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[第231回] FXCM CEO罰金と追放のニュースを知って

2017年02月27日(月)

なんだかんだ言って5年もの間お世話になった会社であり、CEO(さらにもう一人のほうも)とは1998年からの付き合いだったので個人的感情が沸き上がるのは仕方がない。が、それはとりあえず横において、今回の罰金と追放劇には、彼らが投資家に対しても当局に対しても嘘をついた(defrauding)という主張があるようだ。具体的には「『NDDは投資家にもカバー先にも利益相反はなく、市場リスクに対しても中立であり、万事そのモデルで運用している』という説明が嘘だった」と言っている。

FXCMが買収したマーケットメイカーであるLucid(FXCMのカバー先でもある)にアルゴ取引をさせてそこで得たディーリング益の70%を親会社に還流させていたという具体例が「嘘」の一例として記載されていた。書いてある事実はその通りだろう。しかしその事実が投資家に不利益を与えただろうか。もし最初から事実通りの説明をしていたらこういう処罰を受けることはなかっただろうか。思うことはいろいろあるが、ここで私がそれ以上に考えてしまうのは、なぜそういうことをしたかという動機である。

NDDモデルは突き詰めれば突き詰めるほどシステム対応が難しいものである。はっきり言って異様にシステムコストが上がり、中身が複雑化する割に収益が見込めない(今では一般化した許容スリッページの機能もFXCMから始まっている。シンメトリー・アシンメトリースリッページの議論もFXCMに端を発している)。さらにインターバンクの流動性の濃淡に合わせて、単純にカバー先が拒否したからあなた(個人客)の注文は拒否という理屈でやっているとNDDの説明としての整合性はとれるが、やたらと拒否が増えるしスリッページも増える。そうなると素人である個人客は怒り出す。そして出ていくか訴訟を起こしてくる。しかしそれでは困る。困るからいろいろとあの手この手を考える。結果、もともと看板が魚屋だったのに、気が付いたら野菜まで扱うようになっていた。築地卸100%と言っていたのに実は産地直送も混ぜていた・・・。忙しくて看板で言っている文言を書き直すことを忘れていた。ひょっとするとそんな感じだったのかもしれない。むしろこうした行為によってより顧客サービスを向上させていたかもしれない。けれどそれら事実の変更が伝えられていなかったことは厳罰に値するということだったように見える。しかしその点について開示された文章からは読み取れない。

NDDとはそのカバー先であるインターバンクの常識をそのままリテールに提供するという意味になり、プロである者同士で何十年もかけて築き上げ受け継いできた常識や商習慣を押し付けるというモデルになるが、そのなかには個人レベルでは理解しがたい、受け入れがたいものが多いだろうことは想像に難くない。そういう意味でNDDベースが当たり前な米国に比べれば日本のBブック主体、0.3銭原則固定、拒否なし約定はとても投資家に優しいサービスに見える(相場乱高下時のインターバンクに比べ異常にワイドになるスプレッド現象は別として)。意地悪な見方をすれば取引所保護にバイアスのかかったCFTCが、いうことを聞かない業者を苛め抜いているという風にも見えなくもない。しかしそれでもここまでの罰が降り注いだ背景には相当当局を怒らせるようなことがあったのだろうとも思うが、当然個人的憶測の域を出ない。

私の論点を単純にすれば、最初からNDDなど標ぼうしなければよかったのである。そもそもインターバンクのOTC市場とリテールをダイレクトにNDDという線で結んでしまったことで、そこからあらゆる問題が生まれた。NDDベースでやるならやはり取引所のモデル(オークション方式)にしてメイカーもテイカーもおなじ土俵で勝負する環境を提供するほうがよかっただろう。それがいやなら最初からOTCだからという考え方を貫いてBブック主体でやるというモデルを押し通していれば今回のような「嘘をついた」などと後ろ指をさされるようなことにはならなかった、かもしれない。そういう意味で日本は合理的で健全に見える。NDDは誰もやっていない。

振り返って、日本の業者が顧客に対して開示、説明している文章において、果たしてそれはあっているのだろうかという文章表現を目にすることはないだろうか。また、受けているサービスについて疑問に思う部分でそれについては何も触れられていないこともあるかもしれない。NDDですとうたうFXCMに対して、「NDDはやっていません」とも、「うちはBブックです」という業者があるわけではない。業者ごとに、どうやってカバーしているかを開示する義務があるとは思わないが、どういうロジックで顧客向けのレートを生成し出しているのか、注文を約定判定するときの条件・仕様についてある程度の開示はあってもいいと私は常々思っている。最近は業者ごとにそういうところまでまじまじと見に行かないのでよく知らないが、気にはなる。

昔からここで言っているが、カバー先の開示は義務だからどこもやっている。しかし、それはPBスキームが一般化する前に作ったルールであり今の環境下においては、それよりも「与信先」を開示するほうが大切なはずである。できればさらに細かく、@カバー先、A与信先、Bリテールレート生成に利用しているレート提供元と3つに分けて開示してもらった方が誤解がない。カバー先であってもそこのレートはリテールレート生成に使っていないこともあるし、カバー先であってもPBのスポークバンクのためそこには一切の与信リスクを発生させていない(要するにお金を預けてもいないし一切の資金決済もしていない)ということは普通にある。2000年ごろと違い、今はカバー先を開示したからといってそれが投資家側にとって何のメリットも生み出さない無味無臭な情報でしかない。むしろ上記の@ABの違いを知らない投資家にしてみれば開示されるカウンターパーティの情報は致命的な誤解を生む可能性もある。

投資家保護を言うなら、個人投資家がその業者を選択するにあたり知っておくべき重要な事実とは何かについてしっかりとした議論があるべきだろうし、またそういう議論は一回で終わらず、数年ごとに見直す必要があるはずである。最近はフィドュ―シャリードュ―ティー(fiduciary duty)ということばが流行っているようだが、それを第一義とするのならばなおさらである。また、そのようなより高い理念は結構だがそれに全体がついていけるかも課題だ。

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、米国インテグラル社の日本支店に勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXにかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。。

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