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大倉孝

「為替との巡り合せは大きな財産」 ― 大倉孝 氏 [後編]

2009年09月02日(水)

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(中編はこちらから)

■一に「体力」最後に「運」

商社の人達の市場に対する姿勢も凄かった。三井物産の森修さん(故人)と後に日銀政策委員会審議委員を勤められた福間年勝さんは、まさに命を張っている感じで、銀行なんてまだまだダメだと思った。商社は元々為替にしてもリスクを取ることが戦前から綿々と培われているせいか、三菱商事、丸紅、兼松などでも為替に対して真剣に取り組んでいる人たちが多かった。為替ディーラーはインサイダーの取引もなく、世界中を相手に非常に孤独感の強い中でやっている。そういった環境で時間を過ごせばなんとなく同じ釜の飯を食ったような感覚を共有できるのだろう。組織を超えた付き合いは為替ディーラー独特のすごく良い世界だと思う。

1989年春に総勢約80名のディーリングルームの統括責任者であるトレジャラーに昇格する。ディーリングルームは徒弟制度が原則で“体育会系”と呼ばれるような独特の雰囲気がある。これは取引が市場に連動していて、一分一秒を争う環境の中で仕事をすることと、職人的な微妙なやり取りで成り立っている部分が最大の理由だと思われる。また常にチームワークが求められていることも大きな要素だ。感覚的なものは読んで理解するよりも、聞いて体で覚えるしかないからだと思う。

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ディーリングに関して、各ディーラーに自由にやらせるかどうかは各銀行によって違うし上司の考え方によっても違うが、僕は人にとやかく言われるのは嫌である以上、言うのも嫌なので部下には自由にやってもらったし、できるだけ多くの人にやらせた方が良いという考え方をしていた。

優秀なディーラーの条件は第一に体力(健康)だと思っている。皆それぞれ優秀な大学を出ているわけで、頭の方はある程度は普通にあるのが前提なので、残るは体力勝負だ。他には、精神的に安定している、集中力に長けている、記憶力が良い、勝負事に強い、人間洞察力に優れているなどが挙げられると思う。ただ、為替といった市場物は理屈通りにならないところがあり、現実の作業をいかに理詰めにしても、大きく負けないが収益を上げられないディーラーもいる。

ディーリングといっても勝負事だから100%理詰めることは不可能だ。情報をいくら集めてもジグソーパズルのピースが全部揃わないでどこかにブラックボックスがあるのだ。そのブラックボックスに対してリスクを取るか取らないかになるわけだから、感覚というのも大事になってくる。勝つか負けるかの最後のピースは、その人の持っている運が支配しているのだと思う。

■ディーリングの基本はマクロ

ディーリングでは基本的にはマクロを大事にしている。自分のシナリオをマクロの中で描いて、その結果として、為替の取引が一体どこで生じてくるかを考える。ドル円であれば、単純に米国と日本の経済の良し悪しだけで行われるものではない。日本の景気の悪い時は不思議と円高になっていくし、逆に日本の景気が良い時は円安傾向になる。これはひとえに日本の国内の資金が外に行くか、外にあった資金を中に引き戻すという行為が極端に行われるからだ。

恒常的な貿易収支の黒字は、常に円買い要因ではあるのだけれど、資本取引が一本ボーンと出てくれば、貿易収支の黒字分ぐらいはポーンと無くなくなってしまう。2000年の前半ぐらいから日本の金利が0%になった時に個人投資家を含めて、資金がどんどん外に行った資本取引が良い例だ。しかし、それでもドル円は124円台までしか行かなかったけれど。だが、あのような長い期間で金利を背景にした資金の移動はとても特殊だった。だから、こういったマクロで見て為替に関わる資金の移動がどうなってくるのかというところを見る。だからそれが逆流した時も単純に円を買うという行為に出る。

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今の僕の相場観では市場はまだ踊り場にいると思っている。もう一回どこかでディップ(押し目)が来ると思っているので、その時に何が起きるかというと、ここ1年半で味わったような皆が円を買い戻さなくてはいけないほどのエネルギーはないにしても円高のリスクはあると思う。現状は、マクロで見ても円安も円高も余り大きなエネルギーが溜まっていない、などという大きなシナリオを自分で描いて日々それを検証しながら、実際の為替取引としてはそれがどこで起きるのかということに落とし込んでいく。エコノミストの予想が外れるのは、どうしても、経済の良し悪しや対外収支の動向が中心で、こういう見方をしないからだ。

■丁々発止とやってきて今思うこと

自分は特にこれというチャートは使ってきていない。30年以上市場を見てきていれば、チャートポイントのレベルが感覚的に頭の中にインプットされている。チャートだけでやるにしても何かに徹しないとダメだ。中途半端にチャート見てやっていたら、良いとこ取りじゃなくて悪いとこ取りばかりになってしまうかもしれない。レンジに入っていると分かっているのだったら、チャートポイントを切ったら順張りではやられる。そこで逆張りにいけるかどうか。

損切りはいくら以上はやられないようにと、元々バジェットの範囲内で自分が設定するものだ。いくらまで儲けたいというのは、逆に言えばここまでやられたらそれで終わりと言うことになる。そう考えれば、おのずとポジションの枠が決まってくる。損切りは設定しておけばよいわけだから簡単だが、利益確定が一番難しい。ストップ・ロス(損切り)が一定のルールの中で行われるのに対して、ストップ・プロフィット(利益確定)は自分の中で欲と不安との戦いになる。少しでも利益が出れば確定したくなる衝動に駆られるが、そこをしのいで更なる利益を出すか元に戻るかは損切りより遥かに難しい。

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為替を知ることによって、為替取引自体よりも為替という取引のもたらすものがグローバルなビジネスのほんの一端かもしれないけれど、覗き見ることができたことが自分にとって非常に大きな財産になった。為替取引も含めて日本の金融行政や金融業が大きく変化を遂げたその渦中にずっといて、当局との折衝や東京外国為替市場慣行委員会などで個人投資家の重要性に対する提言なども含めて丁々発止とやってきたことは、そういう巡り合せ合わせだったのかなという気がしている。為替は究極のマクロインデックスだから、色々投資をする際に絶対役に立つ。個人投資家の方にもっと為替を通じて、僕が学んだようなことをしてもらえれば、何にも勝る幸せだ。 

(全編終了)

*2009年7月7日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/構成:香澄ケイト)

【前編】人生で勝負できる仕事
【中編】好きだから苦にならず
【後編】丁々発止と為替をやってきた

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>>「The FxACE(ザ・フェイス)」インタビューラインアップへ


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TheFxACE

TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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