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[第247回] 店頭FX業者における決済リスクまたそのシステミックリスク(1/3)

2018年06月05日(火)

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有識者会議もどうやらあと一回で終わりそうな気配である。いろいろ意見が沸騰していたようだが、最終的にはやっぱりそこへという感じで着地しそうに見える。次回6月に開催されたとしても今見えている着地点に大きな差はないだろうと勝手に判断して、今回のテーマについて考えてみる。長いので3回に分けてアップしたい。

長くて申し訳ない。さらに内容がほぼ論文の体になってきているので読みづらいと思うが、質問があればいつでも受け付けているのでそれでご容赦いただきたい。

1.仮説兼テーマ

『日本の外為証拠金市場において大量の未収金が発生すると世界的な金融市場に大きな悪影響を与える可能性、つまり決済リスク、つまりそのシステミックリスクが高いという懸念があり、それを防ぐためにはレバレッジ規制を現在の25倍から10倍にすることは有効である』という仮説について検証する。

 システミックリスクには深くコンピュータシステムの存在が関わってくる。科学的検証を含めて議論を深めていくのであれば、そこに金融システムを設計構築しているプロがいるほうがよいだろう。いみじくも金融庁はフィンテック推進派であると認識している。ならばもっと金融システム目線を大切にすべきではないのだろうか。広義の金融機関のトップにITの経験者がいるところをほとんど見たことがない。いつも言うことだが金融は電子システム装置産業である。この事実は仮想通貨市場とそれを支えるブロックチェーン技術関連産業、AI産業、ビッグデータ産業が成熟するにつれよりその密度は高くなる。

店頭外為証拠金取引市場の取引規模が年間5,000兆円まで膨れ上がったとはいえ、これはCFD、差金決済であり、ネッティングされ、それらすべてがカバー先の銀行のリスクになっているわけではなくその一部(統計的に約40%、グロスベース)が店頭FX証拠金取引市場からインターバンク市場へと流れているわけで、さらにそれは日々ネッティングされて決済されているという事実をよくよく咀嚼して反応するべきである。このあたりの仕組みについて全く触れないまま、理解しないままうわべだけの数字に踊らされているように見えて仕方がないシーンを見ると、この国は大丈夫かと不安になる。

2.システミックリスクとは

 システミックリスクとは、金融システムの末端で決済が滞るとき、それが世界的な金融市場にドミノ連鎖的に悪影響を及ぼすことを指す言葉だと理解している。システマティックではなくシステミックというのはそういうことである。ドミノ倒しのような連続反応を指す。決済が滞るということは、外為証拠金業界において、(1)客である個人投資家の口座で発生する未収金と、(2)業者がカバー先に支払うべき決済代金の支払い不能の2つの事象が想定される。つまり債権債務関係があるところにそれは起きうる。本来、これらの事象が連鎖的に世界的な金融市場に大きな悪影響を及ぼす可能性があるとして、その防衛策にレバ規制10倍が有効であるという仮説が提起されるのであれば、その部分がクリアに提起され議論されるはずである。ちなみにウィキペディアの説明はこうである。

「システミック・リスクとは、経済学用語の一つ。 特定の金融機関や市場が機能不全となったならばそのことの影響が他の金融機関や市場にまで、さらには金融システム全体にまで波及する金融危機を起こすというリスク。」

私の仮説として、金融市場(FXにおいてはインターバンク市場)に異変が起きることで店頭FX業者が破たんするというシナリオは想像できるが、逆の店頭FX業者が破たんすることで決済先の銀行が破たんしたり、その先のインターバンク市場に大きなマイナスの影響を与えたりするシナリオは全く想像がつかない。少なくとも冒頭のテーマはこのケースを想定しているため、なぜこのようなとっぴな発想がいま議論されているのか大きな違和感は否めない。

3.業者の破たんリスクとシステミックリスクは直接関係ない

 業者の破たんリスク、それ自体はシステミックリスクと“直接”関係ない。逆に言えばどういう会社が破たんしようとも同じ文脈で言えばシステミックリスクはある。山一証券が破たんした時もそれはあったが、結果として世界的金融システムに悪影響を与えたかといえば否である。ならばリーマンショックは世界的金融市場にシステミックリスクを顕在化させたのか。これについてはさせたといえるだろう。どこまでの影響があるとシステミックリスクが顕在化したと定義できるのか。繰り返すが、システミックリスクは店頭FX業者に限らずあらゆる企業に存在するものである。そう言いだすと、どのレベルの影響をもって世界的金融危機を起こしたというのか。その定義は議論の最初に必要になる。これはかなり主観的な評価になると思うが、私の1990年からの経験上、一番システミックリスクが顕在化したと感じるのは2001年のNYテロである。体験した人が少なくなりつつあるが、これに異論がある人はいないだろう。しかしこれは店頭FX業者レベルの小魚の話ではないし、当然小魚発のリスクでもない。他にもそれらしいイベントとして近々ではリーマンショック、東北大震災、ブレグジット、スイスショック等いろいろあるが、システミックに多数の金融機関や基金の破たんを誘発したのは、リーマンショックぐらいである。こういう視点の議論は本来大学の研究者が得意とするはずである。

かつて私の記憶では、ABNアムロ(※)の事件やベアリングズ銀行が破たんに追い込まれたケースを思い出すが、これらは一人のディーラーが不正な取引を繰り返しそのディーリング損失によって引き起こされた“事件”であり、これらはシステミックリスクとは何ら関係ない。

※ABNはリーマンショック後一次国有化されたがそれ以前にディーラーが損失隠しのための取引を繰り返し、結果大損を出して消えるという事件があった。それとその後の国有化は直接関係ないが、こっちの方はリーマンショックによるシステミックリスクの顕在化の例としてカウントできるかもしれない。

さて、業者が破たんするシナリオは、まず上記(1)の客の未収金である。客から本来もらうべき客の損失は業者の利益であり、その利益の多くもしくは大部分はカバー先への支払代金(損失)として使われる。ただしその業者がカバーしている場合に限る。したがって、そのカバー先への支払ができないとなると、業者は破たんする。そしてカバー先の金融機関はその分の業者に対する未収金を引当てなくてはならなくなる。その額が膨大になれば、その金融機関も連鎖的に倒産のリスクを負うかもしれない。これが私の想定するシステミックリスクの第一番目の顕在化事象である。

この視点から導かれる検証すべきシナリオは、店頭FX業者のPB先はいくつかの銀行(欧米の外銀ばかり)に“集中”している実態からみて、システミックリスクはそれらの外銀に集中している。であれば、彼らにその視点でのストレステストを依頼するほうが理にかなっている。

私のそれらPBを引き受ける外銀のストレステストの結果の仮説は、「システミックリスクの可能性は限定的と評価する」である。

大手金融機関のこの決済リスクは与信リスクでもあるが、その大きな部分は店頭FX市場からではなくそれ以外の融資ビジネス等の側にある。店頭FX業者から放り込まれるカバー取引によるリスクは、世界的な一流金融機関のバランスシートのほんの僅かなウェイトしか占めない。簡単に言ってしまえば、店頭FX業者が破たんしてもカバー先として取引をする金融機関がそれだけで破たんするというシナリオは私の常識にはない。リーマンショックでつぶれるときもそれは証券側、クレジット側から潰れた。一方NYテロのような市場を外部から停止させるような事件ではつぶれていない。つまり、これは何を示唆しているかといえば、市場を支える信用構造が崩れない限り金融システムは自己補修能力が極めて高いということである。しかし逆に信用構造そのものに亀裂が走ると一気に崩れる。外為市場に激震が走ったり、株式市場に暴落を招く事態が起きても、確かにそれらは多くの犠牲を参加者に押し付けてくるが、それ自体がその世界的金融システムを破壊しては来なかった。最大の破壊力を持つのは、市場に時々巻き起こる竜巻ではなく、信用構造の破壊行為であったことは歴史がきれいに輪郭を提示してくれていると思うのだが、皆はそうは思わないのだろうか。私は素人だから、金融史を研究するような有識者なり専門学者の意見を聞いてみたいものである。

4.カバーしない業者はシステミックリスクから切り離される

 極端な例として、“一切カバーしない業者は金融システミックリスクから切り離される”というメリットがある。債権債務が顧客とその業者間で閉じているからである。債権債務という握手をしていない相手に影響は及ばない。基本的に、金融市場はすべて与信でつながり、決済で仕切られる。システミックリスクは多かれ少なかれそのすべてにおいて存在する。大事なのはそのリスクが顕在化する可能性が高まっているかどうかの観察である。

(続く)

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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