が自行の利益優先の営業姿勢を続けている現状から、FX業界が貿易取引に参入する余地が高いと考えるからである。大手新聞に「問題取引」として取り上げられた現在、FX業界には絶好の機会であろう。何故なら、FX取引は、銀行の商品よりもはるかに少ないリスクで為替相場変動リスク回避が可能だからである。

FX会社が貿易取引に参入するためには、競争相手(銀行)の外国為替取引の取組み姿勢の変化を勉強し、FX取引の簡便さ・優位さ・活用方法を貿易業者に啓蒙することは必須のことである。

そのために今回の朝日新聞の記事はかなり詳しく銀行業界の問題点を指摘しているので大いに参考になろう。しかし、この問題は専門的すぎる事と紙面の都合で、多分、為替ディーラー経験者以外の人には記事内容を100%理解する事は難しいに違いない。

 筆者は当コラムで数回に亘り、この記事で採り上げている数々の問題点を出来るだけ易しく詳しく解説する。この解説が、FX業界の方、貿易業者の方、そして内蔵するリスクについて何も知らないままこの商品を売らされている銀行の外為担当者など出来るだけ多くの人に、外国為替取引について正しく理解するため一助となれば幸いである。

〜続く〜

Posted by 佐藤利光   パーマリンク

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プロフィール

佐藤利光

ジェトロ認定貿易アドバイザー / 佐藤利光

日本信託銀行(現三菱信託銀行)で外国為替業務に20年間、資金運用業務に10年間従事。固定相場時代から外国為替ディーラーを勤める。変動相場制移行のきっかけとなったニクソンショックの数少ない経験者。経営者向けセミナーや社内研修などの講師経験豊富。外国為替取引会社代表取締役を経て、平成15年4月1日より国際投資アドバイザーとして独立。ジェトロ認定貿易アドバイザー。

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