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長尾数馬

「インターバンクという戦場で」 ― 長尾 数馬 氏 [後編]

2010年08月25日(水)

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(中編はこちらから)

■ディーリングの名人

 数々ある為替イベントの中で、最も印象的だったのは、1995年4月19日、米ドル円が史上最安値79円75銭をつけに行ったときだった。ほとんどレートは提示されておらず、市場はパニック状況だった。米ドル円は80円台後半から一気に暴落していた。お客さんから500万ドルのプライスを要求されたことを覚えている。私は79円75−80銭を出し、80銭で500万ドルマインされ(買われ)た。嫌な予感がして、とっさにプライスが出てきた79円85銭でロスカットをした。その後のプライスのスプレッドは30〜50銭幅。瞬時に相場は5円以上の85〜88円まで米ドルが上昇したと記憶している。日銀(大蔵省)からの逆襲の徹底介入のあった日だったと思う。

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当時、私はドイツBHF銀行東京支店で為替資金部長をしており、ボスの堀内さんとレートがないまま暴落していくマーケットを信じがたい眼差しで眺めていた。結局、この日は往復で10円以上の乱高下をし続けたほど猛烈に荒れたマーケットで、後にも先にも、この日ほど、体が震える経験をしたことはない。

BHFは、ブローカー中心のディーリングをしていたので、それまでインターバンクディーリングを中心に行なってきた自分にとっては全くの新境地だった。BHFには、他の銀行にはなかったブローカーからの玉が集まっていた。それもこれも堀内さんが、ブローカーと非常に良好な関係を構築していたからだったと思う。ブローカーディーリングを活発に行い、それに相当する多額のブローカレッジフィーを払っていた。だから、ブローカーは堀内さんに対して精一杯のサービスを提供できるという好循環になる。この良し悪しは別にして、こういう関係がないと利益が上がらないとも思った。私は、「すごいな、この銀行は儲かるだろうな」と感心し、ブローカーディーリングもやり方次第だと思った。

また、お客さんとの関係もめっぽう良かった。通常の取引では、売り買いどちらか言われずに、両サイドを要求され、リスクを負った上でツーウェイプライスを提示するのが常であるが、堀内さんのお客さんは、売りたいなら売りたいと言ってくる。これはお互いに絶対的な信頼関係がないとできない取引だった。これはお客さんとの最も好ましい取引形態であり、顧客取引の鏡でもある。逆にインターバンクディーラーもプライドから、ベストのプライスを出さなければならない。堀内さんの、お客さんとの素晴らしい付き合い方は、真に尊敬に値するものだった。

■個人投資家は自分の頭で投資を学べ

 私は堀内さんをボスとして、BHFで約7年間働いた。直接的にははじめての日本人ボスであった。そして人生で二度と味わえない経験をさせてもらった。堀内さんのディーリングの動物的な感覚。これは天性のものとしか思えなかった。なんだかよく分からないが、どうしてこうなのとビックリすることがたびたびあった。堀内さんは相場師であり、相場が本当に好きだと思った。外見は強面だけれど、心根が本当に優しい方だと思う。精神的にめっぽう弱いとご自身でも認めているが、相場の世界で生き続けていることには敬服する。

堀内さんのことを語るなら、中山さんのことも話さなくてはならない。中山さんは言動一致の正真正銘のプロと思う。私の性格は堀内さんよりも中山さんに近いのではないかと言われる。私は堀内さんのように相場が好きで、愛してはいなかったと思う。中山さんにいみじくも言われたが、「長尾くんはもっと長くやれたが、大きな弱点があった。それは相場が好きではなかったことである」。良くお見通しであった。中山さんは、精神的には非常にタフな方と思う。肝っ玉が太いと言うか。また、欧米風の論理的思考の持ち主でありながら、日本を愛する気持ちや武士道精神のようなものを持っていて、非常に厳しい方だけれども、男気がすごくある方である。

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このお二人を題材にして、私がプロデューサーとして『FX投資のための[直伝]心得帳 チャーリー中山の投資哲学と堀内昭利の相場戦陣訓』の出版に至った経緯は、昨今金融商品が巷に多く溢れ、個人投資家をあまりにも食い物にしている惨状が目に余ったからであり、安易に投資をしても儲かるわけはない、相場というものはそんなに簡単なものではない、という本当のことを個人投資家の方々にも知っていただきたかったからだ。

堀内さんと中山さんのように、本当にずっと勝っている人たちはどういう考え方をしているのか。また、本当に相場をやろうとしたら、どのような才能、考え方を持っていなければならないかを紹介させていただきたいと考えた次第である。お二人と同じようにできなければやるべきではないと言っているわけでない。自分の頭で考えて、どうしたらいいかを、この本で学んでいただくことを願ってやまない。

■戦友は人生の宝

 私は元部下には、「ディーラーバカにはなるな」とよく言っていた。ただ数字だけを追って、売ったり買ったりしているだけでは何の意味もない。人生では他に学ぶべきことはたくさんある。それは全員が、堀内さんや中山さんのようにディーリングで勝ち続け、食べていけないことを知っていたからだ。私はもともと40歳ぐらいになったらコンサルティング会社を設立したかったという夢を持っており、その機会に恵まれた。幸運だった。厳しいディーラー人生の中で自分の本当の弱さや強さに気付き、人への優しさを教えてもらった。必ずや人生において有意義な結果をもたらしてくれるという証左ではないかと思っている。

為替は、本当に人との出会いだった。地獄を見た人たち。同じ釜の飯を食って苦労した人たち。この人たちと一生の盟友や友人になり信頼関係を結ぶことができた。為替の世界で教えてもらったのは、いかなるビジネスの世界においても、人間同士の信頼関係が重要なファクターとなることだった。

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25年経った今でも、厳しい時代を共有してきた諸先輩方、後輩たちとは、同じ銀行で働いたか否かを問わず、その絆は固い。戦友たちは僕の人生の宝となった。今私は為替の現場の世界にはいないが、この世界では私の人生でかけがえのない多くの人にあった。一緒に地獄の釜の飯を食べた、尾形さん、上平さん、飯塚さん、浅川さん、太田さん、塚越さん、池田、明地、平井、伊藤、川村、西村、大前など、皆忘れられない。

急騰と急落の繰り返しで相場も立たない中で、誰もが疑心暗鬼で相場を模索していた。そんな戦場で、自分が日本の資本移動や貿易のために為替相場を立てていたというプロとしての自負を持てたことが、相場が与えてくれた醍醐味だったのだと思う。

(全編終了)

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====【監修書のご案内】===================================================
「チャーリー中山の投資哲学と堀内昭利の相場戦陣訓」
FX投資のための[直伝]心得帳
チャーリー中山/堀内昭利 著  長尾数馬 責任編集
実業之日本社より2010年6月17日発売
『これを読むと簡単に相場がやりたくなくなるかもしれない。
  でも現実を個人投資家の方々に伝えたい。
    そして自分自身で本当の投資を学んで欲しい』−長尾数馬

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*2010年07月12日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/文:香澄ケイト)

【前編】スピードと度胸と勘と計算
【中編】確実に儲けるのがプロの仕事
【後編】信頼という絆で相場と対峙

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>>「The FxACE(ザ・フェイス)」インタビューラインアップへ


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TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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