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外為証拠金取引業における最大のリスクとは(後編)

2015年02月22日(日)

>>外為証拠金取引業における最大のリスクとは(前編)はこちら

■オペレーショナルリスク

業務担当者のミスによる損失、あるいは顧客情報の持ち出しによる被害・損害。幸い今のところベネッセ事件のような被害は聞いたことはない。しかし、悪意をもった社員がいればそれは容易に行えるような作業環境は多いはずである。これに性悪説的に対処し始めるとオペレーショナルコストは上昇する。どっちがいいか、どの辺が塩梅か、私にもわからない。

よくディーリングルームは個室にして他部署の人間が入れないようにしなさいとかいう議論を聞いた時期があったが、私は反対だった。個室にすることで余計に悪意のある行為がしやすくなるということもある。経理部が経理部だけの個室に入るとか、各部署が個室に隔離されると、それ自体経営リスクの上昇を招く。特に従業員が100名程度で、ワンフロアで済んでしまうような規模の会社の場合を想定するなら、衝立のないフロアは経営者として理想的な環境であると私は思う。会社全体で起きていることを、肌で感じ取ることができる。経営者だけでなく、他の連携する部署のスタッフもそうしたアラートをダイレクトに知ることになる。そういう環境ではミスの隠匿が困難になる。したがって、互いのけん制がしやすくなり、よこしまな謀略を生みづらくなる。しかしこれが性善説に基づいていることはもとより承知であるが、100名程度なら経営者はすべての従業員の名前を覚えられる。普段の努力で社員の性善性を維持するのは経営者が担う役割でもあるのではないだろうか。

■コンプライアンスリスク

法令順守。近年このコストが上がってきている。どんな変更であっても必ずシステムに対する改修が含まれている。そのための費用はばかにならない。これから生き残る業者はそういうコストに耐えられるだけの損益分岐点を保持できるところに限られていくだろう。

欧州、北米ともに金融に関する法令の変更、変化の頻度は高い。リーマンショック以来とどまることを知らず、しょっちゅう変更がされる。日本はそれらに比して、のんびりしているようにも見える。のんびりが悪いわけではない。それで回るなら理想的である。

顧客資産を100億とか1000億預かるような業者は、もう社会インフラの一部だと思った方がいい。金融業者だからといって金融庁だけが監督官庁ではない。大きくなれば総務省だって絡んでくる。上場していようといまいと、公的な存在なのである。そうなればその業者に求められるコンプラのハードルは上がらざるを得ない。これは、リスクというよりコストの話だが、リスクという意味では、こうした法整備上の新たなチャレンジにしっかりついていかないと、法令違反を意図せず犯してしまうという点がリスクとなる。常日頃からこうした変化にアンテナを立てておかないと、そういうことが起こりうる。検査の時に、あっ!と言ってももう遅い。

さらに、厄介なのは、あらゆる法令とその変更が外為証拠金取引の実態や常識になじむ表現がされるとは限らないことである。現在の金商法とて同様で、府令52号15条3項の注4に「外為証拠金取引」という用語は出てこない。そこには、「為替先渡取引」、「先物外国為替取引」、「通貨先物取引」という取引名が列記されているだけである。こうした“欠落”はすべて解釈で補われ、そのために省令やガイドラインやパブコメがある。

ついでながら、たとえばの解釈をしてみよう。

「為替先渡取引」:インターバンクが行う資本取引としてのフォワード
「先物外国為替取引」:インターバンクが行ういわゆるNDF。店頭の外為証拠金取引
「通貨先物取引」:クリック365やCME等の取引所による通貨先物取引

と、まあ言ってみればこういえなくもないが、同様の用語をネットで検索してみるといい。ぐちゃぐちゃである。私自身この定義に自信はない。そもそも分ける必要がどれだけあるだろうか。

■ディープインパクトに対する防衛策はない

話は戻る。それぞれのリスクについて言いたいことを書いたが、やはり一番気になるのは、市場リスクとシステムリスクである。上段で述べたようにこれらは表裏一体、不可分である。スイスショックの時に、カバー取引をCPに発注しても拒否ばかりか、返事すら返ってこなくなり、最悪セッションが落ちる。大きなショックがマーケットに“落下”したとき(ディープインパクトとでもいおうか)は、システムも破たんすれば、流動性も枯渇するのである(細かくいえば、源流として流動性を提供する銀行等がレートを出すのを“控えた”ときが流動性の喪失であり、単にサーバーがパンクしたから出せなくなったというのはシステムの問題である)。その時、今の業界がディファクトとする証拠金計算(強制ロスカット)モデルはCP側も証拠金業者側も機能しなくなる。再開した時には大量の未収金を発生させる。先週金曜、2月6日の失業率の発表でさえ、ドル円、目視で50銭ぐらい値段が円安にすっ飛んだ。それ自体がマーケットの本質なのだと考えられる。いや、そう考えるべきである。法律で4%と決めたということは、すなわち、市場の変動が4%までは守るが、それ以上の変動は自己責任で処理してね、という意味だと考えるしかない。

マーケット(相場)の振る舞いには、“(細かい)変動”だけでなく、“相場水準のジャンプ”もあれば、“(一時的)喪失”も含んでいる。そういう前提でシステムデザインを考え直したとき、システムは来たもの(インパクト)をそのまま受け入れるしかない。それは外為証拠金取引業界だけのことではなく、インターバンクも同様である。むしろインターバンクがそうだから、外為証拠金取引業界もそれを凌駕するアイデアは出てきようがない。そうした動きをシステムがそのまま受け入れた時、システムはどう反応するかをシミュレートして、システム的に対応ができるのであればそうして、それができないのであれば、あとは人的な対応ルールを準備するしかない。問題はこの時、業者ごとの対応がまちまちになるとか、まちまちになることをよしとしても、中には疑義が生まれるような不条理な対応だと非難されるケースが生まれることである。ならば、それぞれのパターンにおいて、どう対応するかについて想定できる分についてはできる限りあらかじめ「最良執行方針」としてまとめ、開示できる分については開示しておくと、のちの混乱や投資家の不満を低減回避することができると思う。

■ドル円で起きたらどうなる?

スイスショック後、もしこれがドル円で起きたら、どうする、どうなるという話がきこえるが、それを想定することは、証拠金で為替を取引することをあきらめることに等しい。

今回のように、ものの10分で最大38%のかい離である。さらにいえば、その間ほとんどレートが出なかった。もっといえば、その間客に対してロスカットをしていた業者は、そのカットしたレート近辺でCP側でのカバーがほとんどできなかった。そうであったとして、そのリスクを回避するには、つまり未収金を発生させないようにするには、ドル円の証拠金率を40%=レバレッジ2.5倍にしないといけないということになる。起きうるかもしれないたったワンティックのためにである。現行の25倍から2.5倍に規制レバレッジを変えたら、多くの業者が立ち行かなくなることは必至である。こうしたディープインパクトによる極端な被害をどうしたら回避できるかの問いには極論としてはこの答えしかない。もはやシステムの問題ではない。

一方、極論ではなくもう少し現実論的に見れば、業者は利益をしっかり内部留保して、未収金を損金処理できるだけの体力を日頃からつけておくことで対応するしかない。名だたるCPの銀行だってそうである。

■NOPの定義を変える

現行の自己資本規制比率の穴については今までも何度も触れてきたが、この中の市場リスクの計算方法を変えることで、内部留保の法的要求額を引き上げることはできる。NOPの計算を、日々一回だけの計算ではなく、リアルタイムで計測した最大値とするだけで、ほとんどリスク額ゼロだった業者の多くがその額の引き上げに見舞われる。あるいは、NOPではなくて、『対顧客ネットポジション』だけの8%という計算式に変えることで、CPカバーしたかどうかという“不確定”で“操作可能な要因”を排除することができる。このアイデアは十分一考に値すると思うのだが、どうだろう。現行法令の市場リスク額の計算式の前提は、BoE方式からBIS規制に受け継がれ、そしてそれが金商法(かつての証取法)に引き継がれているものである。およそ外為証拠金取引のモデルを想定してはいない。にも拘わらず同じルールを当て込んでいる状態は、必ずしも理想的とはいえないのではないだろうか。

こんなことを言うと、余計なことを言うなと業界から怒られそうだが、FXCMの例を見れば、備えあるところに憂いなしである。そうなるかどうかは別として、業者としてとりうる自己防衛策は、せっせと内部留保を蓄えることしかない。自己資本規制比率が600%あるから大丈夫とは言えない。隠れた市場リスクをあらわにする方法は、上記のとおり、一切CPカバーしなかったらどういう市場リスク額になっているかを試算してみることである。その計算の額に仮に、法定の8%をかけてみたらどうなるか、20%をかけてみたらどうなるか、30%をかけてみたらどうなるか、といったシミュレーションを普段からして、対応策を考えることが必要なのかもしれない。行ってみればこれもストレステストである。

■未収金の損金処理

前回でも触れた。個人投資家は、レバレッジをかけすぎないようにするしかない。個人投資家を保護するという点を強調するなら、業者の損金処理を認めるハードルをアメリカ並みに緩くして、個人投資家に対する一定額以上の未収金は、それを即座に損金処理することを認める。一定額以上というのは、やはり個人に自己責任としてある程度負ってもらわないとモラルハザードを起こすからである。こうすることで、上段で説明した内部留保を業者はよりせっせと蓄えようという強い動機になる。今のところこの程度のアイデアしか思い浮かばない。

■さいごに

日々聞こえてくる海外の経済情勢に関する情報に触れるにあたり、今回のスイスショックレベルとは言わないまでもそれに近い「ディープインパクト」が再び起きる可能性はないとは言えないと思う。ギリシャ問題とそれに関連するECBの苦悩、ユーロ通貨のレゾンデトレ、まだまだ実験的通貨としての危うさだけでもそわそわさせられる(だからこそ面白いという一面があるのはよくわかる)。一方、規制側でもMiFID IIが施行され、BIS規制はバーゼルIIIが施行され、米国では、ドッドフランク法の流れを受けた法改正、新規制(CCP、SEF等)が続々と生まれてきている。ロシアも原油価格の下落で通貨防衛がままならない。中国の経済成長の持続性に対する不安感はもう何年も言われ続けている。昨日まで通貨高防衛をしていた国が突然通貨安防衛に切り替わることもあるだろう。日本も他人事のように言えた義理ではない。どこまで日本国債は今の信任を維持できるだろうか。貿易収支が赤字になっているのに円安を好感しているような発言を聞くと、大丈夫かと思ってしまう。国債の発行残高が1000兆円を超えてなお、少子高齢化をもろともせず税収の倍近い(4割が新たな借金)100兆円近い予算を組んでいることにも危機感をあおられる。他国に経済援助をしている場合か?こっちが援助してもらいたいぐらいだと厚生労働省の前で待機児童の問題を涙ながらに訴える母親を見て思ってしまう。

こういう金融市場の状態はなにも今が特別ということではないだろうが、問題はそれを動かす仕掛け、装置が昔とは違いはるかにダイレクトに、スピードアップしていることである。かつて一部の専門家でとどまり、ある程度市場にインパクトを与える情報に対しての反応がプロの目線でコントロールされていたが、今やそうした情報もそのまんま一気にリテール市場に流れこみ、そのリテールの反応が大挙してインターバンク市場に逆流する時代である。発注、約定もミリ秒の争いとなり、それらの判断も人間の意志だけではなく、多くの部分をプログラムが支配している。プログラムに仕込んだ想定は人間の想像力を超えることはない一方、ときに想定外の事象には想定外の反応をすることがある(俗言いうフラッシュクラッシュ)。

現実的に、円はユーロ程でないにしても、スイスフランよりははるかに流動性は高い。ワンティックで4%以上動くということは想定しがたい。現在のレート118円で言えば4.72円となる。念のため、ワンティックでなければ一日で8%動いてもそれは本テーマとしてのリスクではないという点を強調しておく。

法規制以前の問題として、この4.72円を安全と考えるかどうかは、個人投資家、業者、インターバンクそれぞれが個々の問題として自力で対処するしかない。

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、米国インテグラル社の日本支店に勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXにかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。。

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