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カバー取引

「カバー取引」について思うこと

2006年01月20日(金)

店頭外国為替証拠金取引を営む業者において、その顧客から受けるポジションをどのようにカバー(※1)するかについては各社さまざまである。その代表的なやり方は以下の2つに分けられる。

(1) システムによる自動カバー(システマティック)
(2) 人間(ディーラー)による任意のカバー(ディスクレショナル)

システマティックな方法は、顧客の約定をシステムが自動的にカバー先の約定に結び付けてしまう方法であり、形としては取引所のそれに似ている。カバー先が任意の金融機関になるというだけの違いといっていい。これを行うメリットとしては、顧客のすべての取引を自動的にカウンターパーティにカバーできるので、業者としては市場リスクが生まれない。顧客取引とカバー取引が同数量になり、取引高が1対1の関係で結ばれ、わかりやすい。また、ディーラーを置く必要がないので人件費が節約できる。

その代わりデメリットとして、カバーするときのレートと顧客と約したレートとの差分が固定的ディーリング収益となり、同一レートでカバーするとなるとそこからの収益はない。また、カバー先の約定エンジンが停止すれば、顧客との取引も停止せざるを得ない。さらには、カバー先の約定が集中したり市場の動きが激しくなったりすると、約定遅延が発生しやすいが、このとき市場のレートに比して不利な約定請求を拒否することが一般的であり、顧客から見るとマーケットが荒れるといつも約定拒否になるという現象がおきやすい(※2)。データベースサーバー等への負荷も大きい。最大のリスクは市場が不測の事態に陥り、システム設計上前提とした事態以外が発生したときには全面停止せざるを得ないことになる。

※1 「カバー取引」なる言葉は、どちらかというと業界の造語だったと思うが、今回の金先法改正において明示的にこの言葉が正式名称のように市民権を得ているが、その実態について明確な定義があるわけではない。

※2 FXビジネスに長けた金融機関とて、24時間安定的にレートを業者に配信できるわけではない。マーケットが荒れれば、一時的に配信を停止したり、バムレート(本来ならありえないレート)を吐き出したり、ディーリングレートをヒットしても市場の動きに追いつかないために約定拒否されたり、レートが一時的に普段の数倍に拡大したりとそのサービスは一定ではない。

 一方、ディスクレショナルな方法は、顧客から受けるポジションをディーラーの判断で適宜カバーしてゆく方法であり、前提としてはその会社の市場リスクに対する管理方法やその方針と財務体力を総合的に判断してどこまでやるかという社内ルールが規定されてはじめてやっても大丈夫といえる組織になる。

このメリットは、顧客の約定をいちいちカバーしない(いちいちすることもあるが)ためにDBへの負担が相対的に少ない。ディーラーの知識経験技術により、収益を引き上げるチャンスが生まれる。不測の事態が発生しても優秀な(経験豊富な)ディーラーが存在すれば適宜臨機応変な対応が可能になる。カバー先が取引を停止しても顧客との取引を継続することが理論上(システム上)可能である。デメリットとしては、収益が相対的に安定的でなくある程度変動する。この変動をいかに抑えるか(=リスクの逓減)がノウハウの価値でもある。さらに、ディーラーを抱えるコストがかかる。

 ディスクレッショナルな方法でカバーをしていると、それは呑み行為ではないかと聞かれることがあるがこれについて一言申し上げたい。まず、以下の法文を読んでいただきたい。

『金融先物取引法
第四節 取引所金融先物取引の受託
(のみ行為の禁止)
第四十七条
 取引所金融先物取引の委託を受けた会員等又は取引所金融先物取引の委託の媒介、取次ぎ若しくは代理を引き受けた者は、金融先物取引所の開設する金融先物市場においてその受けた委託に係る申込みをせず、又はその引き受けた委託の媒介、取次ぎ若しくは代理をしないで、自己がその相手方となつて取引を成立させてはならない。』

つまり、呑み行為とは、取引所に取次ぐことを前提に受けた注文を取引所につながずに自己で仕切る場合をさす。最初から「店頭」取引として行う契約関係に「違法な呑み行為」はありえない。店頭取引は「自己が相手方となる」取引である。誤解を恐れず、やっていることだけを見て言えば、銀行もこの業者もOTCで行う金融取引はすべて呑み行為に等しい。それが合法か違法かの違いがあるだけである。賭博にしても、賭博=違法ではない。競馬や競輪等合法な賭博はいろいろある。競馬にたとえて言えば、競馬場は金融で言うところの取引所である。その取引所(競馬場)を通さずにその指標である数値(馬番号)を利用して、取引所の決済を通さずに他人が仕切ると、それは「取引所取引に対する呑み行為」であり法により罰せられる。

顧客の取引はひとつづつきっちりとカバー先にカバーしないと呑み行為だという意見がいまだに私の耳に“間接的に”聞こえてくることは残念である。顧客から受けるポジションをどのようにカバーするかがOTCビジネスの収益を生む源泉であり、その部分のアルゴリズムをどのように構築してゆくかが知恵の絞りどころなのである。当然そこで「ずらして」カバーする限り市場リスクが生まれるので、そのリスクを会社が許容できるかどうかを会社の財務体力とリスクアペタイト(どれだけのリスクならとってもいいかという判断と意思)をかんがみて決定されるべきであるし(証取法、内閣府令の自己資本規制比率による監視の意味はここにある)、そのルールが厳格に運用されているかをモニタリング監視するシステムインフラも必要になる。金融機関はこのような基本的な考え方で選りすぐれたOTCの金融商品を世に生み出してきたし、嵐のような金融市場の混乱も生き延びてきた。金融取引所取引はその“ほんの”一部を担っているに過ぎない。

 金先法改正に向けた金融庁の審議会においても、業者がどのようにカバーするかについてはOTCの金融取引なのだからその分は尊重し、あくまでも行政側としては自己資本規制比率がどうなっているかというツールをもって監視監督業務を実行することが本文であり、あまりその中身であるカバーの手法等、箸の上げ下ろしにまで口をはさむようなことはしないという趣旨のことを座長だかどなただかがおっしゃっていた。

 私個人の意見としては、どっちの手法でやろうとさまざまなリスクから完全に逃げ切ることは不可能である。すべてシステムで自動カバーしているから、市場リスクを当社は持たないし、いわゆる悪いイメージの呑み行為もしていないという業者もいるが、呑んでいるかどうか、それが悪いかどうかなどは投資家にとっては問題ではない。納得したレートで取引できていればそれを自分の取引業者がどのようにカバーしているかなど知ったことではないはずである。取引所取引だと誤認して店頭契約でやっている場合ぐらいが問題になるが、これは業者の説明責任とか、悪質な場合は詐欺の問題である。

システマティックにやっているところは市場リスクを取らないからつぶれる心配がないと思うのならそれは間違いである。システムが障害を起こすことによって、顧客との約定はつきつづけるのに反対のカバー取引ができないという状況が発生すれば、その会社は市場リスクがコントロールできない状態になる。また、そうした障害時には顧客取引も停止するから市場リスクは生まれないとするなら、それは投資家が決済取引も出来なくなるわけだからそのリスクを投資家サイドに皺寄せしているだけである。理想的なのは、システムがとまったら人間が(ディーラーが)取引を継続しますといえるインフラであり、ネットがダメなら電話で取引が継続できることである。これはコストがかかるので時流としては捨たれつつあるが、1998年のLTCM破綻時のボラティリティや2001年のニューヨークテロ事件を経験すると、こうした人間が対応する機能を持ちつづけることはリスク管理としては不可欠ではないかと私は感じている。システムの性能や機能を向上させれば、そういうアナログ的なインフラは不要になっていくが、それでも「なくす」というところまでは踏み切る勇気は私にはない。システムを100%信頼しないという気持ちの裏腹でもある。

 ちなみに「カバー取引」という言葉が法律にもでてきて市民権を得てしまったが、これは「ヘッジ」という言葉の一部を定義する用語であると自分自身の頭の中では整理している。ヘッジにはいろいろある。FXスポットで客から放り込まれるポジションをスクエアにする、つまりその市場リスクをニュートラルにする方法には、同じ通貨ペアでカバー先と取引し“ヘッジ”する方法以外にも、ポジションの認識をスポットフォワードではなくて、キャッシュとして、つまり通貨ペアではなく、単一通貨ごとに集計して適宜ヘッジする方法もあるし、通貨オプションを使ってヘッジする方法もある。

これはあくまでも私個人の用語定義であるが、「カバー取引とは、店頭外国為替証拠金取引業者が顧客から受ける通貨ペア単位のポジションをカバー先でその通貨ペアのままリスクヘッジする手法」である。つまり、業者がかかるリスクをニュートラルにする手法はカバー取引だけではないということが言いたいのである。それはあくまでも古典的で一般的な手法であるが、唯一ではない。だから、カバー取引を1対1の関係でやっていないとその業者は悪い業者だという間違った概念が一般通念として波及することを憂慮するのである。


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尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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