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[第218回] マイナス金利の影響

2016年02月23日(火)

そもそもマイナス金利ってどういうことと家族や知人に聞かれた方は結構いらっしゃると思うが、皆さんどう答えておられるだろうか。ニュース等でもかなり突っ込んで説明しているので今更だが、こういう解説はどうだろうか。

「たとえばあなたが車をローンで買いたいと思うとしましょう。店頭に行くと今まではカーローン1.9%とかの数字を見ていたんですが、今日行ったら、なんと“マイナス1%”と出ているではありませんか。これはつまり、“借りたら1%分キャッシュバックか!”と思うかもしれませんが、実際にはどういうことが起きるかと言うと、

たとえば、500万円の車を、せっかくですから結構いい車を買うと白昼夢しましょう。8年ローンで、1.9%でカーローンを組んで、元利均等計算で買ったら、完済したときの支払総額は5,393,573円になります。ところがマイナス1%で他は同じ条件で計算すると、支払い総額は4,800,584円になります。つまり199,416円安くなるんです。

一括で買うより割賦で買ったほうが、支払い総額は安くなるという現象が起きるということです。
じゃあ実際そういうことは起きるのか、と言いますと、それはかなり非現実的でしょうね。そうなると結局販売価格そのものを値引きするという行為が混ざってくるので、マイナス金利分がその値引きの中に含まれるという現象がおきるでしょうから、値引き分のどこまでがマイナス金利分なのかと外目に区別することは難しいと思いますし、買う側からすればそんなことはどうでもいいことですよね。

というわけで、こういう理論的な影響が現実的に消費財に波及しだすと、それは価格の下落という圧力になりかねないと思います。それじゃあ日銀の目標である物価上昇率2%が達成できないじゃないか、という方もおられるでしょうが、こうして消費が活発化することで、結果的に資本回転率が上がり、経済成長率が上がり、所得が上がれば、物価もつれて上昇するだろう、というシナリオもまんざらありえないわけでは、な、い、と考えられませんかねえ」

若干、池上彰氏をイメージしながら書いてみた。もうひとつ、池上章氏風にいってみようか。今度はもっと身近に銀行を例にする。

「銀行は日銀の当座勘定に230兆円程度の預金がありますが、今回のマイナス金利はそのうち100兆円に対してかかるだけで残りの、今まで預金してきた分は依然同様0.1%の利息がつきます。なので銀行にとって直接的な意味での受け取り利息の機会損失(?)はこの10兆円とあと20兆円の利息0%の分だけになります。では、そもそも論として200兆円分に0.1%の利息がつくというのはどういうことだろうと思いませんか。普通われわれが銀行に開く口座には総合口座あるいは普通預金口座と当座預金口座があります。当座とは法人が商売の決済口座として使うため通常利息はつきません。日銀のこの当座勘定もかつてはそうでした。たしか総裁が白川さんのときだったでしょうか、0.1%付与することになったと思うのですが、それって本来おかしいですよね。銀行は集めた預金を、信用をもって事業に貸すこと、すなわちそのリスクを負うところから利益を得るわけですが、日銀に預けるだけで0.1%の利益を得るというのは無リスクの眠り銭をいただいていたということです。
200兆円x0.1%ですからそれは毎年約2千億円です。ここから10兆円掛けるマイナス0.1%なので100億円取られますからそれでも差し引きでは1900億円の受取利息収入があります。個人法人から預金を預かり、個人法人に貸し付けるという銀行の伝統的なビジネスモデルから、仕事しなくても客から預かったお金を日銀に預けておけば一定の利益が転がり込むという仕組みですよね。公的資金を借りてそれを全額返済したのは立派とも見えますが、こういう裏口入学的な部分もあるわけです。ちょっと話がそれましたね。戻します。

今後は、銀行にとっての眠り銭的な収益が下がる以上に、市場の裁定によりもっと市場からの収益率は下がるでしょう。たとえば住宅ローンも市場に連動してその利率を下げつつあることは毎日のようにニュースになっていますからよくご存知ですよね。それらを予測し、嫌気して銀行株は軒並み下落しました。年初来安値にあと少しのところにきています。では銀行はその市場からの利益が減ってしまう分を何で補う、の、か・・・ということになりますが、それはたとえば、ATMの利用料を上げるとか、預金残高10万円以下の口座に対しては毎月口座維持管理費として数百円を徴収するとかのサービス手数料等の単価の引き上げが考えられます。米国の銀行も預金口座の残高が月平均4000ドルを切ると毎月12ドルの口座維持手数料を取る、なんてところもあります。むしろ預金残高が1円しかないのにずっと無料で口座を維持してくれる日本の銀行サービスが“いままで安かった”ともいえます。そうなると個人顧客目線でも、金利は0.001から0.0001に下がったけどマイナスにはならないね、といいながら実は毎月払っているATM使用料が年間で3600円だったのが、単価が100円から200円になって7400円になれば、実質的にマイナス金利と同じ“効果”が生まれることになりますよね。

つまりマイナス金利とは金利の利率に置き換えてみているけれどもそれにより現実に起きる現象として、何もしなくても、あるいはいつもと同じことをしているだけなのに、自分の資産が目減りしていく状態を指すということがひとつの定義としていえるのでは、ないで、しょう、か。いかがでしょう。」

おまけとして付け加えるが、メガバンクを中心としたこうした動きに対して地銀や信金の中にはここぞとばかり預金集めに力を入れて逆に預金金利を引き上げているところもあることは頼もしい。たくさん預金をしてもらって事業貸し出しや住宅ローンとして貸し出すという本来の銀行事業以外にこれといって収益源のない銀行や信金のほうがメガよりもリスクテイカーだなあと感心する。

さて、そこでマイナス金利が、外為証拠金取引業界に与える影響はあるか、である。いくつか思い浮かぶポイントをそれぞれ挙げてみた。

信託報酬

考える限りの影響を想像して見るにつけ、まず浮かぶのは業者が支払う信託報酬。通常金銭信託のサービスを受けるにあたり、実預託額の○○パーセントを信託報酬として支払う。そのかわり、年間を通してその預託金を運用してもらうので、その運用益が信託報酬額を上回ればさっぴきプラスになるが、信託報酬の掛け目は変わらないのにマイナス金利で運用結果が信託報酬額を下回るとその分が差引き支払信託報酬として出ていくことになる。預かりが少ないところは事業全体に対するインパクトは小さいが、1千億を超える業者の場合はあまり笑えない。信託報酬が0.2%なら、報酬額は年間2億円だが、結果的に年間通しての運用利回りが0.0001%だったら、運用益が10万円なので、差引1億9990万円を業者は信託銀行に支払うことになる。

スワップ金利

大した影響はないだろうと思う。スワップの受取り狙いでキャリートレードをする人から見れば円金利の今回の下げによる運用益の微々たる向上よりも、そもそもトルコリラにするか南アランドにするか、はたまたもう少し安全なキウィにするかというような問題のほうが大きい。

リテールの流動性

おかげでここんとこボラが高い。1日の変動幅もそうだが、取引画面に流れ、更新し続けるプライスの変更頻度も高いことに気づくだろうか。それだけ市場が活発であることを意味している。こういうとき、この業界で0.3銭、あるいはそれ以下に固定しているところは、なかなか約定しないという現象が相対的に増えるような気もするので、実際私も許容スリッページを多めにセットするか、3,4回は拒否されることを覚悟してクリック、クリックしている。ドル円スリッページを2銭にしても数回連続で約定拒否にあることはざらである。最近は強制ログアウトまでさせられるケースがある。こういうときはおかしなレートも出やすいだろうし拒否も多かろう。いまさらそれに文句を言ってもしかたない。それが相場だと思うべし。レートを出す側であるインターバンクも、業者も慈善事業ではない。市場リスクは個人投資家同様等しく追いかぶさってくる。

インターバンクの流動性

大まかには上と同じ状態だと言えるのではないか。ただそれに「コマーシャルバンクは余計なリスクをとるな」という例のあれのせいで、じわ〜〜と与信枠が狭められ、それに呼応してスプレッドもワイドになりがちなうえに今回のマイナス金利ショックで、相場は不安定極まりないため余計にワイドになりがちではなかろうか。最近、リテールよりも狭いスプレッドを出すCPはかなり限られてきているようにも見える。結果多くの業者が同じ限定的なCPばかりをたたいていると、それらのCPも疲弊してくるか、もしくはとてもおいしくて元気いっぱいになるかのどちらかの結果が待っているようにも思う。

モメンタム

金利の高い通貨は必ず買われる。金利の安い通貨は最後には必ず売られる。それが正しいのであれば今見えている円高は、一過性の現象であり、最近のはやり言葉でいえば、リスクオフであり、あるいは単なる調整である。いずれは円安局面が復活するというシナリオはまだ捨てがたい。しかし、その一過性の期間が結構長くなる可能性も捨てきれない。一方、独走する米国の腰が砕けると一過性ではなくなる。微妙に円安を支持しつつも、さらなる円高急進リスクは高めに構えて待つ。“けっきょくどっちやねん”という態勢である。
むしろ、為替じゃないがマイナス金利でたたき売られている銀行セクターの株にちょっと注目したい。ほっといても配当性向をみると4%以上である。“メガ銀行は絶対つぶれない”、を信じられる人は、預金するよりはるかに利回りはいい。4割ほど下がった銀行株のPBRは0.5を割っている。これはNISAで買いか?
おっと、相場感を言わないはずの私が・・・・、この辺にしておく。

本来ならば、この国はリスクオフってる場合ではないのだ。資本は回転を止めていられるほど、世の中順風じゃない。もっともっと回してもらわないと。そういう文脈としては、マイナス金利導入はまさに、資本よ、お金よ、休んでちゃいけないよ、外に出て働いてこいよ、ということなのだが、残念ながら行き先が見つからない。人のみならず、お金も就職先が見つからないってことか。

GPIFも個別株への投資を見送ったりしないで、ここぞとばかりにやったほうがいいのではないか。無リスクでは支払いに追いつけない以上迷ってる場合でもない。国債だけ買ってる場合じゃないということだ。年金が株に投資されるということは、老後にちゃんと年金欲しかったら株価が上がるように国民みんなあくせく働けというメッセージになる。それがいいかどうかは別として。個別株に手を出す以上、コンプラ強化は必須。「うちの株を買ってくれたらおまんじゅう差し上げます」的な営業が上場企業、政治家、運用者の間で始まらないようにしてもらわないと。最近その辺のコンプラ監視委員(ボランティア)としてスプXXXセンXXXとかいう雑誌が頑張っているようだが、そんなんに任せといていいのか。

一方、私にとってのこだわりはどこに投資するかではなくて、投資する組織体制である。くじらと比喩される巨体は市場で目立つ。そして簡単に餌食になる。でかいぶん狙い撃ちしやすい。戦艦大和みたいなもんだ。まずは細かくファンドを分散して遊撃できるように態勢をイージス艦タイプに変えたほうがよくないか。また、社長がだれかよりも運用方針を具体的に決めているマネジャーの顔を見せてほしいものである。ちゃんとやってくれれば給料が60%上がっても文句はない。透明性を求めるにあたり、GPIFも例外ではないのだから。

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、米国インテグラル社の日本支店に勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXにかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。。

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